結婚報告会見で見つめあう山里亮太と蒼井優
 世間に計り知れない衝撃を与えた南海キャンディーズ山里亮太と蒼井優の“電撃婚”。非モテキャラを貫いてきた山ちゃんの結婚に、長年付き合いのある放送作家・樋口卓治が感じたこととは──?

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 みなさんはあの世紀の結婚報道をどこで知りましたか?

 私は、前の日に久しぶりに深酒をして、朝、テレビをつけて知りました。

 テレビをつけると、南海キャンディーズ山ちゃんと女優・蒼井優さん結婚!とある。もしかして、まだ夢を見てるのか? という錯覚に陥る。自分の知っている山ちゃんと、蒼井優の接点が見つからないからだ。

 ちなみに、山ちゃんとは2005年、南海キャンディーズが『笑っていいとも!』の金曜レギュラーに決まった頃からの付き合いだ。

 この結婚は世間を幸せな気分にした。 

 行く先々で、山ちゃんを直接、知らない人も「山ちゃん、よかったね」的な会話をしているのを何度も目の当たりにした。これってなんなんだ? きっと山ちゃんは、ミッキーマウス、ドラえもん、キティちゃんと同類のキャラクターだからだ。

 放送作家としてテレビを見てきて、芸人が売れると、タレント化する人と、芸人でい続けるタイプがいるが、山ちゃんは完全に後者。

 芸を忘れないカナリアだと思う。

ふたりが“共鳴”するところ

 舞台で漫才をやり続けるのも芸人だが、どの番組に出ても山ちゃんは芸をやり続けている。そして芸に常に真摯に向き合っている。これは『笑っていいとも!』に出ていたころから変わらない。朝、楽屋に行って、「山ちゃん、おはよう! 今日も期待してないから」と言うと、「ちょっと待って、それ本番前の芸人に言う言葉?」と、コンマ何秒で返してくる。裏方の私に対しても、山ちゃんスタンスを貫く。

 後説(※本番終了後の客前トーク)で、タモリさんが毎回、山ちゃんをいじる。赤いメガネに「それ血管?」赤い水玉のスカーフに「それ気持ち悪いね」そんな指摘にひるむことなく、すかさず言い返す。まるでボクシングのスパーリングを見ているような軽快さだ。スッキリの天の声、ラジオ、何本もあるレギュラーで、姿勢を変えずに芸人として立ち振る舞う。それが山ちゃんという唯一無二のキャラクターとして私たちにどんどん染み込んでいく。

 あるとき、山ちゃんが古舘伊知郎のライブに来た。公演後、山ちゃんは一人、居酒屋に入り、ビールを飲みながら、さっき見たライブの感想をノートに綴っていた。それくらい努力の人でもある。(その後、山ちゃんは打ち上げに合流し、一緒に盛り上がった)

 芸人で居られることをキープする力は、毎日、芸を更新し続けている努力のことなのだと思う。

 妻となった蒼井優さんの『スカイライト』という舞台を見たことがある。

 内容の面白さもさることながら、主役の蒼井さんに圧倒された。尋常じゃない台詞の量だが、台詞に聞こえない。演技力を客に感じさせない演技力。そこに、にじり寄るには相当ブレない信念があるのだと思う。

 あるとき、トーク番組で、『テラスハウス』をよく見ていると語っていた。その理由は、「あの中に、私が知らない女性の表情がたくさんあるから」と答えていた。リアリティショーで女性たちが見せる表情を、演技の参考にしている。そんな見方をしていたとは。ライブの後、ノートに何かを書いている山ちゃんのそれと重なる。

 蒼井優の俳優の信念と山ちゃんの芸人道はどこか共鳴するものがあるのだ。そう思うと、勝手にだが、この結婚がストンと腹に落ちた。

 この先、マスコミは幸せを持ち上げた分、引きずり降ろそうとするだろう。そんな時が、万が一来た時、全力で山ちゃんというキャラクターを守る声をあげようと思った。

 赤いメガネの嫉妬マン、どうぞお幸せに!


<プロフィール>
樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『池上彰のニュースそうだったのか!!』『日本人のおなまえっ!』などのバラエティー番組を手がける。また小説『ボクの妻と結婚してください。』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。著書に『もう一度、お父さんと呼んでくれ。』『続・ボクの妻と結婚してください。』。最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)。