いまだくすぶり続ける吉本興業所属芸人の反社会組織とのつながり問題と、同社社長・岡本昭彦氏の会見騒動。ネットニュースでもさまざまな報道がなされているが、はたしてユーザーはこの件にどのような感想を持ったのか。そこで『週刊女性PRIME』ではユーザーへの独自アンケートを実施。岡本社長の謝罪会見への評価や、松本人志・加藤浩次ら声をあげたベテラン芸人たちへの評価、また吉本問題に限らず、のん(能年玲奈)や公正取引委員会から注意を受けたと報道されたジャニーズ事務所など、芸能界の“圧力”“パワハラ”問題に至るまで、正直な意見を聞いた。
【Q1】吉本興業・岡本社長の会見に納得できましたか?
騒動のきっかけは、6月7日、雑誌『FRIDAY』によるカラテカ・入江慎也の仲介で、吉本興業所属芸人が詐欺グループの忘年会に出席したとの報道。対し、宮迫博之は『FRIDAY』の取材やTwitterで「ギャラはもらっていない」と否定。同じく田村亮もTwitterやラジオのレギュラー番組などで「ギャラはもらってない」と説明。だが実は虚偽だと判明し、7月20日に両名は会見。ここで宮迫と田村が、吉本興業上層部からパワハラを受けていたと話し、さらなる炎上を受けて7月22日、岡本社長が騒動後初めての記者会見を開いた。
この件に関して、岡本社長の会見に「納得がいかない」と考えるユーザーは70%。「どちらでもない」が21%。「納得した」と答えたのは9%だった。
「納得がいかない」と答えたユーザーの意見によると、多くが「何が言いたかわからない回答をダラダラ続けて歯切れが悪かった。反社会組織のつながりなど、都合の悪いことを隠すかのような態度にしか見えなかった」といった煮え切らない質疑応答への憤りが目立った。
ほか、「(「テープ撮ってないやろうな」「全員クビにする力がある」などのパワハラ発言が)冗談とか場を和ませようなんて、状況からしてありえない!」との憤りの声や、「パワハラを理解してない。契約解除理由が明確でない。反社対策が不十分」と吉本興業の体質そのものへ向けての疑問の声も複数見られた。
「どちらもでない」「納得した」の双方に共通していたのは、「いちばん悪いのは宮迫と田村」。「岡本社長は何度も2人にお金を受け取ったかどうか聞いたはず。嘘とわかり、裏切られた気持ちになってのパワハラ発言ではないか? 結局悪いのは最初に嘘をついた2人で、嘘をついてなければここまで騒動は大きくなってなかった」といった意見や、「反社会組織とつながっている所属芸人を強くいさめるのは大企業のトップとして当たり前」、「反社会組織とのつながりが問題なのであって、パワハラ問題が取りざたされるのは論点がずれている」と今のメディアの報道のあり方に疑問を投げかける声も見られた。
【Q2】松本人志さんや加藤浩次さんはじめ、吉本のベテラン芸人の今回の騒動への対応について評価しますか?
宮迫と田村の涙の謝罪会見、上層部のパワハラ発言の発覚を受け、7月20日、松本が自身のツイッターに「松本人志、動きます」とツイート。大崎洋会長や岡本社長らと会い、これが岡本社長の会見につながった。また加藤浩次も自身がMCを務める『スッキリ』(日本テレビ系)で、自らの進退をかけ「こんな上層部のいる会社にはいられない」と大崎会長と3時間の会談。この男気にSNSでは絶賛の声が多く挙がっている。
意外なことに「評価する」と回答したのは58%と半数程度。「どちらでもない」が29%、「評価しない」が13%と続いた。
「評価する」としたユーザーの声を挙げると、「会社に対して声を上げることができるのはいいこと」「おかしいことはおかしいとハッキリ言ってくれた」「リスクを承知で声をあげて後輩たちを助けようとした」など。また「吉本興業はこのままでは本当にダメで、お笑いが楽しめないと思う。幹部に物申せる人が何か行動を起こしたことは、少しでも改善への道筋がつけられたのではないか」と今後に期待を寄せる声も見られた。
「どちらでもない」では、「所属する事務所の悪い点を果敢にあぶり出しきちんと意見している点は評価できる。ただ 宮迫、亮の不祥事はきちんと謝罪すべきとである。しかし、松本、加藤が出てきたことで問題が吉本の経営にすり替わった点は疑問である」などの声が。
「評価しない」の声も似た傾向で「会社を裏切ってそのうえ嘘までついたのに、吉本が悪者になってるのはどうして? 先輩方はそこを責めず会社を責めているのはどうなの」「吉本体制と宮迫たちの悪行は切り離して論議してないので、評価しません」と、そもそもの騒動の本質に“立ち返ろう”とするユーザーの声が多く挙がっていた。
【Q3】のんにはじまり、ジャニーズ事務所の元SMAP3人への圧力報道など、芸能事務所のパワハラ問題が話題に。日本の芸能事務所のあり方、圧力について違和感がありますか?
本名の能年玲奈で活動していたのんは2016年、事務所から独立。その後、テレビで見かけることは少なく、現在もほそぼそと活動している。また元SMAPの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾はジャニーズ事務所を退所後、新事務所『新しい地図』で芸能活動を。17日、NHK総合で、公正取引委員会がテレビ出演圧力の疑いでジャニーズ事務所を注意したとの報が流れた。
票は「違和感がある」が74%。「どちらでもない」「いいえ」がそれぞれ13%。「どちらでもない」「いいえ」の意見では「それが芸能界」といった声が大多数で、「圧力やパワハラがあるのは何も芸能界に限っていない。今の日本の社会そのものの問題ともいえる」など社会的な声もあった。
大多数の「違和感がある」では、「直接的な圧力はないにしろ業界の慣例のようなもの、言わなくても忖度(そんたく)するというのは確かにあると思う」「のんちゃん、新しい地図ともにテレビで見ない。実力と人気があったのに違和感しかない」など。
ほか「前々からやめたり独立したりする芸能人が干されたり、うちの事務所にさんざんお世話になりやがってと嫌がらせ、違約金払わそうとしたりパワハラしているのは知ってましたが、今回やっと公になったって感じ」「昔からまことしやかに囁(ささや)かれていたことが表面化できる時代になってきたことは喜ばしいこと」の声もあった。
さらには「このままではYouTubeなど芸能界のしがらみや圧力の関係ないネット世界に人材が流出しそう」といった日本の芸能界やエンタメの衰退を不安視する声。また、「いま始まったことじゃないですよね。メディアも変わるときじゃないですか? 事務所だけの責任にしないでください。内々になってる周り(のメディア)も悪いでしょ」と耳が痛い言葉で、われわれメディアの変革を求める声が相当数挙がっていた。
これらの結果からわかることは、おそらくはわれわれメディアが考えるよりもはるかに冷静に、ユーザーはこれらの事態やテーマを観察していること。また、芸能界の圧力の疑惑の根は相当深いこと。またメディアに対しても疑問をぶつける人が相当数いることだ。
新時代『令和』──。例えば欧米では日本のような芸能事務所制ではなく、タレント本人がエージェントを雇ってマネージメントをしている。海外の事例やユーザーの声を参考に、日本の芸能界も、そしてメディアも、変わるべきときがきているのかも知れない。
(衣輪晋一/メディア研究家)