無職の男はSNS上にインコの虐待動画を投稿、愛鳥家らが通報を続けたことで逮捕につながった。男は複数のアカウントを持ち、インコを可愛がる様子を見せる表の顔と、虐待する裏の顔、その両面を使い分けていた。関係者は「おとなしく、虐待を行うようには見えなかった」と素顔を語るが――。
「私のツイッターのフォロワーから、『インコ可愛がり総合ニュース』というアカウントがインコの虐待動画を流しているという連絡を受けたのが6月22日午後4時ごろ。それがきっかけでした」
インコ虐待男の表と裏の顔
インコの飼い方や情報提供などを行うウェブサイト『インコ生活』を管理する山本さんが憤る動画の数々。そこに映っていたのは、
「コンドームをかぶせられたインコ、洗面台にためた水の中で溺れそうなインコ、ヒリヒリする薬をヤケドの痕に塗られ、のたうち回るインコの動画や画像でした」(山本さん)
それが動かぬ証拠になった。
愛知県警中村署は7月18日、動物愛護法違反の疑いで名古屋市の無職・坂野嘉彦容疑者(34)を逮捕した。取り調べに対し、
「私が飼育していたインコにコンドームをかぶせて身動きが取れないようにして、点火棒(長いライター)を押しつけ、放り投げるなどの行為をして虐待していたことは間違いありません、と供述しています。虐待理由は、鳴き声がうるさくて腹を立てたということです」(捜査関係者)
名古屋市内にある自立を支援する寮。そこが坂野容疑者の住まいだった。生活困窮者や病院を退院して行き場のない人などさまざまな事情を抱えた人が暮らしているが、ほとんどの入居者が日中は仕事に出かける。坂野容疑者はそこに今年3月に入所した。最初は水回りが共同の階に住んでいたが、その後、居室内にトイレや浴室など水回りがそろっている部屋に移ったという。そこが犯行現場になった。
坂野容疑者を知る関係者は、
「坂野さんはおとなしいタイプ。動物を虐待するような人には見えなかったのでびっくりしました。トラブルはなく、スタッフとの関係も良好でしたが、躁鬱がひどく、投薬や通院で治療をしていたようです。就労にも意欲的でしたが、仕事はしていませんでした」
と近況を明かす。
個室であっても、ペットを飼うことは禁止されていた。ところが坂野容疑者は4月ごろからインコを飼い始めた。前出・関係者が続ける。
「逮捕後、面会に行った知人に、インコを飼った理由を“ひとりで寂しかったから”と。夜、インコが突然、鳴きだして隣の人にバレるといけないと思い気が動転して殺してしまったのが最初。そのときに変なほうに気持ちが変化して、その後エスカレートしてしまったと話したそうです」
SNSで残虐な画像を載せる虐待男
ツイッターの坂野容疑者のものと思われるアカウントでは
《今月で☆になるインコ、これで4羽目かなーまた2000円で活きの良いヒナ鳥買わなきゃなぁ》
《たった3カ月の間だったけど、君の飼い主であれた事を、私は誇りに思います》
《セキセイインコを63℃のぬるま湯で水浴びさせたら(中略)やがてクルっと腹を上に向けて動かなくなり、湯気とともに香ばしいインコ臭が立ちのぼってきましたw》
などと、虐待の実態を生々しく投稿していた。目を覆いたくなる動画には、
“洗面台にたまった水から脱出しようと、濡れた羽をバタバタさせているインコを、水の中に沈めたり、羽をこするなど、命をもてあそぶ姿”
“洗面台のインコに、蛇口から激しく水を出し、水かさを増やし溺れさせようとしたり、排水口の栓を抜いたために吸い込まれそうになりながらも必死に羽をバタつかせているインコの姿”
“コンドームの先端に頭の部分がくるようにインコにかぶせ、身動きができないインコをライターでつついたり、ベッドや床の上に落としては拾ってを繰り返す姿”
“羽の軟骨部分にピアッサーで穴をあけたり、ヤケドの痕にヒリヒリする刺激薬を塗り込まれたためにもがき苦しむ姿”
などが映されていた。
ペットショップの小動物担当の店員は、
「セキセイインコはラブバードとも呼ばれ、特になつきやすい生き物です」
前出『インコ生活』の管理人の山本さんは、
「今回、虐待を受けていたのは幼鳥。自分だけでは生きていけず、飼い主にすがるしかないんです。坂野(容疑者)になついていたわけではなく、すがっていたんです」
そんな、か弱く愛くるしい動物を、坂野容疑者はもてあそんだ。そして動画をSNSに投稿するという鬼畜ぶり。
嘘つきのかまってちゃんの自己顕示欲
「自己顕示欲が強い」(前出・山本さん)という坂野容疑者について、
「自分を評価してくれる人がほしかったのでは。SNSとかでは自分を大きく見せようとしていましたからね」
と見るのは前出の関係者だ。次のように続ける。
「国立大学の医学部中退とツイッターには書いていますが、嘘です。寮の入所者にもかかわらずNPO法人の職員と名乗っていますが、寮の人は“勝手に職員と言っている。困ったものだ”と頭を抱えていました。ほかにも坂野のものと思われるSNSには、“貯金が1000万円ある”とか、“車を所有している”とか書いているようですが、それも嘘。生活保護を受けるときは、資産状況を調べられます。貯金があったり車を持っていたらダメですから、資産なんてあるはずがない」
要するに“見栄っ張りで嘘つきのかまってちゃん”。
「逮捕後、寮のスタッフが坂野容疑者の部屋に清掃に入ると、床や寝具の上には鳥のえさや羽が散らばっていたそうです」(前出・関係者)
わずか体重30グラムのインコの命をもてあそび、その様子を動画で撮影していたという猟奇的愉快犯。
「私も家族も本当にショックで……心を痛めていて……」と、震える声で心境を明かしてくれたのは、坂野容疑者の母親だ。週刊女性の取材に、
「あんなひどいことをする子どもじゃありませんでした。小さいころから動物を可愛がる子で、インコも飼っていて可愛がっていました。いじめるくらいなら、なんで逃がしてあげなかったのか……。
世間のみなさんに申し訳ないです。インコにも、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
そう何度も何度も謝罪の言葉を口にした。
逮捕前、坂野容疑者はツイッターのアカウントを変え、毎週のようにグロテスクな虐待動画や写真をアップした。
「私たちは痛みを抱えながら見ていました。『また今週末もアップされるのではないか』とビクビクしていたので、捕まってホッとしました。ただ、今度は投稿せず、秘密裏に虐待する可能性がある。そうなると通報できない。動物愛護法違反の刑罰は軽いので、もっと厳罰化することで虐待の抑止力になるはずです」
と前出・山本さんは訴える。
愛鳥家の中には坂野容疑者の厳罰を求め、嘆願書を提出する動きもあるという。
虐待の末に奪われる小さな命。インコが逃げ惑う姿は、もう見たくない。