デビュー5周年、10周年、15周年。節目には、必ずそのステージに立ってきた。きよしくんの歌声、汗、そして涙をよく知る場所……日本武道館。20周年記念公演を終え、いま感じていることとは?
有限実行してみせた「43曲」
7月11&12日、『氷川きよしデビュー20周年記念コンサート~龍翔鳳舞~』がド派手に開催された。怒濤(どとう)の43曲、3時間をゆうに超えるステージ。昼夜3公演に2万4000人が熱狂した。
「今までやったショーの中で、いちばん納得してますし、いちばんちゃんと歌えたような気がしています」
武道館公演から10日ほど経過した、とある日。スタジオに姿を見せたきよしくんはすがすがしい笑顔で語ってくれた。
「半年前から“どうしようかな”と考えていたんです。すべてのジャンルをオリジナル曲で、ロックもバラードも演歌も歌謡曲も全部入れたくて。どれも、すべて“氷川きよし”にしたかったんです。
コンサートツアーで“年の数だけ歌う”と宣言したから、やるしかない。有言実行で。41曲のはずが、しまいにはダブルアンコールも入れて43曲になっちゃいましたけど(笑)」
オープニング曲の『龍翔鳳舞』では、1・8メートルのステージがさらにせり上がり、約7メートルの高さまでに。そのスケール感に観客は度肝を抜かれた。
「登場すると、ものすごいお客さんで。“こんなに待ってくださっている人がいるんだ”と感激でした」
何を隠そう、高所恐怖症のきよしくん。地方のホテルに泊まるときも“できれば2階にして”とお願いしているほど。
「だから、リハーサルのときは“コワイ!”とか言ってたんですが(笑)、本番になったら、やっぱりお客さんがいるから“氷川きよし”にならないといけない。自然とスイッチが入るんでしょうね」
「お客さんに逆に失礼よ」
股旅演歌や『きよしのズンドコ節』などのヒット曲は言わずもがな。5月にはツイッターのトレンドで世界4位になるほど話題をさらった『限界突破×サバイバー』やGReeeeNが楽曲提供をした『碧し』など、演歌の枠にはおさまらない姿もたくさん披露。
「昔から友達には“オリジナルでポップスとか歌わないの?”と聞かれてて。“そんなに簡単じゃないよ”と答えてました。あまりに演歌歌手のイメージが強すぎるから、自分が演歌以外の曲を出しても……と思っていました。世の中に受け入れてもらえるかどうか、そればかりを恐れてきた気がします。それに、演歌歌手という枠からはみ出したら批判されるような気もしていました」
しかし、ある関係者からもらったアドバイスが心に大きく響いたという。
「“もう40歳を過ぎて、20年近くもキャリアを積んでいるんだから、あなたが歌いたくてしかたがない、楽しくてしかたがないものを歌っていかないと、お客さんに逆に失礼よ”と。
びっくりしました。そして、本当に気持ちが入れば音楽のジャンルは関係なかったことに気づいたんです」
思い込みからの覚醒。今や、コンサートツアーでもロックを歌う。年配客は目が点になるというが、
「でも最初だけ。最後はもうノリノリ(笑)。考えてみれば、60代や70代の方もロック世代じゃないですか。年を重ねていくと、気恥ずかしいと思っちゃうんでしょうね。でも、一緒にはじけてもらえるとうれしいし、絶対そのほうが楽しいと思うんです」
もちろん、これからもきよしくんの主軸が演歌であることは変わらない。
「いい意味で、演歌歌手の枠を取り払えるような挑戦をしていきたい。“氷川きよし”でないとできないことをやっていきたい。自分の身体と心を通して、自分の心の中から出てきた言葉をメロディーに乗せてしっかり歌っていける曲を、自分の人生を、歌いたいと思っています」
20年かけて充填し続けた“氷川きよし”を、これからは放出し続けるのかもしれない。
武道館を終えた夜
「2日目の昼公演と夜公演の間の休憩時間は1時間くらいしかなくて。ほぼ6時間ぶっ通し(笑)。武道館を後にしたのは23時くらい。もうクタクタでした。家に帰って、初めて自分の武道館公演を見ました。スタッフさんが撮ったものをDVDにしてくれたので。安堵感から、お酒を気持ちよく飲みました」
何を飲んだの?
「本当はシャンパンが好きなんですが、糖分が多いので、カロリーの少ないハイボール。おいしかった~! DVDを見終わったのは、朝4時。“よく頑張ったね”って自分で言ってあげました」
ただ翌日にはテレビの生放送があったきよしくん。寝不足のまま行ったそう。本当にお疲れさまでした!
海に行ってきたよ!
「ミルクとココアと一緒に近場の海を散歩して、海の家でお茶をしてきました。ミルクがすごく喜んでて。でも、暑いから気をつけてあげないと。毛皮を着てるのと同じだから」
きよしくんの愛犬といえば、ミニチュアダックスフントのココアちゃん(13歳)とミルクちゃん(7歳)。ココアちゃんは2歳のころからほぼ全盲だ。
「ココアはもう13年も生きてて。デビュー20周年を一緒に迎えられたことが、すごくうれしいです。最近、口のまわりにシミができてきて……人間と一緒ですね。本当に可愛いくて、自分の子どもみたいな感覚。“親の気持ちってこういう感じなのかなぁ”と思いますし、ハンデがあっても一生懸命生きている姿に、逆に親が学んでいます。やっぱり、ココアの存在は自分の励み。いつまでも元気でいてもらいたいなと思っています」
『氷川きよし 20周年記念コンサート〜あなたがいるから〜』in大阪城ホール
【日時】9月6日(金)
[昼の部]開場10:30、開演11:30
[夜の部]開場15:30、開演16:30
【会場】大阪城ホール
【料金】9000円(税込み・全席指定)
【問】キョードーインフォメーション
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