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「VTuber(バーチャルYouTuber)」という存在をご存じだろうか。現在、テレビ番組や企業が注目する新しい形のタレント「VTuber」。本稿ではその実態や、人気の理由について深掘りしていく。

 子どもがなりたい職業ランキング1位にもなったYouTuberは、動画サイト『YouTube』でさまざまなタイプの動画を配信し人気を得ている。なかには、アイドルと並ぶほどの人気を獲得し、歌手デビューしたり企業タイアップをしたりと活躍し、今では芸能人もYouTuberに参入するなど、その可能性の幅は、とどまるところを知らない。

 そんな新しい形のタレントが浸透していくなか、徐々に人気を獲得している存在がVTuberだ。そもそも、VTuberとは何か。それは生身ではなくバーチャルなアバターで活動するタレントで、アニメキャラクター風の2Dイラストや3Dモデルを用いて自分の理想の姿を作り、それを動かしながら動画制作や配信活動を行う。ただしアニメキャラクターと異なり、「声優」や「中の人」という呼び方はせず、あくまでもアバターは「本人の新しい身体」で、話しているのは「魂」。「現実の姿」と「バーチャルの姿」を着替えた状態なのだ。

企業も注目し始めたVTuber 

 現在、8000人を超えるVTuberがいるが、その中でもっとも有名なのは「Kizuna AI(キズナアイ)」だろう。

 日本のVTuberの先駆けであり、現在200万人以上の登録者を誇る彼女は、テレビ番組や企業コラボ、訪日観光大使など、目立つところで活躍し続け注目を集めている。

 日清食品では『日清やきそばU.F.O』のCMに輝夜月(かぐや・るな)を起用。サントリー、ロート製薬もVTuberを企業活動として送り出し、テレビ東京の『ドラマ24』では3人のVTuberがキャラクターを演じる『バーチャルYouTuberドラマ』が放映された。

 VTuberの人気は2017年末から一気にブレイクしたが、話題にのぼるVTuberは圧倒的に女性アバターが多い。最初に女性的容姿のキズナアイが話題になったとき、早い段階で反応したファンの多くが男性だったからだろう。そのファン層の流れをついで、2017年から2018年初頭に続々と女性VTuberが誕生した。

 女性アバターが多く世に出た理由のひとつに、「可愛い女の子になりたい」、「その姿ならではのことを表現したい」という信念を持ったVTuberやスタッフが多かったのも大きいだろう。ユーザーローカルによる登録者数の調べを見ると、登録者数上位30位くらいまで、女性VTuberがランクインしている。

 しかしながら最近になって、「男性VTuber」が頭角を現し始め、彼らならではの表現に注目する動きが盛り上がってきている。

 2018年半ばから、VTuber全体の知名度が上がるにつれ、新たに女性のファン層が広がり、男性ファンも男性VTuberの身近さや話しやすさを感じ、積極的に応援するようになった。その中でも男性目線のトーク力が魅力の「にじさんじ」剣持刀也(けんもち・とうや)と、男性ボーカルとラップがファンの心をつかんだMonsterZ MATEの活動を紹介したい。

バーチャル世界だからこその距離感

いちから株式会社が運営する「にじさんじ」

 いちから株式会社が運営する「にじさんじ」。iPhoneXの顔認証機能で2Dアバターを動かし、動画配信を行うグループだ。「にじさんじ」では、配信メインで活動する場合は「バーチャライバー」と呼んでいる。二次元アニメキャラクター風の存在が、配信を通じて視聴者とやりとりできる、という生々しい距離の近さがバーチャライバーの人気の理由だ。

「にじさんじ」には80人近くのVTuberが在籍していて男性も多い。中でも人気のあるのは、剣持刀也という男子高校生。スラリとした背格好のまじめそうなイケメン……と見せかけてツッコミが鋭く、時折、口が悪いのが特徴。冷静なトーク力、テンポよく盛り上げるツッコミ技術、みんなの中心に立って整理する司会力、そしてVTuber界隈への深い愛情をもった発言で、次第に男女問わず熱烈な支持を受けるようになった。

 ファンの言葉に向き合い、全力でぶつかってくれる彼の姿は、バーチャル「クラスの男友達」といったところだろう。

剣持刀也
 剣持刀也とは違う形で注目をされているのがMonsterZ MATE(以下・MZM)。彼らはバルス株式会社で活動する、狼男の歌い手アンジョーと、吸血鬼ラッパーのコーサカによる2人組ユニットで、オリジナル曲のMVを頻繁にアップし、メジャーデビューもしている。高らかで力強いアンジョーの歌声と、魂を絞るようなコーサカのラップは聴きごたえがあり、MVも凝ったものばかりで、一切、手抜きが見られない。

 昨年は男性VTuber全般に光が当たりきっていない時期だったこともあり、どんなにハイクオリティーのMVを作っても、彼らはいま一歩話題にならなかったが「バーチャル紅白歌合戦」に出演し、たくさんの人の目にMVが触れてから人気VTuberの仲間入りを果たした。

MonsterZ Mate

 男性VTuberはまだ、活動し続けることが厳しい土壌の上にあるが、信念を持って活動し続ければメジャーデビューも夢ではないという好例を示したのは彼らだろう。そんな男性VTuberの情報は、「2D☆STAR Virtual」でも特集されていて、にじさんじから21人とMZMのインタビューが掲載されている。

 VTuberは、タレントである以前に「バーチャルな命」。キャラクターではなく、ひとりの存在として自己表現している姿に、男女を問わず視聴者は惹かれていくのだろう。トークや音楽などを、あえてバーチャルな世界でするのは、そのほうが自らの理想に近く、得られるものがあるからだ。

 少年、少女、おじさん、吸血鬼、犬……常識にとらわれず、想像もできないような姿形で自らを表現するVTuberから目が離せない。

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