受験お作法2.0

 お受験コンシェルジュ&戦略プランナーのいとうゆりこさんが、東京都・神奈川県の小学校受験を中心に、学校説明会や幼児教室ではなかなか教えてくれないリアルな“お受験情報”を発信。小学校受験本番を迎える、幼稚園年長のお子様方に焦点を当て、保護者ともども1年間どのように戦い抜いていけばいいのか各月ごとのポイントを教えてくれます!

 7月編では、志望校の最終調整をするにあたり確認しておきたい「付属校」と「受験校」の違いに焦点を当てます。

■付属の大学があったとしても、大学受験推進校の場合も

 7月も後半となった現在、学校説明会もひと通り終わり、志望校の最終調整段階に入っていらっしゃるころかと思います。しかし第一志望は決まっても、併願校や滑り止めをどこにするか、まだまだ悩まれている方も多いですよね? 

 第一志望と違い、併願校や滑り止めの受験でありがちな失敗は、面接や願書で「学校の教育方針」と異なる旨を書いてしまうことです。できるならば第一志望と似ている教育方針の学校を受験したいところですが、試験日程やブランドイメージに振り回されて、なかなか定まらないのが現状だと思います。

 学校は大きく分けて、「別学(男子校/女子校)」か「共学」か、「付属校」か「受験校」か、というところで分けられるかと思いますが、「付属」といっても、大学まで付属なのか、小中高のみ付属なのか、「受験校」といっても、中学受験推進校であるのか、大学受験推進校であるのか……などといった違いがあります。

 そこで今回は、学校選びの際におさえておきたい、「付属校」と「受験校」について詳しくお話ししていきます。

 まず「付属校」の場合ですが、大学が付属であっても、大学受験推進校の場合もあります。例えば東洋英和女学院の場合、最近では9割以上の生徒が他大学を受験し、付属の東洋英和女学院大学への進学は1割程度。

 つまり、学校側が他大学への進学を推奨しているのだと考えられますよね。あるいは聖心女子学院の場合、聖心女子大学へ内部進学は約半数。1/4は他大学を一般受験し、その他の学生は指定校及び一般推薦にて他大学に進学するそうです。

 また、付属の白百合女子大学への進学率が1割未満の白百合学園は、中学受験の最高峰である桜蔭・女子学院・雙葉学園の女子御三家に次いで中学偏差値が高く、東大を目指せる付属女子校として選ばれるご家庭も多いと思いますが、特に医師家庭には人気があり、他大学の医学部・歯学部への進学実績には定評があります。

 このように、同じ付属校であっても、受験推進派なのか否か、しっかりとご確認ください。

 受験推進派の学校のなかには、中学になって教育方針がガラリと変わるところもあります。中学高校の進路実績、教育方針、実質数字(複数合格しているであろう人数を正確に読み取る)をしっかりと把握し、お子様の大学までのロードマップも考えたうえで学校を選んでほしいと思います。

 8月17、18日に北の丸公園内の科学技術館で行われる東京都私立学校展など、まだこれからでも間に合う中学高校の説明会もあるかと思いますので、個別ブースで相談されてみてください。夏休みの中だるみ解消のためにもぜひ足をお運びいただきたいです。

 そして、大学までの付属校の場合、小学校~大学までの16年間、本当にその学校に通いたいのかという点は、いま一度よく考えてみてください。

 小学校受験で妥協して進学した学校であった、もしくは学内で生活しているうち他校に魅力を感じるようになった、といったことはあるかもしれませんが、青山学院では、中学で慶應普通部や中等部を受験する生徒も学年に10名ほどいた年もあったそうです。

■いま注目すべき学校は……

 続いて「受験校」の場合です。例えば、男女別学校の最難関である暁星や雙葉は大学が付属ではないので、小中高を通して学んだ先に大学受験があることが大前提です。

 こうした受験校のなかで、いま注目すべき学校としては、東京女学館があげられます。東京女学館は2017年に付属大学を廃止。そのかわり、指定校推薦の数を増やし、歴史ある女子校独特の授業のプログラムを刷新し、大学受験準備のしやすい学校へ変貌を遂げたんですね。

 この東京女学館のように、大学への指定校推薦の多い高校の付属小学校は併願校としてお買い得とも考えられます。本年度に関していえば、暁星が東大現役合格1名、白百合学園が5名に対し、東京女学館の2名は大健闘の数字と考えられます。また、早慶上理、GMARCH、津田塾、東京女子、日本女子大などに60人が指定校推薦で進学可能となっています。学内の成績と小論文、面接でこれらの大学に進学ができるというのは、かなり美味しいと思います。

 また、2020年春からは、横浜英和が青山学院の系属校となり、基本的に全員が青山学院大学に進学できることとなりました。

 何があっても大学受験のない付属校なのか、中学、高校、大学進学のタイミングで他校への受験が認められている、もしくは推奨されている学校なのか? 

 志望校や併願校を選ぶ際には、ぜひこうした点をおさえてください。そして基本的に大学までの16年間学んでほしいと考える学校、早稲田、慶應、青学、学習院、成城、立教などを志望する場合には、面接や願書でもしっかりとその旨を明記するのが得策であると思います。

<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design