「演じていてつらかった。人の優しさがこんなにも痛いものかと思った撮影期間でした」
香取慎吾(42)が主演を務める映画『凪待ち』がいよいよ公開される。バイオレンスと絶望、怒りと裏切り──。白石和彌監督が言うには、「誰も見たことのない香取さんが見られる」というこの映画。
こんなにも逃げる役はやったことがない
撮影は昨年の6月に宮城の塩釜、石巻で始まり、その後、同年7月に川崎にある『日本経済新聞社川崎別館』で数日にわたってロケが行われた。その撮影現場で、“ろくでなしな男”を演じた香取に心境を聞いた。
「こんなにも逃げる役はやったことがなくて。これまでは人のためを思って動き出すような役が多かったんです」
カメラが回っていないところでも、いつもの“慎吾ちゃん”の様子は見られず、どこかダークな部分を感じさせる表情とたたずまいは役そのもの。
「人生って、“行こう!!”って思えるときもあれば、その逆になることもある。両方のタイミングがあると思うんです。僕の中にも“もうダメだ、俺”ってなるとき、あるよなって。そういう部分が役として出せているんじゃないかなと思います」
そんな香取は、今回の出演にあたって白石監督から猛烈なラブコールを受けたとか。
「いつかご一緒したいなとは思っていたけど、僕が足を踏み入れられる感じじゃないなと思っていて。でも初めてお会いしたときに“昔から仕事をしたいと思っていた”と。何か言わなきゃと思って言ってるんじゃないですか? って疑ったんですけど(笑)。“どうしてもやりたくて”っておっしゃってくれて。すごくうれしかったですね」
と、このときばかりは笑顔をのぞかせ、頬を緩ませた。
稲垣吾郎、草なぎ剛とともに“再出発”を果たして、初めてひとりで挑んだ映画となる。ここまで来るのにいろんなことがあったけど、香取にとって“凪”といえる時期は?
「いっぱいあったと思います。いっぱいあったんじゃないかなって思うけど、まぁ、海は荒れますよね。今も、まさに凪待ちかもしれない」
今、彼の前には、どんな景色が広がっているのだろう。
映画『凪待ち』6月28日(金)全国公開
毎日を無為に過ごしていた“ろくでなし”の男、郁男(香取慎吾)。彼は恋人・亜弓(西田尚美)と彼女の娘・美波(恒松祐里)とともに、亜弓の故郷である石巻に移住することに。だが、亜弓と衝突して、突き放したその夜、彼女は遺体となって発見され──。