“匿名”だからこそ明かせる闇営業の深部とは──
“闇営業芸人”が次々と処分を受けている。しかし、“イケナイことだとは思っているけど、生活もあるんで……”と言うのは、闇営業と関わりも多い芸人たち。匿名を条件に集まってもらい、彼らに闇営業の現場について話を聞いた。芸人が悪い? 食えないことが悪い? それとも所属事務所が悪い? 闇営業の実態とは――。

■座談会出席芸人

・芸人A

キャリア20年。某大手お笑い系事務所を経て、現在はフリー。

・芸人B

所属はなく、フリーとして個人で活動する、キャリア20年の中堅芸人。知り合いから事務所所属の芸人をパーティーに呼べないかと斡旋を依頼されることも。

・芸人C

某中堅お笑い系事務所に所属するキャリア15年のお笑い芸人。先輩から声をかけられ、闇営業に参加することも多い。

* * *

芸人A「営業の現場に着いてから反社会勢力とか“アッチ”系ととわかったとしても、怖くて引き返せないよね(苦笑)。実際何度か経験あるけど、行くまで知らなかったし」

芸人B「直前に帰ったらどうなるかわからないし、呼んでくれた人にも迷惑がかかるしね。俺が行ったアッチ系のパーティーは先輩が呼んでくれた会だったんだけど、その人の顔を潰すことになっちゃうし……」

芸人A「今回の宮迫さんの件なんて、そもそも主催者側が捕まったのは、飲み会の後の話だし、行くまで知らないというケースも多いよね。俺なんてどんな人が来るのかあえて聞かないよ。聞いて引き返すってこともしづらいじゃん。だから最後まで知らない形にする。行ってそういう人たちの会だったら、嫌でも気づくけどね。でも余計帰れない(笑)

芸人C「現場に行ったら、やたらスモークの貼られた車がいっぱい停まってて、顔もコワモテばかりで……みたいな

芸人B「でも、テレビのレギュラー持っている芸人さんだったら、なんとか理由をつけて帰るべきだとも思うよ。最悪、金は受け取らないとか。でも抜け出しづらい……」

芸人C「スリムクラブさんが行ったような“ガチ”な人たちの会に呼ばれたときは、もうホント脂汗ダラダラでしたよ。ゴルフ場を貸し切っての会で、コンペが終わった後の食事会でネタをするみたいな。コンペだから順位発表の司会とかもやらされたんですけど、ああいう人たちって肩書も名前も難しくて……(苦笑)。間違ったらヤバそうだから、向こうの若い人に隣にいてもらって、難しい読み方の人のときは“あの……”って逐一聞きました

芸人A「でも、やっぱり金払いはいいよね。おひねりも多いし。“兄ちゃん、稼いでねーのか”とか言って、パッと1万円くれたり。ただ、1万円札と1000円札を出されて、“どっちがいい?”って聞かれたり。なんて言うのが正解なんだろうって怖かったよ。気をつかって1000円と言ったら、それはそれで怒られそうで(笑)。“どっちもください!”って言ったら笑って、どっちもくれたけど

芸人B「まぁ今回は単純に相手がよくなかったよね。宮迫さんや亮さんは別だけど、事務所なんて知名度の低い芸人の仕事なんて取ってこないじゃん。だから“自分で仕事を取ってきて何が悪いの?”って言うのも本音。だって闇営業自体は別に犯罪じゃないから。ただ、きちんとそのお金を計上して、税金を払わなきゃ脱税になっちゃうけど……」

表でオファーしても……

芸人C「地方のショーパブとか、大手事務所に所属している芸人さんもけっこう出てて、店の告知には絶対に名前を出さないようにして出続けている人もいますよね。ショーパブとかってお客さんからおひねりもらうことも多いけど、それも闇営業なのかな(笑)。それを報告する人は誰もいないと思うけど」

芸人A「地方の闇営業でかち合うことが多いのは、圧倒的に女性の演歌歌手だよね。演歌の人は地方で顔を売るために事務所も認めてたりするし。組長とか偉いさんとデュエットしてるのよく見るよ(笑)

芸人B「闇営業のクライアントでいうと、マルチ商法とかネットワークビジネス系も多いね。よく熱海とかのホテルを借りて勧誘のパーティーをやってるよ。地方だと“吉本”っていうネームバリューが強いんだよね」

芸人A「食うために仕方ないって芸人がいっぱいいるからね。でもホントに宮迫さんとか亮さんみたいなテレビにいっぱい出て、第一線で活躍している人までやるのはどうなのって思うね。しかも嘘までついてさ」

芸人B「すぐに“すみませんでした! でも、相手のことは本当に知らなかったんです”って謝ればよかったのにね。事務所が出てきて、謹慎とかにしちゃったから、余計この話が長引いている気がする。出席した芸人さん全員ですぐに会見して謝っていれば、こんなに騒ぎは大きくならなかったと思う」

芸人C「でも、宮迫さんは稼ぎは確かに多いけど、自分で使えるお金はそんなにないんじゃないですか? お金は奥さんが管理してるだろうし、そのうえで後輩におごったりするお金も多いし。お子さんもいい学校に入れたりしてるから、お金かかりますよね。奥さんに知られずに、自分で自由になるお金がほしかったんじゃないですかね」

芸人A「だいたい吉本って、安い営業は露骨に対応遅いからね。イベント屋さんが言ってたけど、表の営業でオファーしても返答までかなり時間かかるみたいよ

芸人B「俺はフリーっていうこともあってイベントの人集めをお願いされることもよくあって。それで知り合いに“パーティーに吉本の芸人を呼びたい”ってお願いされるんだけど、正面からオファーしてもなかなか返事こないよ(笑)。吉本にとって数十万円レベルの営業なんてどうでもいいもの。仕事と思ってないから、対応も悪いし、遅い」

芸人A「毎年、NSCから芸人が入ってくるのに、マネージャーは増えないから、数人のデスクで何百、何千という若手芸人を管理してるみたいだからね。そんなの無理でしょ(笑)。仕事をお願いしている発注元がその芸人と面識がある場合は、“全然返事がないから、悪いけどほかに頼むね”って言うと、“事務所の返事を待っていたら仕事を失うから、直で受けます! 自分たちから事務所に報告しますんで!”ってケースがめちゃくちゃあるらしいよ

芸人C「真面目な芸人さんは、きちんと事務所に報告して、ギャラも事務所を通すんだけど、事務所はその芸人が受けたギャラの額では仕事を受けないって言うから、その芸人さんと、もともと知り合いだった発注元との関係性が崩れたりする。芸人からしたらたまったもんじゃないですよね。事務所にギャラを抜かれるだけならまだしも、事務所が絡んだことで自分が築いてきた関係性まで失うなんて。こんなことがあるから闇営業が蔓延するようになるんですよ

無期限謹慎の期間は

芸人A「闇営業ってものは昔からの慣習みたいなものだから、事務所も芸人もみんな何も思わない。今回、こんな騒動になったから少し落ち着くかもしれないけど、今後もなくならない。あとこれだけスマホが普及してから闇営業してた人はビクビクしてるだろうね。写真や動画撮られてるだろうから。ちゃんとした人は闇営業だと写真断ってるよね。闇営業してて“ちゃんとしてる”って言うのも変だけど(笑)」

芸人B「吉本の芸人が言ってたけど、入江から話がきた闇営業ってめちゃめちゃ多かったらしくて、その話に乗っちゃった芸人たちはみんな“自分が行ったのが、反社会的勢力じゃありませんように”って祈ってるみたい(笑)。

 反社会的勢力なのか、パリピなのかよくわからない胡散臭い営業が多かったんだって。6月末に吉本が所属芸人を呼んでコンプライアンス研修やったけど、そこで“会社に嘘はつくな”って言われたみたいだけど、“自分が行った闇営業は大丈夫でありますように……”って願うだけだったって(笑)

芸人C「週刊誌に載った芸人だけじゃなく、社長さんと繋がりの多い芸人も呼び出されたみたいですね。“怪しい闇営業やったことないか”とか聞き取りされたって言ってましたよ」

芸人B「入江に関しては、彼が会社を立ち上げたあたりから“入江案件は怪しいのも多いから注意したほうがいい”って若手の間では噂になっていたけど、入江と仲がよかったり、金に困っている芸人たちは、あまり疑わずに引き受けてしまってたみたいね」

芸人A「これも昔からだけど、闇営業の仕事をマネージャーが取ってくる場合も多いしね。そのマネージャーしか知らない営業とかさ。正規の営業先でも、あえて振り込みではなく取っ払いにしてもらってマネージャーもいくらか……みたいな話はあるよね

芸人B「吉本は今回謹慎になった芸人たちは“無期限謹慎”ってしてるけど、反社会的勢力との関わり具合で期間を決めるみたいだよ。常習的に参加してたのか、1回きりだったのかとか。その期間を決めるために聞き取り調査を何度も行っているそう。今回の騒動で、クリーンなイメージの芸人たちは仕事が増えてるから、“真面目に頑張ってきた芸人たちがちゃんと評価されてよかった”って言う人もいるよね」