サンドに華大、愛されるその理由とは……?
 ここ数年、サンドウィッチマンや博多華丸・大吉など“親近感のあるタレント”たちの大躍進が止まらない。『日経エンターテインメント!』7月号で実施された『タレントパワーランキング2019』の芸人部門では両コンビが個人もあわせてトップ5を独占するという結果に。お笑い界にどのような流れが起きているのか……!『ダウンタウンDX』など人気番組を多数担当する放送作家・山名宏和が答える。

 博多華丸・大吉さんは芸歴およそ30年、サンドウィッチマンさんも芸歴20年、ベテランといってもおかしくないキャリアの二組が、ここに来て、なぜこんなにも人気を集めているのでしょうか。

 その理由はいろいろあると思いますが、僕の見解はこうです。

「順番が回ってきた」 

 バラエティー番組では、長い間、関西系の芸人が活躍してきました。

 しかしここ数年、東京および関東に限ってですが、その勢いは一時期よりも衰えてきたように感じます。今でも関西系の芸人は数々の番組に出演しています。ただ制作現場の肌感覚としては、視聴者の反応が以前ほどよくない、そう感じることが増えました。

 そのような変化が、なぜ起きたのか。単純に飽きが来た、ということかもしれません。

 その一方で、台頭してきたのは毒舌系のタレントでした。彼らが人気を呼んだのは、視聴者がニュースや芸能人に対して感じている不満やイラ立ちを、代弁してくれたからでしょう。彼らのストレートな物言いに、「よくぞ言ってくれた!」と喜んだことがある方も多いと思います。

だから「順番が回って来た」

 毒舌と呼ばれたタレントは過去にもいました。関西系の芸人にもいました。彼らと最近の毒舌系タレントの差は、その後味です。マツコ・デラックスさんにしても有吉弘行さんにしても、語り始めこそ辛口ですが、けっして後を引かない。

 次なる人気者の鉱脈はここだ! と思ったテレビ業界では、しばらくの間、いろいろな番組で第2のマツコさん、第2の有吉さんを探したものです。しかし彼らのような才能の持ち主はそうそういるものではなく、いつしか毒舌系タレントにも、慣れてしまったのです。

 となると、視聴者はこれまでとは異なる新たな味わいを求めます。そのタイミングにうまくハマったのが、博多華丸・大吉さんやサンドウィッチマンさんでした。

 彼らが今、支持される理由としては、時代の空気というのはやはり大きいでしょう。政治や経済といった大きな世界には、不穏な気配が濃くなってきています。ネットを見れば、心地よいピリ辛の毒ではなく、フグ毒並みの猛毒が蔓延(まんえん)しています。そんな中、バラエティー番組ぐらい、アクも毒気もない穏やかな笑いで楽しみたいという気持ちはよくわかる。

 その点、博多華丸・大吉さんやサンドウィッチマンさんは、何かを攻撃したり、誰かを貶(おとし)めたりすることをほとんどせずに笑いを生み出します。もちろん、それだけでも十分、魅力的ですが、濃厚な料理や辛い料理の後に食べるデザートの味がひときわ美味しく感じるように、関西系の芸人や毒舌タレントという流れが前にあったことは、二組への支持に少なからず影響を与えていると思います。

 「順番が回ってきた」というのは、こういう意味です。

 博多華丸・大吉さん、サンドウィッチマンの今の勢いはしばらく続くのではないでしょうか。なんといっても、彼らのライバルが現れそうにないのが強い。あの持ち味は、一朝一夕で出せるものではありません。長期熟成の味わいだからです。


<プロフィール>

山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『ダウンタウンDX』『行列のできる法律相談所』のようなバラエティー純度の高い番組から、『この差って何ですか?』『たけしの家庭の医学』のような情報濃度の高いバラエティー、さらには『ガイアの夜明け』のようにきまじめな番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく携わっています。