(左)松下優也、(右)平間壮一 撮影/森田晃博

 数々のミュージカルに出演している人気俳優、松下優也さんと平間壮一さんが出演する舞台『黒白珠』(こくびゃくじゅ)が6月7日よりBunkamuraシアターコクーンで上演中。以前、週刊女性の友人を紹介するリレー対談にも登場してくれた仲のいい2人だが、共演は約4年半ぶり。得意のダンスと歌を封印し、家族の微妙な関係と葛藤を描いた人間ドラマに挑戦している。

 主人公の双子の兄弟を演じる2人を稽古場に訪ねて、作品の魅力や芝居、家族についてなどじっくりと語り合ってもらった。

お互いいるだけで
いちばんの安心要素

─'14年11月の『THE ALUCARD SHOW』以来の共演が決まったときは、どう思いましたか?

松下 僕にとって、いちばんの安心要素です。風間杜夫さん、高橋惠子さん、村井國夫さんはじめ、すごい先輩方が出演されていて、河原雅彦さん演出の舞台で、安心できる要素が何もないですから。

平間 ハハハ。でも本当にすごすぎます。

松下 そういう意味では、壮ちゃんが気持ちを共有してくれる存在だと思うので。

平間 僕も同じです。やっぱり優也が稽古場にいると安心です。あと今回は歌とダンスを封印して、2人で芝居に挑戦できることがうれしいです。

─今作は青木豪さんの書き下ろしで、家族の秘密が解き明かされいく人間ドラマ。脚本を読んだ感想は?

平間 登場人物全員、人との関わり方が一見、普通なんだけど普通じゃないというか。家族なら当たり前のようにあるような絆とかがちょっとゆがんでしまっている話だと思いました。それぞれ思いはあるんだけど、別の方向で届いてしまっているような。

松下 ミュージカルとかだとそれぞれにメッセージ性があったり、信念があるキャラクターたちが出てきてはっきりしてますけど、この作品ははっきりしていないんです。会話の中で、みんなが真ん中にある核心や本音の部分を言わないからね(笑)。

平間 でもリアルってそういうものじゃないですか。みんなが本音ばっかり言ってたら、やっていけなくなるのが普通だと思うし。

松下 単純な家族の話ではないんですけど、こういうことって全然ありそうだなって、僕は思いましたね。舞台を見ていただくとたぶん驚くことにはなると思いますけど。

─人間の複雑な機微を演じるのは大変ですか?

松下 そうですね。演出の河原さんが稽古の当初に、「その状態」をつくるってことをおっしゃって。表面的にはっきりしているわけじゃないんで、「その状態」をつくらないと微妙な表現ってなかなかできないですよね。その微妙なところを狙い定めて芝居するって、本当に難しいです。

平間 僕らがちゃんと理解して、その気持ち悪い感じを表現していないと、お客さんに伝わらないので。

─松下さん演じる双子の兄・勇は地元の長崎で職を転々としているフリーター、平間さん演じる光は東京の大学に通うよくできた弟。役作りでこだわったことはありますか?

松下 まず、その人物を理解しようとしますね。自分の近くにこういうやつおらんかったかなって考えます。勇のようなやつはけっこういるんですよ。僕みたいにイエス、ノーがはっきりしているタイプだとわかりやすいですけど、言わないやつ。

 周りから見てるとなんやねんコイツって思うんですけど、言わないだけで意外と自分の中に答えがある。それにいちばん頑固なんですよ。光のほうが行動的で自分があるように見えるけど、たぶん勇のほうがめっちゃ自分があるんだと思う。

平間 光はすごくいい子ちゃんでまじめなんですけど、自分が何もなさすぎてダメになっちゃってる人。たぶん世の中にもいると思うんですよ、いい会社に就職していい生活する人生を目指すけど、別にそれが自分がやりたいことではない人って。

 だから光はすごく普通なんです。ものすごく普通だから、稽古していても何もやることがないというか、自分の中に目的がないから動けなくなっちゃうんですね。何もしないっていうことが不安でもあるんですけど、そこが今回の大事なところかと思ってます。

親を反面教師に
しているところも

─勇と光は父親と自分の違いに悩んだりもしますが、親から受け継いでると思うところはありますか?

平間 僕は親とは違う生き方をしたいと思ってきたので、どちらかというと反面教師にしているかもしれませんね。

松下 そうなんや。僕はおかんもけっこうしゃべるんで、そういうところは似ちゃったかもしれないです。若くして僕を産んで育ててきて、すごいなと思う部分もありますけど、めっちゃ嫌いやわ~っていうところも普通にありますし(笑)。そこは壮ちゃんと同じく反面教師にしてますね。

─久々に長期間行動をともにする中で楽しみなことは?

平間 地方公演かな。

松下 そうだね。東京公演もシアターコクーンで、渋谷はもう庭なんで(笑)。普段からなじみのある場所で舞台をやるわけですから、終演後にすぐご飯食べにも行けますし楽しみです。

平間 カッコいい~(笑)。

─最後に読者へメッセージをお願いします。

松下 ちょっと言いにくいタイトルで難しいのかなと思うかもしれませんが、すごく面白い作品になっていますので、たくさんの方に見に来てもらいたいですね。

平間 このキャストじゃないとできない『黒白珠』になると思うので、楽しみにしていてください。

『黒白珠』(こくびゃくじゅ)
<作品情報>
『黒白珠』
1990年代の長崎。真珠の養殖・加工会社を営む信谷家は父・大地(風間杜夫)と双子の兄弟の3人家族。兄の勇(松下優也)は高校卒業後、職を転々とし、弟の光は東京の大学に進み父の期待を受けていた。ある出来事から光は幼いころに叔父と不倫の末、駆け落ちしたと聞かされていた母・純子(高橋惠子)と再会。それをきっかけに封印されていた家族の衝撃の真実が明かされる。
・東京公演:6月7日~23日@Bunkamuraシアターコクーン
・兵庫公演:6月28日~30日@兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
・愛知公演:7月6日~7日@刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
・長崎公演:7月10日@長崎ブリックホール 大ホール
・久留米公演:7月13日~14日@久留米シティプラザ ザ・グランドホール
■オフィシャルサイト(https://kokubyakuju2019.wixsite.com/official

<プロフィール>

まつした・ゆうや◎1990年5月24日、兵庫県出身。主な出演作は、新感線☆RS『メタルマクベス』disc1、『花より男子 The Musical』、ミュージカル『黒執事』シリーズ、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』、ドラマ『アシガール』など。今後は、2020年3月公演のミュージカル『サンセット大通り』に出演。ダンスボーカルユニット「X4」メンバーとしても活躍。

ひらま・そういち◎1990年2月1日、北海道出身。主な出演作は、ミュージカル『RENT』、劇団☆新感線『髑髏城の七人-Season月<上弦の月>』、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』など。今後は、Coloring Musical『Indigo Tomato』(2019年11月~12月)主演、ミュージカル『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』(2020年3月)への出演が控える。

<取材・文/井ノ口裕子>