「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
Koki,

第25回 Koki,

 昭和の大スター・山口百恵さん。アイドルとして人気絶頂時に、わずか21歳で俳優・三浦友和と結婚し、芸能界を引退しています。その百恵さんをデビューのころから撮ってきた写真家・篠山紀信は、百恵さんを「時代と寝た女」と表現しました。スターは時代との相性が大切という意味ではないでしょうか。

 そう考えたとき、ちょっと不利だなと思うのが、モデル・Koki,なのです。俳優・木村拓哉と歌手・工藤静香の間に生まれた二世。いきなり『ELLE JAPON』(ハースト婦人画報社)の表紙モデルに抜擢(ばってき)と、鮮烈なデビューを飾りました。

 抜群の知名度、お父さん譲りの容姿、話題性も十分です。けれど、「時代に合っているか」と言われると、首をかしげざるをえないのです。

 時代性をよく表していると思うのが、「嫌いな女」ランキングだと思うのです。例えば『週刊女性』本誌2019年5月21・28日号に掲載されたアンケート企画「嫌いな女」の女優部門を見てみましょう。

1位 泉ピン子
2位 土屋太鳳
3位 剛力彩芽
4位 広瀬すず
5位 藤原紀香
6位 吉岡里帆
7位 石原さとみ
8位 沢尻エリカ
9位 高畑充希
10位 米倉涼子、深田恭子

令和時代の「嫌われ女」の共通点

 このテのランキングに入る絶対条件は「名前が売れていること」なので、ランキング入りしたからといって、必ずしも不名誉ではないと思います。が、選ばれてしまった彼女たちに今の時代ならではの共通項があるとしたら、以下の2つではないでしょうか。

(1)彼氏がカネ持ち

 剛力彩芽(3位)の交際相手は、総資産2220億円ともいわれる実業家の前澤友作氏。
石原さとみ(7位)はIT企業SHOWROOMの代表取締役社長・前田裕二氏。深田恭子(10位)は年商200億と言われる不動産会社社長と交際中です。

(2)好感度抜群の正統派エリート

 NHK連続テレビ小説で、土屋太鳳(2位)は『まれ』、広瀬すず(4位)は『なつぞら』、高畑充希(9位)は『とと姉ちゃん』のヒロインを演じています。NHKの朝ドラといえば、数々の有名女優を輩出した新人の登竜門。視聴者のドラマ離れと言われて久しいですが、朝ドラは根強い人気を誇っており、好感度が高い女優の代名詞的存在といえるでしょう。朝ドラ終了後、ヒロインが、民放各局のドラマの主役になることも珍しくなく、人気女優への道が確約されたエリートポジションとみることもできると思います。

 女優と富豪の交際は、古来から洋の東西を問わずよくある話ですし、かつて清純派女優というのは、一般人女性にとってある種のお手本だったはず。それがなぜ、嫌われる要素となるのか。それは、一般人の自意識が変化したことに原因があるのではないでしょうか。

Koki,が反感を買ってしまう理由

 元来、芸能人というのは、一般人が一方的に憧れる対象でした。しかし、SNSが出現し、一般人も「見られる快感」を得るようになったことで、芸能人を「自分と同じ次元」だと思う人が増えたのではないでしょうか。「圧倒的なスター性を持っているから好き」から「私に似た芸能人が好き」へと変わっていったのではないかと思うのです。

 だとすると、女優が富豪と交際したり、正統派として将来が約束されているエリートは「自分とかけはなれた存在」ですから、なんとなく「面白くない」、もっと言うと「嫌い」と感じるのではないでしょうか。羨望を集めるのが芸能人の仕事だったはずなのに、嫉妬を買わない芸能人が愛されるという何ともヤバい時代に突入したのです。

 現代を「嫉妬の時代」ととらえた場合、Koki,は分が悪い。なぜなら、生まれながらにして恵まれているがゆえに、反感を買いやすいからです。

 例えば、Koki,は高級ブランド、ブルガリやシャネルのアンバサダーを務めています。最近の企業はSNSのフォロワーが多い人を広告塔に選ぶ傾向がありますから、Koki,が選ばれても全く不思議はないのですが、「嫉妬の時代」においては、「親のチカラで仕事をもらっている」「持ち上げられすぎてヤバい」といった解釈をされてしまうでしょう。

 それでは、Koki,はどうしたらいいのか。私は、あえて苦労をすることが必要なのではないかと思うのです。

Koki,がお手本とするべき人物

 Koki,がお手本とするべき人を先日、見つけました。6月14日放送『アナザースカイII』(日本テレビ系)に出演したモデル・森星です。彼女は世界的デザイナー・森英恵の孫にあたり、Koki,と同じくセレブリティーです。

『新チューボーですよ!』(TBS系)のアシスタントを務めていましたが、やはりお嬢さま育ちで、あまり気がきかないせいでしょうか、堺正章との相性はあまりよくなかったように感じました(ちなみに、最高にマチャアキに好かれていたと私が思うのは、元TBSアナウンサー・小林麻耶です)。

「何をやっても続かなかったことが、コンプレックス」の森が「このままではモデルとして生き残れない」と、自らニューヨークの事務所を探して所属し、“ファッション界のアカデミー賞”と称される『コスチューム・ インスティテュート・ガラ(通称・METガラ)』に2年連続で出演していることを、同番組で明かしていました。自分のブランドを持つための勉強もしたいと話しています。こういう苦悩や苦労エピソードが嫉妬の時代には求められるのではないでしょうか。

 Koki,のお父さんである木村拓哉は中国最大のSNSであるWeiboで大人気ですし、幸いなことに彼女は英語も堪能だそうですから、中華圏をターゲットにして、モデル業などで実績を積み、そこから凱旋帰国するのはどうでしょうか。コネ疑惑を払しょくし、実力のあることを見せるのにいちばん簡単な方法は、歴史ある賞を取って実力を証明することです。嫉妬して叩いていた人も、賞という証拠があれば何も言えません。

 実績に加えて、Koki,が外国で苦労したエピソードを語れば、彼女を叩いていた人ほど「恵まれているが、努力家だ、頭がいい」とヤバいくらいの手のひら返しをして、ファンになるでしょう。

 恵まれたことがネックになるという、難儀な時代に生まれてしまったKoki,ですが、両親とて簡単にスターになったわけではありません。木村拓哉もSMAP初期にはレコードのセールスが悪く、コンサートにも人が集まらないという辛酸をなめていますし、工藤静香もおニャン子クラブに加入する前に『セブンティーンクラブ』のメンバーとしてデビューしていますが、シングルを2枚発売して解散するという屈辱を経験しています。

 もしかしたら、Koki,が誇るべきは、不屈の精神力を持つ両親の血を引いていることかもしれません。


プロフィール

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。