これまで何の接点もなかった男女が、結婚相手を探すという目的のために出会うのが“お見合い”です。では、そもそも結婚とはどういうことでしょうか? 赤の他人だった異性とひとつ屋根の下で暮らすことなのです。
婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合いの現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、「結婚できるのは、物事を柔軟に考えられる人」です。
「お見合いは、1時間と決めています」
20代での結婚は、簡単。30代、40代、50代と年を重ねるごとに結婚することが難しくなってくなると、いわれています。
それは、なぜでしょうか?
20代はまだ人生の経験値も浅く、考え方や行動パターンが柔軟。ところが、年を重ねるとともに、自分の考え方やライフスタイルを確立していきます。そうなると自分を変えようとはせず、自分の作ったルールの中で相手を評価し、自分の考えにぴったりと合った相手を探そうとします。しかし、ぴったり合う人なんていませんから、お相手選びが難しくなってくるのです。
先日、ほかの婚活相談で活動をしているという佳恵さん(39歳、仮名)が、婚活相談にやってきました。婚活歴2年。すでに80回近いお見合いをしてきたといいます。
「80人の中で結婚を考えた人は、3人いました。でも、最後の最後でいつも“この人でいいのかな?”という気持ちになってしまい、結婚を決断することができませんでした」
佳恵さんは有名企業に勤める、スラリとした美人でした。話し方も洗練されている聡明な女性。それだけに、ご自身の理想も高いでしょう。
ですがそれだけではなく、これまでどんなふうに婚活をしてきたかを聞いているうちに、80回お見合いをしても決まらなかった理由が、見えてきた気がしました。
そこには、“自分ルール”がありすぎるのです。
「お見合いは、1日に2本とか、3本とかまとめてしてきました。1日の稼動で複数のお見合いができたほうが、効率的ですから。3本やる場合には、11時、13時、15時と組んでいました」
お見合いを1日のうちに2本、3本とやるのは、今の時代そう珍しくはありません。ただそのときは、お見合いとお見合いの間を最低でも3時間あけています。話が盛り上がると、1時間半や2時間はあっという間にたってしまうからです。
こういう私に、佳恵さんは言いました。
「私は2時間あければ大丈夫です。お見合いを1時間と決めていますから。1時間たったら切り上げて、残りの1時間で次のお見合いへと移動しています」
お見合いは、就職試験ではありませんし、何かの講義でもありません。1時間たったら、自分の中でチャイムが鳴り、次の場所へと移動する。そんなやり方をしていたら、血の通った会話はできないはずです。
人とコミュニケーションをとるときには、いかに感情が入るかが大切です。その場の雰囲気や気持ちの盛り上がり方で、お見合い時間を柔軟に考えてもよいのではないでしょうか?
彼女にはそうアドバイスしたのですが、“お見合い1時間ルール”を頑(かたく)なに変えようとはしませんでした。
「お見合い後のデートは食事ではなく、お茶!」
徹哉さん(38歳、仮名)は、週末にお見合いをした敏恵さん(35歳、仮名)と交際に入りました。
結婚相談所でのお見合いは、個人情報をダダ漏れさせない観点から、お見合いの場での双方連絡先交換は、禁止とされています。お互いが相談室に“交際希望”を伝え、そこで初めて連絡先の交換となるのです。
交際になったら、その日か翌日の21時に男性が女性へファーストコールをするというのが不文律です。
徹哉さんは、交際になった翌日の21時に、敏恵さんにファーストコールをして、「今週末、食事に行きませんか?」とお誘いしました。
すると、敏恵さんの答えは、こうでした。
「私はお見合いの後、初めてお会いするときは、ウイークデーの仕事終わりに、お茶をすると決めているんです」
「えっ? 仕事終わりにお茶ですか?」と聞き直した徹哉さんに、敏恵さんは理路整然と言ったそうです。
「食事をしながら話をすると、話に集中できないですよね。あと結婚相談所では、食事やお茶代は男性が払うということになっているので、まだ本格的に付き合うかどうわからないお相手にお金を出させるのは、申し訳ないですから」
そして、水曜日の仕事終わりの19時30分から、都内のコーヒー専門店でお茶をすることになったのでした。
徹哉さんは、私に言いました。
「定時に会社を上がることにしていたのですが、19時30分からお茶だとお腹がすいてしまう。かといってどこかに入って食事をする時間もない。昼休みにコンビニで、サンドイッチとおにぎりを買っておいて、会社でそれを食べてから、待ち合わせ場所の喫茶店に向かいましたよ」
男性に気を遣わせないための提案だと、敏恵さんは考えていたようですが、お茶に限定されるなら、夕食時だし一緒に食事を楽しみたかったと、徹哉さんは思ったそうです。
「日曜の夜は、夜の9時には家にいたいのです」
千葉在住の謙也さん(41歳、仮名)が、札幌在住の澄江さん(38歳、仮名)とお見合い後、交際に入りました。遠距離でしたが、2人の距離を縮めるには頻繁に会うことが大事。謙也さんは、毎週末、飛行機に乗って札幌に行き、澄江さんとデートを重ねていました。
お付き合いに入って1か月後、今度は澄江さんが千葉に遊びに来ることになりました。謙也さんは、張り切って飛行機の往復チケットと澄江さんが滞在するためのホテルを取りました。
喜んでもらおうとそのことを告げると、澄江さん喜ぶどころか怒りだしたのです。
「帰りの到着時間が、札幌21時着になっているけれど、どうしてそんな遅い時間にしたんですか? 私、翌日は会社ですよ。前にもお伝えしましたよね。私は休みの日にどこに出かけても、翌日が会社の場合は、21時までには必ず家に帰ると決めているんです。本当に自分勝手な人ですね」
あまりの剣幕に、謙也さんはシュンとしてしまいました。「僕の配慮が足りなかったんです」と連絡をしてきたのですが、私はこの話を聞いて、謙也さんが気の毒になりました。
飛行機代もホテル代もお金を出すのは、謙也さん。男性に散財をさせているのですから、まずは感謝の言葉を伝えるのが先のはずです。
「チケットとホテルを取ってくださってありがとうございます」
そのうえで、「翌日、会社があって朝が早いし、できたら帰りの時間を早めたいのだけれど、チケットの変更はできますか?」と言うのが筋ではないでしょうか?
独身でひとり暮らしをしていると、1日24時間を管理するのは自分です。休みの日は、好きな計画を立て、思いどおりに時間を使うことができます。しかし、結婚という共同生活に入ったら、自分が多少無理をしても、相手に時間を合わせたり、相手のために時間を使ったりすることが出てきます。
自分ルールを押しつけたり、自分のメジャーで相手を推し測ったり、そこで良しあしを決めていたりたら、永遠に人との共同生活はできません。
頑固にならず、柔軟に考え、相手を受け入れる器を大きく持つことが結婚には大切なんですよ。
鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/