伊東四朗

最近、高齢者ドライバーによる事故が多発し、高齢者の免許自主返納への気運も高まっている。ベテラン芸能人も例外ではなく、それぞれが難しい判断をしている。立場上、人一倍、運転に気をつけなくてはならない彼・彼女らに、免許返納と高齢者の運転について考えをインタビューで聞いた。

運転免許を取ったのは25歳のときですが、ちょうど3年前に自主返納しました。週に2~3回運転していましたが、私の仕事上、どんなに軽微な事故でも影響があると思っていたので、特に気をつけて運転していましたね」

 79歳のときに免許返納した理由として、更新時に受けた講習に納得がいかなかったことも挙げられるという。

「無事故でゴールド免許だったのにもかかわらず、更新に行ったら“次の更新は5年後ではなく3年後です”と言われ、納得できなかったんです。いわゆる認知症検査も受けましたが“この検査で免許を剥奪することはありません”とも聞いて、“それならなぜ、検査をするんだ”と思いました。この試験をまた3年後に受けるのは苦痛だったのと、79歳という年齢も考えて即座に返納することにしたんです」

 検査内容も、あまり気持ちのいいものではなかったそう。

「当日の西暦を聞かれたり、動物や乗り物の絵をいくつか見せられて、5分後くらいに“先ほど見た絵を思い出して書き出しなさい”といった記憶力のテストがありました。運転のシミュレーションができる機械で、ブレーキの反射速度も測りましたね。

 いちばん嫌だったのは、敷地内のコースを実際に運転する検査があって、何十年も運転しているのに、少しバカにされているような気持ちになったことを覚えています」

 この検査を受けたことで、自分が高齢になったことに気づいたことも返納した理由だったというが、最近多発している高齢者ドライバーの事故に対しては、運転しやすくなった車側にも原因があるのではないかと話す。

「以前は、高齢者による事故はそれほど多くなかったように思います。昔はマニュアル車が多く、アクセルをいきなり踏み込むとエンストしていたからなのかもしれません。しかし、今はオートマ車を運転する方がほとんどでしょうし、昔はハンドルが重かったので、両手を使わないと回せなかったことも事故が少なかった理由だと思います。最近はボタンひとつで、エンジンがかかる車もだいぶ増えましたよね」

車を運転するときは「毎回目標を立てて」

 事故を減らすためには、周囲からの注意はもちろん、“自分で気づくこと”が大切だと語る。

「どう見ても危ない運転をしている方は、周囲の人たちが注意してあげないといけませんが、他人から言われるのは嫌なものです。運転している本人は、問題なく運転できると思っていますから。できることなら、私のように何かのキッカケで気づいていただくことがいいのかなと思います。

 免許を返納すると、ある意味、ホッとするものですよ。現在は電車などで移動していて、運転による事故は絶対にないわけですから。今は、精神的にも返納してよかったなと思って、心が安らかになっています

 最後に、ドライバーへの“アドバイス”も。

「“運転慣れ”には気をつけていただきたいです。運転慣れと身体の衰えは反比例するものです。車で出かける際は、1度気持ちを切り替えて“あの交差点は注意しよう”“バックするときは、きちんと後方を確認しよう”などの目標を、毎回立ててみるのも有効だと思いますね」