店の繁盛よりオーナーの満足度がいちばんという風変わりなフレンチレストランを舞台にしたコメディー、『Heaven?~ご苦楽 レストラン~』(TBS系・火曜夜10時~)原作コミックに魅了されたプロデューサーがドラマ化を実現させた熱き思いとは―。
居心地のいい場所を求めた人々を描いた
“オーナーの、オーナーによる、オーナーのためのお店”という風変わりなレストランで繰り広げられる、フレンチレストランコメディー。原作は『動物のお医者さん』『おたんこナース』などの佐々木倫子の同名コミック。
原作コミック連載当時から大ファンだったという瀬戸口克陽プロデューサーは、映像化の構想を練り続け、ようやく念願叶って今回、ドラマ化となった。
「仕事や生活などをよりよくするため、もっと成長しなきゃ、変わらなきゃと息苦しさのある昨今ですが、人は簡単には変わるものではありません。今作では、そのままの自分でも居心地のいい場所を見つけていく人々を描いています。
脚本は佐々木先生と何度もやりとりし、アドバイスもたくさんいただきました。初回をご覧になって、“楽しく拝見しました”と言っていただいたときはうれしかったです」(瀬戸口P、以下同)
従業員たちを“心地よく”振り回す仮名子
主人公の黒須仮名子を演じるのは石原さとみ。仮名子は“心ゆくままにお酒と食事を楽しみたい”という自分の欲望のための店『ロワン・ディシー』をオープンさせた。彼女がスカウトした従業員は、笑顔が苦手な上級ウエーター(福士蒼汰)、物覚えが悪いウエーターアシスタント(志尊淳)、ソムリエの資格を取りたい一心で働く元銀行員(岸部一徳)ら、ちょっと難ありな個性派ぞろい。
「仮名子は自由奔放で、相手のためを思ったやさしい言葉をかけたりはしない。それでも憎めない独特のチャーミングさがあるので、難しい役だと思います。
でも、演技力がありコメディエンヌとしてのセンスもいい石原さんが、従業員たちを心地よく振り回す仮名子を好演してくださっています。“ロワン・ディシー”メンバーのキャスティングは、福士さんはじめ原作の魅力的なキャラクターのイメージに近い方々にオファーしました」
従業員たちは仮名子に翻弄され、さまざまなトラブルに巻き込まれつつも、団結して必死に問題を解決しようと奮闘していく。
「レストランが舞台というと、経営を立て直したり、事情を抱えた従業員たちが成長していく物語かと思われがちですが、今作は違います。彼らの欠点は欠点のままですが、自分に欠けている部分を補い合える仲間との出会いで、居心地のいい場所として生き生きと働いていきます」
キーワードになっているのは、劇中で漫画のように表現される“諦観”。
「今作の根底に込めたメッセージです。あれもこれも頑張らなきゃ、と思うと心が疲れてしまいます。ほどよくあきらめることは、決してマイナスではなく、次へとつながっていくのではないでしょうか」
“諦観”の文字を登場人物と合わせて映したり、それぞれの心の声を幻影で言わせたりと、映像ならではの手法で表現している。
炊飯器持参で臨んだ石原さとみ
『ロワン・ディシー』のメンバーは、テーブルマナーや接客についての講習を受けて撮影に臨んだ。
「仮名子はオーナーですが、食に対するリスペクトがある人物なので、石原さんも、みなさんと一緒に所作指導、美しい食べ方などを熱心に学んでいらっしゃいました」
毎回、登場する美しいフレンチはオリジナル、仮名子のオーナー室の棚のカップ置き場には、高級ブランドの品々が並んでいるなど、要チェックポイントもたくさん。
「仮名子の衣装にもご注目を。従業員の男性が白黒で、店もウッディーな落ち着いた雰囲気なので、仮名子は華やかなものを着るようにしています。最初はオーナーらしくジャケットでしたが、だんだんラフになっていきます。衣装単体だと、奇抜かなと感じても、石原さんがお召しになると絵になるんです(笑)」
キャストは20代から70代まで幅広い年齢層だが、撮影現場の雰囲気は良好。「クランクイン前にキャスト、スタッフ全員で食事会をしたことも大きいですが、楽屋に炊飯器を持参している石原さんからおにぎりがふるまわれることもしばしばで、とても和やかです」
物語は毎回、『ロワン・ディシー』の従業員の過去や問題点にスポットがあたるが、第4話(7月30日放送)では、“オーナー・仮名子の正体”に迫る。
「今までとは違った角度から、人生を生き抜くヒントのようなものも盛り込んでいます。ですが、難しく考えず、コメディーとして楽しんでいただけたらと思います。仮名子や従業員たちに会いたい、または、フレンチなのに敷居が低そうな“ロワン・ディシー”に行ってみたいと思っていただけたらうれしいです」
石原さとみ提案!仮名子の髪型の秘密
華やかなファッションにハーフアップのヘアスタイルが仮名子の定番。「食事をするときに髪がかからないようなヘアスタイルにと石原さんが提案されたものです。ハーフアップといっても、実はアレンジが毎回変わっていて、同じスタイルはないんです。正面向きのシーンが多いですが、横向き、後ろ姿などにご注目ください」(瀬戸口P)