友人のみ38人を招待して今年6月22日、ホテルメルパルク仙台(宮城県仙台市)で挙げた結婚式。
1年かけ準備を進め、雑誌などの結婚式特集で紹介された演出を自分たち流に取り入れ、招待客をもてなしたいと考えていた島田健斗さん・加奈子さん夫妻(仮名)は、「こんなに恥ずかしい思いをしていたのか」(加奈子さん)と式場の不手際の数々にあきれ果て、幸せな新婚生活を送っているはずの今、すっかり疲れ果ててしまっている。
手袋は、新品のはずが毛玉だらけ
「妻はうつ病で通院状態です」
と健斗さんは明かす。それほどまで、思い描いたことがなされず一切がずさんだったという結婚式。前日打ち合わせで確認したことさえ、当日に実現されなかったという。
「友達だけの結婚式なので、私たちのことは名字を抜きにして名前だけで紹介する約束でした。前日も念を押し、式場も理解していました。
ところが当日、チャペルでの挙式でいきなり、フルネームで呼ばれました」
冒頭からの凡ミスに、健斗さんは怒り心頭に。
加奈子さんも、幸せの出はなをくじかれていた。
「チャペルに入るときの手袋が、毛玉だらけでした。本当に嫌だった。新品を用意するという話だったのに……」
その後も打ち合わせどおりに名前が呼ばれなかったことが、追い打ちをかけた。
「もう披露宴をやりたくないと、担当者に言いました。妻の気持ちが優先だから、と。担当者は“もうミスなくやります”と、そう言ったのですが、披露宴でもいろいろと打ち合わせと異なる部分が露呈したんです」
なぜプランナーを代えたのか
2人が会場を仮予約したのは、本番約1年前の昨年6月15日のこと。
加奈子さんは、「この式場はドレスにこだわりがありセミオーダーできました。自分のサイズにぴったりと合わせてくれるんです」
一方の健斗さんも、「料理を試食しましたが、おいしくて。特に魚料理がおいしかったんです。飲み物もワインの担当者がいて、友達をもてなせると感じました」
2人で往復約4万円の交通費をかけ、仙台まで足しげく打ち合わせに通った。その頻度は挙式3か月前から週1になり、
「遠いけど、密に打ち合わせをしたいと思っていました。それも妻に喜んでほしいという気持ちがあったからです。そのときはまさに、夢を膨らませる時間でした」(健斗さん)
期待度が高いぶん、式場側の不手際が裏切りに感じられる。
気がかりが一点あった。通常“カップルが来館したときから挙式後のフォローまで”と言われるウエディングプランナーが途中、交代したのだ。
「今、式場と話し合いをしていますが、なぜプランナーを代えたのか聞きました。“普通は契約後、担当は同じなんですが、私たちは代えました”と言うんです。質問の答えになっていないんです」
と加奈子さんは、フォローできない式場にあきれ果てる。
披露宴で、新郎新婦がひな壇に着席した後、再び事前打ち合わせとは反対のことが行われた。祝電紹介だ。そもそも読み上げる時間を設けていないはずだった。加奈子さんの上司が気をきかせ、お祝いの言葉を届けてくれていたのだが、加奈子さんに手渡せばすむ。ところが、司会者が読み上げてしまったのだ。
出席していた新婦友人は、
「え? 終わり? という感じでした。周囲の人も、何、今の? という反応で、とりあえず拍手する感じでした」
と、当日の気まずい空気を伝える。健斗さんは、
「友人からは“1通しか電報来てねえじゃん”って、いじられたんですが……」
と寂しい心境を吐露する。
とはいえ、それ以外はつつがなく進行している、と新郎新婦は考えていた。後日出席者に聞くまでは。思わぬところで、事件は起きていたのだ。
残念すぎるエピソードの数々
その(1)ケーキの件。
新郎新婦の証言「食後のデザートとして切り分けて、子どもたちにも行き渡っていると思っていました。友人がスタッフの人に“子どもの分はないのか”と聞いたら、“ないです”と言われたそうです」
新婦友人の証言「子連れで式に出席していました。スタッフの人が、テーブルの真ん中に大きな四角形のケーキをポンと置いたんです。仕方なく私が細かく切り分け、子どもたちに食べさせました」
その(2)飲み放題の件。
新婦友人の証言「コーラを注文したんですが、ないと言われました。何があるのか聞いたら、オレンジジュースとお茶。メニューさえなかった」
新郎新婦の証言「メニューはなく、空いたグラスがあっても無視でした」
その(3)コース料理とは別に注文した寿司の件。
新郎新婦の証言「“ケーキの後に寿司が出てきたんだけど、あれってサプライズ?”と茶化されたんです。何を言っているのか不思議でした」
新婦友人の証言「デザートを食べて、コーヒーを飲んでいるときに、寿司が運ばれてきました。サービスが遅れた詫びもなく、淡々とテーブルの上に置いていきました……」
そして、極めつきのショックは、友人が撮ってくれた写真を後日見たとき。
「当初、花代として約20万円の予算を組んでいたんです。式場から10万円で要望どおりにできると言われました。ところが写真を見て、少ないなと。式当日はそこまで気が回らなかったんですが、こんな殺風景な披露宴だったのかと思うと恥ずかしい」(健斗さん)
挙式披露宴を台無しにしたことについて、メルパルク仙台の担当者は、
「直接話し合いを進めているところですので、お答えいたしかねます」
と言葉を尽くさない。
健斗さんは、
「最初は、結婚式の費用を払ってほしいと言っていました。問題が大きくなり、請求しませんと手のひらを返しました。式のやり直しを提案されましたが、妻はもう、ドレスを着たくないと言っています。プランナーからの謝罪もありません。話し合いのさなか、責任者は“もう質問は受けつけない”と言い放ったこともある。弁護士を通して話を進めてほしいとも言われました」
式場側の態度に疑心暗鬼だ。
結婚式直後に新婦がうつ病を発症するひどい不手際。重要なのはしっかりと再発防止に取り組めるか、だろう。