(左から)菅田将暉、小栗旬、橋本環奈/'17年・映画『銀魂』ジャパンプレミアにて

世の中を騒がせた事件やスキャンダル、はたまたちょっと気になることまで、各分野のエキスパート“セキララアナリスト”たちが分析(アナリティクス)! ニュースの裏側にある『心理』と『真理』を、学術的に解き明かしてご覧にいれます。

『銀魂』が3度目の正直で最終回!

 マンガ『銀魂』が6月20日、ついに“グランドフィナーレ”を迎えた。

 本作は空知英秋先生による連載マンガで、2004年にスタートし、昨年9月に『週刊少年ジャンプ』で最終回を宣言。しかし終わらず、掲載誌を『少年ジャンプGIGA』、さらに2019年5月からはアプリ『銀魂公式アプリ』に連載を移したことから、一部では「終わる終わる詐欺」と揶揄(やゆ)されることも。

 2017年には小栗旬主演で実写映画化、翌年には第2作も公開し大ヒットを記録。菅田将暉、橋本環奈、柳楽優弥、吉沢亮らの豪華キャストを、マンガ実写化の名手とされる福田雄一監督がユニークにまとめ、話題をかっさらったことは記憶に新しいところ。

 6月17日の配信で最終回を迎える……と告知したものの、それからまた3日延び、ようやく完結。こんなに時間がかかってしまったことには、どのような理由が考えられるのか? マンガ研究家で明治大学教授の藤本由香里先生に聞いた。

あくまでこれは一般論ですが、長期連載となると伏線が多くなり、最終回に向けて風呂敷をたたんでいくのに手間どってしまうケースは多いのです。連載が長ければ長いほど、“あれが入ってなかった”とか“描いておきたいことがあった”というのは出てくると思いますよ。さらに、長い作品には思い入れも強くなるため、作者も名残惜しいと感じる場合もあるでしょう

 作品自体は、『天人』(あまんと)と呼ばれる宇宙人らに支配された架空の江戸が舞台。侍・坂田銀時が、仲間の新八・神楽らとさまざまな事件を解決していくストーリー。作品そのものを“ネタ”にしたり、現実世界に言及してみたり、“メタフィクション”的な作品だと評されていた。

「最初に思い描いていた分量に収まらなかったことで、単行本化するにあたってキリが悪くなってしまうこともあります。『銀魂』は、ストーリーをのばそうと思えばのばせる作品。ひとつの大きな物語を一本道で大団円に導くのとは違う作風ですからね

終わらせたいのに終わらない。
「連載が終わらない」事情

 そして作者が「終わらせたい」のに、編集部が「終わらせたくない」という構図は人気作品、とりわけジャンプ作品ではしばしばあると聞くが、

「雑誌に看板作品があるのとないのとでは部数が違うので、人気があるものは終わらせたくないですよね。実際に『ドラゴンボール』と『スラムダンク』の連載が相次いで終わったとき、ジャンプは部数が激減しました」

 という背景もあるようだ。また、週刊誌の執筆作業は激務として知られ、連載が長引くことで身体を壊してしまった人気作家も数多くいる。『D.Gray-man』を描いていた星野桂先生が病気により長期休載したり、最近では『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の作者、太田垣康男先生が腱鞘炎(けんしょうえん)の悪化で作風を大幅に変更。

 しかし最近では、不定期連載として復活したり、後日談が短期連載として掲載されるケースも。ジャンプの名物連載『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は、2016年9月17日発売号で連載40周年を迎えると同時に最終回となったが、不定期連載として復活している。

「マンガ家の生活は、ほとんどすべての生活や楽しみをなげうって描くしんどい作業なので、ある程度ヒットしたら“このへんで区切りをつけて少しゆっくり休みたい”というのはあると思います。

 かなりの人気作品、それこそ編集者が終わらせてくれないくらいの人気作だと、やめても食べていけるわけですから。とはいえ、連載終了後に復活する例は増えましたし、『銀魂』もまた、何らかの形で読める日が来るかもしれませんね

 最終回を迎えてもなお、SNSなどではファンから感謝の声がやまない。『銀魂』がいかに強烈なコンテンツであるかが、うかがい知れることとなった。


<今回のセキララアナリスト>
藤本由香里先生
マンガ研究家、明治大学国際日本学部教授。元筑摩書房編集者。マンガ評論のほか、性やジェンダー論や家族論も扱う。日本マンガ学会理事。メディア芸術祭マンガ部門審査委員・手塚治虫文化賞選考委員・講談社漫画賞選考委員なども歴任。「東京都青少年健全育成条例」や「ダウンロード違法化」法案に異議を唱えた論客としても知られる。

<文/雛菊あんじ>