第28回 木下優樹菜
『ビートたけしのいかがなもの会?』(テレビ朝日系)において、くりぃむしちゅー・上田晋也が、飲食店のありがた迷惑なサービスについて話をしていたことがあります。
飲食店が厚意で、注文していない料理をサービスしてくれることがあるけれど、お腹がいっぱいで食べられないことがある。しかし、あちらの厚意を無下にできないので、無理して食べなくてはいけないのが苦痛だというような内容でした。共演者も、頼んでいない品をサービスとしてもらったことがあると言っていましたので、芸能人ゆえの厚遇と呼んでいいでしょう。
しかし、そういうパワーが通じない、むしろ知名度が高いことが仇(あだ)になる場所があります。それはSNS。芸能人のようにフォロワーが多い人は、いわゆるクソリプや粘着質なコメントに悩まされることが多いようです。反論すると、人気商売だという理由で「大人げない」「有名税だからしょうがない」というように、なぜか有名人側が悪く言われることもあるのです。
タレント・木下優樹菜(以下、ユッキーナ)も最近、SNSで粘着されつつあると言ってもいいのではないでしょうか。独身時代は元ヤンキーのおバカキャラとして鳴らし、お笑いコンビ・FUJIWARAのフジモンと結婚したユッキーナ。現在は2児の母で、インスタグラムのフォロワーは520万人を超えるなど、ママタレとして活躍しているうちのひとりです。
そのユッキーナのファッションが、物議をかもしました。『日刊サイゾー』が《木下優樹菜、下着が見えそうなミニワンピース姿に批判殺到「こんなお母さん嫌だ」「欲求不満?」》と報じたのです。ユッキーナがミニのワンピース姿でハワイを闊歩(かっぽ)する画像がインスタにアップされていますが、ネット民にはこの姿が「なんか下品」「欲求不満」と映っていると記事には書かれていました。
ユッキーナのインスタ画像を見ると、確かにスカート丈は短いですが、下着は見えてはいません。あのワンピースでお子さんの参観日などの行事に出かけたらびっくりしますが、休日に、ハワイの太陽の下であることを考えると、特におかしなことだと私は思いませんでした。
私のようにユッキーナのミニワンピースを特に何も思わない人もいれば、問題だと眉をひそめる人がいるのは、ミニスカートというものに対する解釈が違うからではないでしょうか。
ミニスカート=「オトコを釣るための服」か
1992年に放送されたNHKドラマに『オバサンなんて呼ばないで!』というものがありました。脚本は内館牧子センセイで、桜田淳子演じる主人公が、独身のまま30歳を迎え、会社の後輩には「結婚できない人」とみなされ、男性上司には「30歳すぎの女性のミニスカートは勘弁」と言われるなど、現代の基準でいえば炎上必至の筋書きですが、ともかく「30歳すぎたら、ミニスカートをはくな」と繰り返されていました。
現代においても、アラサーやアラフォーのミニスカートは「イタい」というような記事がネットにあふれています。「トシをとったらミニスカートをはくな」という人は、ミニスカートを「オトコを釣るための服」「下着を見せたい人の服」と曲解しているのではないでしょうか。だから、夫がいて2児の母でもあるユッキーナが、男を欲しがっている、欲求不満でヤバいと叩かれたのだと思います。
ミニスカートは丈の短いスカートを指しますが、そこにどんな意味を持たせるかは、その人の認知の問題です。
痴漢や盗撮、のぞきなどの性犯罪を起こし、警察に捕まり、職や家族を失ってもなお、これらの行為をやめられない人がいます。精神科医の榎本稔氏は『やめられない人々 性依存症患者、最後の「駆け込み寺」リポート』(現代書林)内において、彼らを「性依存症という心の病気であり、治療が必要」と書いています。
榎本医師によると、彼らは、
「ミニスカートなど、露出の多い服を着ている女性は、痴漢をされてもしかたがない」
「妻と長い間セックスレスだから、痴漢することはしかたがない」
「ケガをさせるわけじゃない、触るくらいいいじゃないか」
といった具合に、自分の行為を正当化する言い訳をするそうです。こういう偏った解釈は認知のゆがみと呼ばれていますが、なぜ認知がゆがむのかというと、社会的要因(女性の地位の低さ、性の扱われ方)や成育環境が関係しているそうですが、犯罪者でない側の人たちも、性に関しての認知はゆがんでいる部分があるのではないでしょうか。
見ている側はユッキーナがうらやましい?
ユッキーナは『PINKY』(集英社)や『ViVi』(講談社)の元専属モデルでしたから、スタイルのよさをアピールするのは“仕事”です。露出という面で比べると、女優・長谷川京子も胸の谷間がもりもりした画像を複数アップしていますが、ユッキーナほどは叩かれていません。
この違いは、ユッキーナのほうがざっくばらんなキャラなので「言いやすい」ことと、フォロワーが多いので注目度が高いことに加え、ハワイが関係しているのではないかと私は思っています。
ユッキーナは仕事やプライベートで頻繁にハワイを訪れています。プライベートのときは、フジモンを抜かして子どもと3人で行くこともあるようですが、見ている側はユッキーナの経済力と、夫を日本に置いて旅行に行く自由がうらやましいのではないでしょうか。
今後もユッキーナには好きなファッションをしてほしいと思いますが、ミニスカートなんかより、もっとヤバいと思うこともあるのです。それは、夫であるフジモンを「ブサイク」と呼ぶこと。自分の家族になった人に対して、その言い草はどうかと思いますし、もし逆に、夫が妻をテレビでことあるごとにブサイクと言ったら、炎上することは目に見えています。
6月に放送された『グータンヌーボ2』(関西テレビ系)で、フジモンから離婚届を5回つきつけられたと話したことから、不仲説も持ち上がった夫妻(ユッキーナは否定)。離婚の心配がないからこそ披露できたエピソードでしょうが、フジモンへの当たりの強さも、憶測を呼ぶひとつかもしれません。
プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。