「日本にいながら海外留学できる」とバブル期に話題となった海外大学の日本校ブーム。しかし、いまや学生数の減少などもあり、ほとんどの大学が撤退した。
そんな中、北海道には今年で開校25周年を迎える日本校が。なんとロシアの大卒資格を取得できるのだ。
国公立大学並みの学費で通える
函館市にある『ロシア極東連邦総合大学函館校』は、日本で唯一、ロシアの大学の単位を取得できる日本校。ウラジオストクと函館市が姉妹都市となったのを契機に、教育分野における日露の協力関係を強化するため1994年に函館校が誕生した。
本部の『極東連邦総合大学』はウラジオストクにあり、1899年に創設。学生数は2万3000人、9つの学部を持つロシア極東最大のマンモス校だ。
日本では専修学校として登録されているため、大卒資格は得られず高度専門士または専門士となるが、日本の大学院への進学は可能。就職時も企業・団体によっては4大卒として扱われる場合もある。
函館市の支援を受けており、学費は入学金15万円、授業料年間70万円と、国公立大学並み。
学科は4年制のロシア地域学科、2年制のロシア語科が設置されており、現在は44名の生徒が学ぶ。授業はロシア語会話のほかにもロシアの文化、歴史、政治、経済などが学べる。
「7人の専任教員のうち5人はロシア人で、ウラジオストク本校から派遣されており、生きたロシア語を習得できます。また、大きな特徴は留学体制の手厚さ。2年制の学生は2年次に1か月、4年制は3年次に3か月、ウラジオストク本学で語学実習を行います。卒業年次には、ロシアの大学入学資格にもなるロシア語能力検定1級が取得できるレベルまでになります」
と教えてくれたのは、総務課長の大渡涼子さん。
ユニークなのが、ロシア語をより親しみやすく学ぶため、学生それぞれにロシアの名前が与えられること。選択肢のなかから学生が自分で名前を選び、授業中は「ミシャ」「ユラ」など呼び合う。
「教員も学生同士も、日本語の名前をつい忘れてしまうこともあります」(大渡さん)
ロシアとの交流もさかん
ロシア語名で「ゲーナ」の名を持つ1年生の中澤純さんは、東京都出身。幼少時代からピアノを習っており、ロシアの作曲家の音楽に興味があったことから同校へ進学した。
「少人数クラスで、ロシア人の先生も日本語でサポートしながら授業してくれるので置き去りにされることはありません。今後はボランティアやイベント参加を通じてロシア人とコミュニケーションをとっていきたい」(中澤さん)
3年生の「ナージャ」こと竹内のぞみさんは、京都府出身。勉強の傍らロシアのポップスを歌うサークル「コール八幡坂」と、ピロシキを研究する「ピロシキ八幡坂」をかけ持ちするなど、多忙な日々を送る。
「ウラジオストク本学への留学のほかインターンシップなどでもロシアを訪れる機会が。ロシアからの留学生との交流も盛んで、ロシアに対する理解を深められます」(竹内さん)
学生はほとんどが道外出身者。卒業後はロシア関係の物流会社や船舶代理店、商社、ホテル、観光などへの就職のほか、ロシア国内で日本語教師になる人や海外大学へ進学する人もいる。
校長はロシア人のイリイン・セルゲイ先生。同校の生徒たちには、ロシアと日本の懸け橋になってほしいと話す。
「ロシアのエキスパートを育成することはもちろん、函館市民のみなさまにもロシアに対する理解を深めてもらいたい。そのために、学祭『ロシアまつり』で来場者に食や音楽を提供したり、社会人を対象に文化講座を開くなどの活動も積極的に行っています。文化や考え方を知ってもらい、日本とロシアが、精神的、文化的にも近づいていけたら。ロシアを好きになってもらえたらうれしいです」
まだまだ注目! 多様な進路セレクション
角川ドワンゴ学園N高等学校
2016年に創立されたインターネットと通信高校の制度を活用した高校。生徒はネットコースと通学コースから選択。ネットコースは、パソコンやスマホを使って授業を受けられるので、好きな時間・場所で勉強できるのが特徴。通学コースは東京など国内に13か所キャンパスがあり、ネットを活用した映像授業などが受けられる。必要単位を修得するなど、条件を満たせば高校卒業資格が得られる。
日本映画大学
日本で唯一となる映画の単科大学。創始者は映画監督の今村昌平で1975年に開校。2011年に専門学校『日本映画学校』から大学として開学した。選べるコースは『演出』『身体表現・俳優』『ドキュメンタリー』『撮影照明』『録音』『編集』『脚本』『文芸』の8つあり、専門知識を学べる。キャンパスは神奈川県川崎市に2校構える。ちなみに、専門学校時代にはウッチャンナンチャンや出川哲朗らが在籍していた。
デジタルハリウッド大学
2005年から大学となったさまざまなデジタルコンテンツが学べる国内唯一の単科大学。キャンパスは東京に2校。授業ではゲーム・プログラミングやグラフィック、アニメ、ウェブデザインなど、複数のデジタル表現を横断して学べるのが特徴。また、留学先の学費を最大100万円サポートする制度を設け、英語の語学力や異文化理解など、生徒たちの国際的感覚を養うためのサポートも行っている。