6月26日に最終回を迎えた『特捜9』(テレビ朝日系)は13・8%の視聴率を記録。好成績を残したが、現場には不穏な空気が漂っていたという。
「特捜班の班長・宗方朔太郎を演じていた寺尾聰さんが卒業を発表。『特捜9』内部での確執が降板の原因です。“渡瀬イズムのない現場は面白くない”“渡瀬さんの影がすっかりなくなっちまったよ……”と周囲にボヤいていました」(制作会社関係者)
『特捜9』は'18年に始まった刑事ドラマシリーズ。前身は'06年から'17年まで放送されていた『警視庁捜査一課9係』だ。
「渡瀬恒彦さんが係長の加納倫太郎役で、井ノ原快彦さん、羽田美智子さん、津田寛治さん、吹越満さん、田口浩正さんが演じる5人の刑事を指揮して事件を解決するドラマでした」(テレビ誌ライター)
渡瀬さんは病床に台本を持ち込んでいたほど『9係』を愛していたが、現場に戻ることなく'17年3月にこの世を去った。
「翌年から『特捜9』という形で井ノ原さんがバトンを受けることになり、さすがに荷が重いだろうということで、渡瀬さんの後任を演じられるような人物として寺尾さんがキャスティングされたんです。
彼は渡瀬さんの大ファンだったので二つ返事で受けてくれましたが、シーズン1の現場では“渡瀬さんの後をどう演じたらいいか、手探りなんだよね”と漏らしていたんです。寺尾さんほど経験のある役者でも演技を模索するなんて、渡瀬さんの抜けた穴は予想以上に大きいなと感じましたね」(テレビ朝日関係者)
主演の井ノ原以上に、寺尾もプレッシャーを感じる中、撮影現場では新たな問題が勃発してしまう。
「主人公が30歳近く若返ったことで、視聴者も若い人が増えたのでは、という議論がされたんです。結果的にシーズン2からは番組の若返りのために『9係』からのベテラン監督やプロデューサーが何人かリストラされ、若いスタッフが入ってきました。
すると“渡瀬さんが作り上げてきた現場を壊された”と感じた旧スタッフや一部のキャストが反発してしまい、確執が生まれてしまったんです」(前出・制作会社関係者)
渡瀬さんを慕う気持ちが強すぎるあまり、新しい体制を受け入れることができなかったらしい。
「旧スタッフや一部のキャストは“渡瀬さんあっての『特捜9』だから”という思いがある。井ノ原さんもプレッシャーを感じて“渡瀬さんと比べられるのはつらい”と言っていたこともあります」(芸能プロ関係者)
現場では、渡瀬さんの振る舞いを総称した“渡瀬イズム”という言葉が頻繁に飛び交っており、スタッフの間にも広く浸透していた。
「本当に周囲を気遣ってくれる方で、“NGを極力出さないようにしよう”“スタッフには少しでも早く帰ってもらおう”“若手にはセリフを積極的にあげよう”といったことを、常日ごろから言っていました。
シーズン2でも、このことが実践されていないというわけではないんですが、何かが違うという空気が流れていましたね」(前出・テレビ朝日関係者)
ギスギスした雰囲気が表面化し、スタッフと出演者の関係が悪くなっていく中、寺尾は自身の限界をひそかに感じていたという。
「寺尾さんは、シーズン2の途中から“重圧に耐えられない”と言うようになりました。これまでのような雰囲気なら、まだ頑張れたのかもしれませんが、渡瀬さんの色がすっかりなくなってしまった現場にモチベーションも下がっていたんだと思います」(前出・芸能プロ関係者)
寺尾のドラマ降板についてテレビ朝日に問い合わせると期日までに返答はなかったが、寺尾の事務所からはこのような回答が届いた。
「寺尾は渡瀬さんには生前お世話になっていて、今回は現場に戻ることなく亡くなった渡瀬さんの主役というポジションを継いだ井ノ原さんに力を貸したいと思って仕事を受けました。
もともと、番組スタッフとの話し合いでは最初から長くやるつもりもありませんでした。現場を見て2年で十分責任は果たしただろうと思って、気持ちよく送り出してもらいました。内紛のために辞めるわけではなく、寺尾が決めたことです」
『特捜9』においての、渡瀬さんの存在の大きさについても聞くと、
「渡瀬さんの後任として入りましたが、代わりにはなれなかった。
10年以上続いているシリーズですから、誰も代わりを務めることができないのは現場の共通認識だったと思います。それだけ存在が大きかったということです」(寺尾の所属事務所)
次回作が心配になってしまうが、最終話では現場での“雪解け”を感じさせるようなシーンもあった。
「井ノ原さんが犯人を説得する見せ場のシーンがあるのですが、その場面のセリフを彼は新人刑事役の山田裕貴さんに譲ったんです。渡瀬さんがのこした“若手に見せ場をあげよう”という考えが、まさに実践された瞬間でした」(前出・芸能プロ関係者)
渡瀬さんの思いを受け継ぎたいという気持ちはみんな同じ。“シーズン3”では、また素晴らしいチームワークを見せてくれると信じたい。