湾岸警察署前で土下座をする田口淳之介

「私が手元ではかったかぎりでは、おそらく、およそ20秒ほどではないでしょうか!」

 6月7日、東京・湾岸警察署前に響き渡るリポーターの実況。“およそ20秒”というのは、大麻取締法違反で逮捕された田口淳之介被告が、保釈されるやいなや報道陣の前で土下座のポーズをとっていた秒数である。

 何のために秒数を計測したのかはわかりかねるが、その長きにわたる土下座の間、カメラマンたちがその姿をおさめようと身を乗り出したのは言うまでもない。

 同日の『報道ステーション』(テレビ朝日系)の放送はまさに衝撃だった。なんと田口が「申し訳ありませんでした!」と勢いよく土下座するさまを“正面”“横”“斜め"の3カット連続で流したのだ。まるで落とし穴にはまった瞬間を何度もリプレイされる芸人のようである。

 お堅い報道番組とて、あそこまで画になる土下座をみせられるとイジらずにはいられなかったということだろうか。

 さらに、ネットニュースにもこんな記事が。

《田口被告土下座 「怖い」「笑ってしまう」ネット反響》(日刊スポーツ)

 そう。もはや世間も半笑い状態なのだ。

笑える田口、ウラに小嶺

 大麻を常用していたことは明らかな犯罪である。関係者にも迷惑をかけたのだろう。しかし、ネットニュースのコメント欄は、どちらかというと非難よりも土下座の滑稽さについての意見が目立つ。叩かれずに笑われる方向にむかうのはなぜか。

 その理由の一端として、拘留から保釈に至るまで、メディアがたびたび、年上恋人・小嶺麗奈の“ウラの顔”を報じ続けてきたからという点があげられる。

《《大麻逮捕》元KAT-TUN・田口淳之介 すべてを変えた内縁の妻・小嶺麗奈容疑者の“洗脳”》(文春オンライン)

《大麻で田口淳之介を転がし…小嶺麗奈がハマった“悪女の罠”》(日刊ゲンダイDEGITAL)

 逮捕の直後から彼女の「悪評」や「黒い交際」が次々と報じられ、世間に「小嶺が田口クンを大麻の世界に引きずりこんだ」という認識が刷り込まれた。だから田口が保釈されたときには同情の余地というか、“衝撃の土下座を笑えるムード”が漂っていたのではないか。

「伏してお詫び申し上げます」

 現に関西の“ご意見番”として知られる上沼恵美子も、9日に放送された自身の冠番組で、保釈後のふたりについて田口を礼儀正しい人としながらも、

女性の方から本当に身を引かれた方がいいと思いません?(中略)消えてあげた方が私はいいと思います

 と、小嶺に対して辛辣なコメントを投げかけている。

 もともと田口は業界のなかでも礼儀正しかったとされ、ワイドショーでもタレントが皆、口をそろえて「一緒に仕事をしたことあるけど、真面目で天真爛漫なイメージ」といったコメントしているだけに、なおさら世間の批判的な意見が小嶺に向かう流れになったのかもしれない。

 そんな田口は保釈から3日経った10日に、所属事務所の公式サイトで謝罪文を掲載している。

《令和元年5月22日、代表取締役を務める私、田口淳之介が検挙されましたことで皆様方に多大なるご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます

 この、今まで見たことがないような“私が検挙されましたことで”という書き出しも面白いのだが、やはり注目すべきは結びで

《甚だ簡単ではございますが、弊社としての誠意をお伝え致しますと共に、代表である私田口淳之介個人と致しましても伏してお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした》

 と、文面でも土下座を決めている点だ。あれだけやったのに、まだ伏してお詫びをするというのか。ここまでくるとまったく面識のない人でも、「天真爛漫な人なんじゃないか」といった印象を受けてしまうだろう。ネットのアンチたちもきっと戦意喪失してしまう。

 本人はいたって真面目なのに、周りがそれを面白く感じてしまう。出川哲朗や狩野英孝の系譜というか、いかにもバラエティーで活躍しそうなキャラクターを感じさせる。本人も謝罪文で、《今後、しばらくの間、私自身の芸能活動を休止させていただきます》としており、どうやら復帰も視野に入れているようなのだ。

 このご時世、地上波はなかなか難しくとも、「復帰はウチで」とネット番組あたりが今も虎視眈々(こしたんたん)と出演を狙っているのではないだろうか。バラエティーでの需要は十分、なんなら司会者に“土下座の実演”を振られてしまうかもしれない。

 かくして、持ちギャグ(?)が「入口出口田口でーす」のみだった彼は、新たな武器を手に入れたわけだ。

 なんだか目が離せなくなってきたぞ。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉