アルバイトによる不適切動画の投稿が相次いだ上半期。おでんの白滝を口に含んで戻す、ゴミ箱に捨てた魚を拾ってさばく、など衛生的に大問題な動画は瞬く間に炎上。企業側はそろってバイトに対して「法的措置を検討する」とコメントしたが─。
「実際に訴訟に至ったケースは今のところほとんどありません。店側のやられ損だったのですが、唯一、関係者3人が書類送検される異例の展開を見せたのが大手回転寿司チェーンの『無添くら寿司』です」(全国紙社会部記者)
抗議の電話は1300件
「無添くら寿司」の大阪府守口市の店舗で“バイトテロ”が起きたのは1月4日の午後3時ごろ。問題となった動画は当時アルバイト従業員だった高校2年の少年Aくん(17)が撮影。
当時、専門学校生だったアルバイトの少年(19)がハマチの切り身をゴミ箱に捨てた後、ふざけてまな板に載せる一部始終が撮影されていた。ちょうど1か月後の2月4日、この動画はツイッターに投稿されるやいなや“不快”“くら寿司には行かない”などの批判が殺到。店舗への抗議の電話は3日で約1300件きたという。
問題を重く見たくら寿司は3日後にはアルバイト2人を退職処分とし、刑事・民事両面での法的措置をとると公表。約3か月後の5月下旬に、大阪府警は動画に映っていたアルバイト従業員の19歳少年を偽計業務妨害ほう助容疑で、Aくんと友人の高校2年男子生徒Bくん(17)を偽計業務妨害容疑で書類送検した。
「仲たがい」からの稀有なケース
なぜ店とは無関係のAくんの友人まで書類送検されたのか。
「動画を拡散したのがBくんだからですよ。実はくら寿司のバイトテロはこれまでの“バカッター(バカな自撮り動画などをSNSに投稿すること)”とは違い、撮影者のAくんがこれをインスタグラムのストーリー(24時間で消えフォロワーだけが見れるもの)に投稿したところ、視聴した学校の先輩から『不適切』と注意され、約3時間後には動画を削除しているんです。
しかし、このわずか3時間の間に友人の少年Bが動画を自身のスマホに保存していたんです。その後、BとAは仲が悪くなり、Bは“店に迷惑がかかればAの責任になる”と考え、2月4日午前2時10分ごろ、動画をツイッターに投稿し、大騒動へと発展したんです」(捜査関係者)
友達同士の仲たがいから書類送検へと至った稀有なケースだったのだ。
「元アルバイト店員2人はツイッター拡散後、かなり憔悴していて店側には同情している従業員も多かったといいます。それにAくんは、自分がBくんに嫌われたせいで19歳少年を巻き込んでしまった負い目もあるようで声もかけられないほどだったといいます」(くら寿司関係者)
おふざけ動画を撮った2人は実名と顔写真も拡散され、それは永久にネット上に残る。一時の悪ふざけによる社会的代償は計り知れない─。