お見合いをして、そのお断りの理由にいちばん多いのが、「お話ししていて、会話のテンポが合わなかった」とか「波長が合わなかった」というものです。でも、それは、本当の理由が言えないから言葉を濁していることが多いのです。
婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合いの現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、「お見合いを断られている本当の理由」です。
お見合いに手作り菓子はビミョ〜
会員の勇治さん(38歳、仮名)がお見合いを終えた後に、事務所にやってきました。まずは、手に持っていた紙袋を私に渡しながら言いました。
「お相手の方から手作りのお菓子をいただいたのですが、引き取ってもらえませんか? 初めてお会いした女性からの手作り菓子には、抵抗があります」
人それぞれに考え方や感じ方が違うのでしょう。私はまったく抵抗ありませんが、中には、プロではない他人が素手で作った手作りの食べ物を嫌がる傾向にあります。そのとき、勇治さんはこんなことも言っていました。
「僕は学生時代、友達のお母さんが握ったおにぎりが食べられなかった」
さらに、こう続けました。
「あと今日の女性、口臭が気になりました。1時間、話をしているのがつらかった」
その日の夕方、お相手女性の相談室からは、“交際希望”がきました。「とても楽しくお話をさせていただきました。1時間があっという間だったと申しております」というメッセージが添えられていました。こんなふうに言われると、お相手の相談室に“ご縁がなかった”旨をどう連絡するか考えてしまいます。
私は、「手作りのお菓子が受け入れられませんでした」「女性に口臭がありました」とは言えず、「お話をしていて、会話のテンポが合わなかったようです」とお茶を濁しました。
「会話のテンポが合わなかった」「波長が合わなかった」は、お断りの本当の理由が言えなかったときの仲人の常套(じょうとう)句です。
勇治さんは少し神経質すぎると思うのですが、お見合いはまったく見知らぬ他人同士の、初めての出会いです。お土産に持って行くなら、手作りのお菓子ではなく、買ったお菓子のほうが無難ですよ。
服や髪の毛のにおい、体臭にも注意
先日、お見合いを終えた会員の宏美さん(36歳、仮名)が、お相手の男性についてこんなことを言っていました。
「着ていたスーツが、梅雨時の洗濯ものの生乾きみたいなにおいがして。それに体臭が混ざるのか、なんとも形容しがたいにおいが漂っていました。お話もはずまなかったし45分はガマンして、話が切れたところで早々に私からお見合いを切り上げました」
体臭だけでなく、「今日の方、髪の毛からヘンなにおいがした」という女性もいました。
朝子さん(34歳、仮名)は、その日、ホテルのティーラウンジの予約席でのお見合いでした。お店の方に案内されて席に行くと、すでにお相手の男性は着席していました。
「お会いしたときからヘンなにおいがしたんです。“今日はこの方と1時間話すのか”と思ったら、気持ちが重たくなりました。話もはずまなかったし、早く帰りたかった。お相手もチラチラと腕時計を見ていたので、“ああ、私と話していても退屈なのだろうな”と。
それで、30分を過ぎたころに、『そろそろ行きましょうか』とおっしゃったので、内心ホッとしたんですね」
男性が伝票を持って立ち上がり、レジに向かって歩き出したので、朝子さんは後ろからついていったそうです。
「男性が前を歩くと私が風下になるじゃないですか。髪の毛のあたりから、さらに強いヘンなにおいが漂ってきました(笑)。もう一刻も早くお別れしたかった」
「スーツがにおっていました」「体臭がありました」「髪がにおいました」とは、お相手仲人さんには言いづらく、お断りの理由は、「お話が合いませんでした」と、これまた入れました。
梅雨期や汗をかく季節は、デオドラントを忘れずに! コロンや整髪料のつけすぎにも注意ですよ。
女性たち、このひと言が実は重要!
“お見合いのお茶代は、男性がお支払いする”というのが結婚相談所での暗黙の了解事項です。これは、どの仲人も男性たちに必ず言っています。
ただ男性の中にはお見合いを終えてレジに向かったときに、女性から、「あの、お支払いは?」と言われ、「あ、ここは男が払うのがルールですから」とか「仲人に、男が払えと言われています」と返してしまう人がいます。
同じお金を払うなら、「今日は楽しい時間をありがとうございました。ここは僕にお支払いさせてください」と言ったほうがスマートですし、女性からの評価も上がりますよね。
また、女性たちにも気をつけていただきたいことがあります。
男性が払うのが暗黙のルールなのですが、お支払いしてくださった男性に、「あの、お支払いは?」とか「私のお茶代は?」とか、払わないのがわかっていても、必ず言うことが大事なんです。
そのままレジを素通りして、支払いを終えて男性が出てきたら、「ごちそうさまでした」とだけ言うのは、NG。「ごちそうさまでした」も言わず、「今日はありがとうございました」とだけ言うのは、もっとNG。「ごちそうさまでした」も「ありがとうございました」もなく、「では、これで失礼します」と帰っていくのは、もっともっとNG。
先日、会員の泰造さん(31歳、仮名)が、お見合いしたときのことでした。私がお引き合わせに伺ったのですが、お見合いするカフェの入り口にはケーキのショーケースがありました。
私がカフェに着くとすでに泰造さんは来ていて、ケーキのショーケースを眺めていました。後ろから、「泰造さん、こんにちは」と声をかけ、「ここのケーキ、すごく美味しいわよ」と言いました。
すると、その後にやってきた女性が来たときに、彼が気をきかせて言ったのです。
「ここはすごくケーキが美味しいそうですから、よろしかったら食べませんか?」
そして、ケーキセットを頼んでのお見合いになったそうです。ところが、お見合いを終えて彼が伝票を持ってレジに進むと、女性はそのまま素通りして、外に出てしまったそうです。
「『ごちそうさま』のひと言もなく、『じゃあ、ここで』といって、帰っていったんですね。お支払いをするのは一向にかまわないのですが、『ごちそうさま』のひと言があるかないかで、払うこちらの気持ちは全然違うんですよね。今日の方は“お断り”でお願いします」
そして、お相手女性の相談室には、「“ごちそうさま”がなかったのがお断りです」とは言えず、これもまた、「お話ししていて、どうも波長の合わないものを感じたようです。今回はご縁をつなげませんでした」と伝えました。
相談室間での関係をギクシャクさせたくないので、なかなか本当の理由は言えないものですが、私は仲よくさせていただいている信頼している仲人さんには、いつも表向きのお断り理由ではなく、裏理由も一緒に伝えています。「会員さんが傷つかないように、上手に伝えてね」という言葉を添えて(笑)。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/