茨城県日立市にある御岩神社に、ご利益を求める参拝者が連日、殺到している。昨今のパワースポットブームにおいて“大本命”とも言われる、人気の理由を取材した。そして、御神体の御岩山頂上に存在する、ウワサの“最強”パワースポットの謎に迫る!
「最近、“パワースポット”として有名になっているじゃないですか。厳かな雰囲気で、1歩ずつ踏みしめて登ると心が洗われるというか、ストレスや嫌な気持ちがスッと消えていく気がしますね」
とは、御山の中腹で小休止する、水戸市から来訪した女性2人組。
古くから地元でも知られたパワースポットだというが、これまでは特に関心を持っていなかったそう─。
奈良時代初期の『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』にも描かれた、茨城県日立市にある御岩(おいわ)神社。かつて水戸藩の祈願所として栄え、“御岩”の名も「水戸黄門」こと徳川光圀公が命名。そして古来より“神々がすまう地”と崇(あが)められてきたのが、神社裏手に鎮座する御岩山だ。
近年、この御岩神社が、インターネット上で“日本最強クラスのパワースポット”として話題になり、そのご利益を求めて連日、多くの参拝者が押し寄せているという。
「実感としましては5、6年くらい前からですが、'16年にテレビ番組で紹介されましてから一段と増えましたね。その後に県北芸術祭が行われましたので、さらに知られたのかと思っております」
とは御岩神社の巫女(みこ)で、境内を案内してくれた下条美樹さん。たしかに境内は、立ち並ぶ木々の合間から光が差し込み、厳かな空気が漂う。中でも天狗が護(まも)ったという、ご神木の「三本杉」は神々しい。とはいえ、ここまでは他の神社と差はないように思える。なぜ“日本最強”なのか?
「当神社の特色としまして、一八八柱というご祭神の多さと、神仏混合の祭事としまして、神仏にお参りし、ご先祖様にご冥福(めいふく)を捧げております。(通常の祭神数は)社に一柱から三柱といったところでございましょうか」(下条さん)
境内には弘法大師や天照大神、お稲荷様や七福神まであらゆる神仏が、188の場所で祀(まつ)られている。つまりは“御岩神社に来れば、日本中の神様を1度に参拝できる”といっても過言ではないのだ。さらに御岩山山頂には、ネットをにぎわす3つの強力なパワースポットがあるのだとか。
というわけで、取材班も登山道「表参道」入り口に足を踏み入れようとすると、下条さんからご注意が。
「社務所でも御朱印関係で登られるかを確認するのですが、これから暑くなりますので、必ず飲み物を持参されているかを確認しております」
取材班もペットボトルを手に山道を行く。次第に勾配はきつくなり、道は狭く険しくなる。途中、足をとられたり、滑る場所もあったりと、雨天時の入山が禁止されているのも納得だ。サンダルやヒールはもってのほか。登山靴とまではいかずとも、最低でもスニーカーは必須だ。
山頂を探索、3つの強力
パワースポット
こうして、冒頭の女性らが休んでいた「かびれ神宮」に到着。御岩山の古称を「かびれの高峰」というだけに、天照大神や立速日男命(たちはやひをのみこと)らが祀られる重要な社だ。入山から約20分、じっとりと汗をかく。
ここから山道は難所続き。なるほど、社務所で貸し出していた杖(つえ)が恋しい。最後の岩場を乗り越え、約40分かけて標高530メートルの山頂に到着。望むのは、眼前を遮るものがない、まるで空中に立っているような神々が見る景色。間違いなくパワースポットだ!
岩場の陰にさっそく1つ目、赤く光るという「赤い石」を発見。が、周囲にはロープが張られて近づけない。しかたなく写真を撮っていると、ボランティアで案内をしているという男性に声をかけられた。
「その石を触ろうと滑落する人が多いんだよ。赤く光る? みんな触っていくものだから磨かれているだけで、そこらと同じ石。ご利益なんてないよ。ただの赤い石(笑)」
どうやらネット上で広まった“ウワサ話”だったようで。
では2つ目、宇宙にまで光を放つという「石柱」だ。男性から「こっちだよ」と教えられると、天に向かってまっすぐ伸びた石の柱が立っていた。“御幣(ごへい)”が飾られていることから、神聖なものであるのは間違いなさそう。と、こちらも《立ち入り禁止》が。
「写真を撮るために石柱に触ったり、抱きついたりする人がいてね。ブームといっても、山と神様に礼は尽くしてほしい」(ボランティア男性)
ここから崖を少し下ったところに3つ目の「天岩戸(あまのいわと)」があるのだが、こちらにも侵入を防ぐロープが。万が一のことを考えて、参拝はあきらめたほうが賢明だ。帰りは「裏山道」から下山した。
あらためて、御岩山のパワースポットについて、下条さんに聞いてみると、
「石柱も含めた山頂自体が、かつて立速日男命が降り立った、信仰の場所、御神体となっております。たしかに天岩戸には、山の神様が御静まりですが、神社としても立ち入りを禁止してございます」
SNSの影響もあり、ここ数年で写真を撮ろうと、危険な場所に立ち入って滑落、遭難するなど救急ヘリが飛ぶ回数も増加。入山時間や立ち入り区域にも、地元消防の指導が入ったようだ。
「少しでも安全を考慮して、霊山ということも含めまして、神社としましても事故のないお参りをお願いしたいところでございます」(下条さん)
パワーをもらいに行って事故にあっては本末転倒。ルールを守り謙虚な気持ちで、神々のすまう山頂を目指したい。