えっ、よその人はこんなにおいしいお菓子を知らないの? 地元じゃ有名、むしろ常識。旅先で見つけたら即買いするしかない!? 日本各地のご当地スーパーで愛されている、定番人気の袋菓子をご紹介します。
青森 食べて贈って、仲よし
青森の『なかよし』は、香ばしいイカでチーズを挟んだ珍味です。
イカの水揚げ量日本一の八戸で42年前に考案された『なかよし』。その人気は絶大! 日々のおつまみやお茶請けに重宝されるだけでなく、季節のご挨拶にまで利用されています。
なかでも、結婚の内祝いに欠かせないのは、そのネーミングゆえ。「イカとチーズが仲よしで、食べるみんなも仲よし」というわけです。
50g、460円/花万食品
山形 固いケーキはママの味
山形の『おしどりミルクケーキ』は、ケーキ屋さんでは買えません。cakeには「固いかたまり」の意味もあります。
大正8年創業。日本初の粉ミルクを開発した日本製乳が、昭和初期に発売しました。当時の粉ミルクの原料であった、固形の練乳を応用したものでした。
「食べる牛乳」とも言われるほど高い栄養価と、ミルキーな甘い風味。飴のようになめたり、ボリボリと噛んだり……。赤ちゃんからお年寄りまで、世代を超えて愛されています。
9本入り、200円/日本製乳
岐阜 噛みしめる飛騨の知恵
岐阜の『豆つかげ』は飛騨高山の郷土の味。雪深い飛騨では、備蓄した大豆やごま、木の実を使った駄菓子が食べられてきました。
「つかげ」とは、味をつけて揚げる天ぷらのこと。しょうゆと砂糖を加えた天ぷら衣で、大豆を揚げています。驚くのは、その歯ごたえ。噛むほどに香ばしく、甘みも感じる大豆は、昨今の「やわらかブーム」に一石を投じる存在です。
山の暮らしが編み出した、滋味深い味わいに感謝。郷愁を誘う渋いパッケージも味わってください。
200g、500円/大塚
兵庫 平和の象徴ホーホケキョ
兵庫の『鴬ボール』は発売から約90年の、かりんとう風あられです。梅の花のようなビジュアルゆえ、「梅に鶯」から命名されました。このことわざは、「取り合わせのよい2つのもの」の意味。餅米と小麦粉のボールを油で揚げ、砂糖と塩で味つけした、異なる歯ごたえと甘塩っぱさは、まさに調和の見本です。
地元で有名な「ホーホケキョ」で始まるCMは、実にのどか。しかし、発売当時の日本は、第2次世界大戦へとまっしぐら。当時は「爆弾ボール」と呼ばれていたとか。このお菓子を『鴬ボール』と呼べるのは、平和である証でもあるんです。
126g、220円/植垣米菓
高知 ご当地菓子の先駆者
近年の“ご当地菓子ブーム”の火つけ役。『ミレービスケット』抜きに、ご当地菓子は語れません。
60年以上前から高知で愛されていましたが、県外ではほとんど無名でした。転機は11年前、東京での業界最大級の展示会に初出品すると、スーパーのバイヤーが大注目。昭和の懐かしさを残す、ほんのり甘くて塩気のきいたフライビスケットは、あっという間に全国に販路を広げました。
その後もオリジナルの塩味のほか、「1日中ミレー」をテーマに、朝のコーンポタージュ味、昼の生姜味、午後のブラックペッパー味、そして真夜中のにんにく味など、愉快な仲間が加わり、ファンを増やしています。
(文/菅原佳己) ※価格は参考価格
《PROFILE》
菅原佳己さん ◎スーパーマーケット研究家。'12年、著書『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』(講談社)でご当地スーパーブームを巻き起こす。新聞や雑誌の連載、講演も多数