Do As Infinity 伴都美子 撮影/伊藤和幸

「自分の性格的に“歌手になりたい!”と言ったり、行動に移すことができなかったんです。でも、心のどこかに歌うことが好きという自覚はありました」

 今年9月でデビュー20年を迎えるロックバンド、Do As Infinity。デビュー後、2年半でリリースした初のベストアルバム『DoTheBest』('02年)がミリオンを突破。日本ゴールドディスク大賞のロック&ポップ・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した。美しき実力派ボーカル・伴都美子(40)の凛とした歌声は、数々の人気ドラマやアニメの主題歌、CMソングを通して人の心を動かし続けてきた。

 高校卒業後、歌手を目指して熊本から上京してきたかと思っていたが、

「洋服を作る人になりたくて、服飾の専門学校に通うため上京しました。通学中にたまたま声をかけられて」

 この出会いが歌手活動のスタートに。気づけば、初めて訪れたレコーディングスタジオで歌っていた。

「ド素人ながら、何かが動き出すのかなということは感じました。とにかくやってみようと」

 ほどなくしてメンバーが集まり、Do As Infinityが結成された。路上ライブをスタートさせ、1999年9月にデビューが決まった。

「ものすごいスピード感でした。とにかくついていくのに必死。地方の商店街のシャッターが下りた、誰もいない中で歌ったこともありました。そこから少しずつ足を止めてくれる方が増えていって。渋谷のスクランブル交差点のところにある大きなモニターに自分たちの映像が流れたときはうれしかったですね。“おー、すごい!”って拍手したりして(笑)

1年半ほど前から「熊本」へ

 多忙を極めた当時、何がいちばんつらかったかを聞くと、

Do As Infinity 伴都美子 撮影/伊藤和幸

「何も知らない自分自身が悔しかった。バンドを組んだ経験も、人前で歌ったこともない。MCって何? から始まって。曲順を決めるのもほとんどギターの(大渡)亮くん。迷惑をかけているんだなと思いました。

 睡眠時間がなくて体力的にというよりも、今どこにいて、どういう状態だっけ? と精神的に必死でした。つらいと思う余裕さえなかったです

 走り続けてきたDo As Infinityのヒット曲の中から珠玉のナンバーを厳選して収録したリアレンジアルバム『Lounge』が6月5日に発売される。

「“Lounge”は、別空間を提供できたらと考えてのタイトルです。もともとの楽曲のもつ特徴を残しながらピアノやベースサウンドでアレンジした曲を聴きながら、リラックスして楽しんでもらえたらうれしいです」

 彼らの代表曲『深い森』や『陽のあたる坂道』。伴が作詞、大渡が作曲を担当した『小さなヒーロー』などが収録されている。『小さなヒーロー』に登場する“冒険者”のモデルは、伴の4歳と3歳になるふたりの息子。

「彼らにとっては経験するものすべてが冒険。初めてのこと、知りたいことがまだまだたくさんあります。“それ危ないよ”とか、つい先回りして手を貸してしまいがちなんですが、そうではなく見守ることも大事かと思って。でも、見守るって難しいですよね。つい“こぼすよ!”とか“そこあぶない!!”とかって言ってしまうこともあります(笑)」

 すっかりお母さんの顔に。1年半ほど前から、生活の拠点を東京から熊本に移したそう。

「しばらく東京で子育てをしていたんですが“子どもを広い公園に連れていきたいけど、どこにあるんだろう”“野菜は、どこが安いんだろう”とか、いろいろと模索しながら生活している中で、すごく自分の視野が狭くなっていることに気づいたんです。

 私自身、熊本の大自然の中で育った経験も大きいし、サポートしてくれる家族もいるので、精神的にも違います」

いろいろな場所で
音楽という種をまきたい

 どんなときに“よかった”と思うかを聞くと、

Do As Infinity 伴都美子 撮影/伊藤和幸

私がよく笑うようになりました(笑)。のびのびと深呼吸している感じ。空が大きくて、空気も食べ物もおいしくて、道ですれ違ったおばちゃんが声をかけてくれる、そんなちょっとしたことで救われているというか、ピリピリしていた自分から解放されている気がします」

 息子さんが歌手になりたいと言ったら?

「たぶん全力で応援すると思います。今は彼らと戦隊モノの曲をよく聴いたり、歌ったりしています。勉強になるんですよ」

 心に生まれたゆとりが、音楽生活も豊かにしている。

「衣食住“音”って言いたいくらい音楽には力があると思っています。どこか種まきみたいな感じで歌っているところがあって。いろいろな場所で音楽という種をまいて、その中でひとつでも誰かの心にいつか花が咲いたらいいなということを想像しながら歌っています」

 彼女が20年歌い続けているということは、Do As Infinityが愛され続けている証でもある。

「そう言っていただけるだけで涙が出そう。一生懸命みんなで作り上げてきた曲があって、それを届けることをやめないということが、応援してくださるみなさんへの恩返しだと思っています」

『Lounge』6月5日発売 ※記事内の画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします

<リリース情報>
『Lounge』6月5日発売
【CD+DVD】4500円+税
【CD+Blu-ray】5000円+税
【CD】2800円+税