犯行現場には花束やビールなどが供えられていた

「自宅にいたら、外から男の怒号が聞こえてきました。その後、女性の叫び声が聞こえてきたんです。外を見ると、人が血だらけで倒れていました。女性は“あっちは意識がありません。こっちは意識があります”と叫んでいました」

 6月24日午後10時半ごろの犯行現場の様子を、近隣マンションの男性住民はそう振り返る。

20数か所をメッタ刺し

 JR名古屋駅から直線距離で約6キロ、愛知県名古屋市北区西味鋺の住宅街の路上が、惨殺現場に一変した。

「通行人から“道路で誰かが刃物で刺している。人が血だらけで倒れている”と通報があった」(捜査関係者)

 被害者は、会社員の赤松英司さん(41)と、その同僚で同県大府市在住の小笠原智之さん(44)。救急搬送されたが、病院で死亡が確認された。

 殺人容疑で逮捕されたのは、無職・佐藤俊彦容疑者(38)。赤松さんが住むマンション向かいの一軒家に住んでいたが、

「家の前を通ると防犯灯が光っていたので、誰か住んでいるんだなぐらい」(70代男性)、「自治会に参加していないし、全然知らない」(50代女性)と隣近所とは没交渉。一方、亡くなった赤松さんは、

「明るくて、紳士的なすごくいい人ですよ。自治会の会計もやってくれていました。お子さんが4人いてね。息子さんが所属する野球チームでコーチをしていました。お子さんを連れて、近くの飲食店に食事に行くのを見たことがありますよ」(前出・70代男性)

 何の接点もなさそうな佐藤容疑者と赤松さんだが、2人をつないだのはトラブル。

「以前から赤松さんの車がイタズラされていたらしい。赤松さんは佐藤さんが怪しいと思っていたみたいです」(同)

父親「それだけはよかった」

 民放報道局員は、別のトラブルの存在をつけ加える。

「佐藤容疑者は赤松さんの路上駐車に不満を持っていた。一方で赤松さんは、このあたりの野良猫たちにエサを与えているのが佐藤容疑者で、そのせいで糞尿の異臭がすると話していたようです」

 事件当夜、赤松さんと小笠原さんは、市内で飲み会に参加後、赤松さんの自宅へ。その後に佐藤容疑者宅の防犯カメラに向かい叫んだことから、口論に発展したという。

 赤松さんの後輩男性は、

「学生時代、素行が悪かった。じゃなきゃ、あんな時間に怒鳴り込みに行かない。“あの人はまだそんなことをしているのか”と話す友達もいた」と話す。

 一方、

「警察も当初は、赤松さんが挑発したと見ていたようですが、実際は違いました。深夜に怒鳴り込むというのはトラブルのもとですが……」(前出・70代男性)という声も。

 犯行現場近くにある赤松さんの実家。父親に話を聞くと、

「息子が殺されたという事実があるだけです。犯人の処罰について考える余裕はありません。まだ何も手につかなくて、日々の生活もままなりません。警察から、息子は悪くないと聞き、それだけはよかったという思いです」

 佐藤容疑者が赤松さんを20数か所メッタ刺しにしたことから、恨みの蓄積がうかがえる。同僚の小笠原さんの刺し傷は胸に3か所。よほどの“トラブル”があったのかもしれないが、飲み会後に2人が、佐藤容疑者に関わったことが悔やまれる。