溝端淳平が、民放の連続ドラマに8年ぶりに主演するクライムサスペンス。ここ数年は舞台に軸足を置いて芝居への探求心を培ってきた。30歳を迎え、久しぶりの主演ドラマにかける思いなど溝端に直撃インタビュー。
舞台の経験を生かし
映像で新境地に挑戦
昼ドラを世に送り出してきた東海テレビ制作の“オトナの土ドラ”通算20作目のクライムサスペンス。原作は同枠1作目で話題を呼んだ『火の粉』の雫井脩介の同名小説。
主人公で心に闇を抱えた青年、新谷洋輔役を演じるのは、民放連ドラ主演8年ぶりの溝端淳平。舞台を中心に実績を積んできた溝端は、今作に自信を見せる。
「蜷川幸雄さんとの出会いから舞台に没頭して、難解な作品にもチャレンジ、精進してきました。8年前とはお芝居に対する考え方も違います。その経験をこの作品で生かせたと思っています。
僕は今年30歳になるのですが、元号も変わり、俳優人生の第2章、第1幕の始まりととらえて取り組みました」
演じた洋輔については、
「表向きは個性がないので、あえて探っていく作業が楽しかったです。僕は人と話すとき正面から目を見て話しますが、洋輔はあまり相手の目を見ず、挙動不審ぎみなところがある青年と考え、小股で歩く、猫背など、洋輔らしさを加えていきました」
洋輔は同窓会で集まった友人たち4人で、かつての“体罰教師”(渡辺裕之)への仕返しを決行。ちょっと痛めつけて放置する。それで終わるはずが事態は思わぬ方向に転がり、不可解な殺人事件に発展。それぞれが疑心暗鬼に陥って、お互いの腹を探り合う。やがて明らかになっていく秘密、そして、新たなる殺人が。
「展開が早くスリリングです。物語がとても面白いし、インパクトのある映像描写もあり、いい意味で毎話、視聴者のみなさんを裏切っていく、とても刺激的な作品です。
ふだん口あたりのいいものを召し上がっている方も、たまにはこんな辛口のドラマも楽しんでいただければ。辛さは唐辛子というより、山椒のようなピリピリした辛味です(笑)」
舞台はフルマラソン
ドラマは100メートル走
街で偶然再会する高校時代の同級生の美郷役の瀧本美織はじめ、同世代のキャストが中心の撮影現場は、充実していたという。
「内藤瑛亮監督とは年齢もそこまで離れていないので意見を出し合って作る楽しさがありました。待ち時間に瀧本さんたちと話しているうちに、自然とセリフの読み合わせになることも多々ありました」
舞台と連ドラ撮影との違いを聞くと、
「走りにたとえるなら、舞台は42・195キロのフルマラソン。連続ドラマは100メートル走を15時間くらいずっとやる感じかな。じっくり役や演技について考えてから演じる舞台は好きです。もう一方の、限られた時間の中で瞬発力が必要で作りながらどんどん変えていけるドラマも楽しい。
どちらでも演じてみたい役、作品はたくさんあります。自分にしか出せない雰囲気や色のようなものがにじみ出るような役者になりたいと思っています」
そんな溝端の演技力には、東海テレビの遠山圭介プロデューサーも太鼓判を押している。
「溝端さんは、かつての“王子様キャラ”からいろんな経験をされ、円熟味が出始める時期。演技については申し分なく、溝端さんの人間的な魅力と芝居の技術力で洋輔になりきっていただいています。第2話(6月8日放送)後半の、洋輔の狂気を秘めた表情は、本当に怖いです」
若いキャストのなかでリーダーシップを発揮する溝端らしいエピソードも。
「気温8℃のなかで真夏のシーンを撮影しました。汗に見立て、役者さんに霧吹きをかけたので、非常に寒かったと思います。
撮影が終わると溝端さんは寒そうにしているキャストの様子をいち早く察し、ご自身のマネージャーさんに声をかけ、自分より先にほかの役者さんにタオルをかけるよう指示していました。
まっすぐだし、思ったことは全部ぶつけ、いい意味でおせっかい。“昭和の男”という感じです(笑)。
それぞれの心に闇を抱えた戦慄のクライムサスペンス。予測不能な展開の早さについてきていただけたら、うれしいです」
キーマンは怖すぎるストーカー男
季節は初夏なのになぜかショートのダッフルコートを着込んだストーカー男は、今作のキーマン。
「演じる永井大さんはカッコよくて爽やかな方ですが、今作では封印してもらっています。
メイクで眉の色を落としビジュアル的に怖いストーカーなのですが、手脚が長くスタイルがいい永井さんが全速力で追ってくる姿は、怖さが倍増しています。今までに見たことのない永井さんをお見逃しなく」(遠山P)
オトナの土ドラ『仮面同窓会』(フジテレビ系) 土曜夜11時40分~