お受験コンシェルジュ&戦略プランナーのいとうゆりこさんが、東京都・神奈川県の小学校受験を中心に、学校説明会や幼児教室ではなかなか教えてくれないリアルな“お受験情報”を発信。小学校受験本番を迎える、幼稚園年長のお子様方に焦点を当て、保護者ともども1年間どのように戦い抜いていけばよいのか各月ごとのポイントを教えてくれます!
8月編では、夏休みの体験談をお子様がうまく話せるようになるための秘訣、そして願書を書く際の注意点についてお話ししていきます。
■夏休みの体験談、お子様がうまく話せるようになるには…
夏休みも折り返し地点を迎え、大手のお教室では夏期講習“後期”がスタートしていることかと思います。普段お顔を合わせている他のご家庭のお子様たちが、夏休み前半を経てひと回り成長していたとしても焦らないようにしてくださいね。
子どもの成長は千差万別です。自分を見失わないように、しっかりと自らのご家族とお子様と向き合い、毎日を大切に過ごしてください。
またこの時期は、夏休みだから……といろいろ詰め込みすぎた疲れが出てくる時期でもあります。1日くらいやらなくても……と思われる方もいるかもしれませんが、その“たった1日”が命取りになることを忘れないでください。
早寝早起き、ラジオ体操、朝のペーパー、絵日記など、ルーティンワークをしっかりこなしましょう。
そして夏期講習の後期では、夏休みの経験をもとにした絵画制作やお話作りなどが行われますので、これから旅行に行かれるご家庭は、荷物の準備、交通手段、経路、1日の計画立てなども、すべてお子様とご一緒になさってください。
また旅行から帰ってきたら、すべての行動を“復唱”し、頭と身体に叩き込んでいただきたいです。なぜ、この場所に行くのか? と、旅行の理由を一緒に考えたり、地理(地図)も含めて確認をしておきましょう。
昨年、お預かりしていたお子様の例となりますが、そのご家庭では、お父様が長期の休暇を取れなかったことと、お子様が自動車好きだったことから、旅先に名古屋のトヨタ博物館を選ばれました。
興味のある自動車に関係のある旅行先に行くほうが、お子様からよい言葉や表現が生まれるだろうとも思われたようです。
実際に、高速道路や「道の駅」など、寄り道も楽しもうと車で出発。
お手洗いは早めに宣言しないと、渋滞中は簡単に行けないことなどもしっかり伝え、車中は“しりとり”や“あたまとり”などの言葉遊び、外の様子の観察などをされたそう。
また、東名高速で直行するのではなく、行きは海岸コースを選択して、熱海で1泊、箱根まで上がって夏の山の景色も見せ、餃子を食べ、御殿場アウトレットでお買い物。大人も子どもも楽しめるコースで愛知県に入り、トヨタ博物館へ行ったそうです。博物館も思っていた以上に楽しむことができ、お子様も大興奮されたとのこと。
しかし、説明員の方が豊田市と繰り返しおっしゃっていたのと、トヨタ自動車の社名がお子様の頭を混乱させてしまっていたようで、お教室での“発表会”では「家族でトヨタに行ってきました。自動車の仕組みを見たり、昔の車がいっぱいあって面白かったです」と言ってしまったそうです。
決して間違いではないのですが、大人としては“名古屋”という誰にでもわかる地名を答えに入れてほしいところ。あくまで大人の勝手な都合なのですが、何度か修正しているうちに、「名古屋に行ってきました」と言えるようになり、トヨタは会社の名前で地名が由来していることも理解。
10月の直前講習では「夏休みは家族でトヨタ自動車の本社がある名古屋に行ってきました。豊田市にあるトヨタ博物館で自動車の仕組みや昔の車を見ることができて楽しかったです」と発表できるようになったそうです。
絵画や工作でも、博物館で見たタイヤの大きな昔の車を描けるようになり、「海外旅行や大きな経験はさせてあげられなかったものの、息子にとっては実りある旅行となった」と、ご両親も満足されていました。
夏休みの経験は、秋の受験本番に向けてお子様自身に自信をつけてあげられるラストチャンスでもあるので、大切になさってください。
■願書を書く際に気をつけたいこと
願書添削も佳境に入り、お教室の先生からいただいた修正アドバイスのもと、何度も書き直しているころかと思います。願書は“学校へのラブレター”です。どれだけ好きか、恋い焦がれているか、ひと言ひと言丁寧に伝えてください。
ここで注意が必要なのは、面接のある学校では、この願書をもとに面接が行われるということです。うわべだけのきれい事を並べても、すぐに見抜かれてしまいます。本当に思っている“事実”を記入しましょう。
また、多くの学校は願書に両親のプロフィールを書く欄はありませんが、備考欄や志望動機にアピールすべきポイントがある場合はうまく取り込みたいですね。
とはいえ、数年前に添削しましたあるIT企業の経営者の方が書いたアピールポイントは少々行きすぎたものでした。「私は◯◯会社を経営しております。小学生のころから授業でパソコンを取り入れたり、プログラミングを学ばせていただけるということに感銘を受け、志望させていただきました。弊社としても貴校をサポートすることも可能でございます」と書かれていたのです。
たしかに学校の教育方針と家庭の教育方針の合致が学校側の合格基準のひとつです。しかし、上から目線の“貴校をサポートする”という文言はいかがなものかと思います。願書はラブレターであり、謙虚な気持ちで“私の想いを受け入れてください”と表現しなければなりません。
ちなみに、添削の内容としましては、「これからの時代、幼少期から正しい方法でパソコンに触れているのと触れていないのでは、将来大きな差が出ると仕事柄、危機感を感じております。貴校の低学年から授業でiPadを取り入れたり、プログラミングを学ばせていただける環境は大変ありがたいです」としてみてはどうかと、アドバイスさせていただきました。
学校説明会、学校案内、ホームページ、卒業生や在校生などから、あらゆる情報を得て研究し、学校が求める生徒像とご家庭像を読み取り、学校側から“ご縁を持ちたい”と思われるよう文字と言葉でしっかり表現するためにも、あと1か月半でしっかり仕上げてまいりましょう。
<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design