天下の吉本興業がこれまで見せてきた“笑い”とは真逆。涙や怒りといった感情がぶつかり合い、6月から続いている一連の“騒動”は終息するのだろうか。
8月10日、明石家さんまが『ヤングタウン土曜日』(MBSラジオ)にて、「(騒動について)ようやくラジオでもしゃべらんでいいようになってきた」とコメント。翌11日、今度は松本人志が『ワイドナショー』(フジテレビ系)にて「最悪の状況からはちょっと脱出できた」と発言。
吉本のトップ中のトップである2人が出した“終息宣言”の背景にあるものは─。
「吉本興業は、7月25日に、経営改革について専門家から助言してもらう『経営アドバイザリー委員会』の設置を発表し、8月8日にその第1回目の会議が開かれました。今回は“反社会的勢力への対抗措置”と“タレントとの契約とマネージメント体制”について話し合われ、この2つが含まれた『共同確認書』を所属する全芸人と交わすことが明らかになりました」(スポーツ紙記者)
芸人たちと吉本が交わすという『共同確認書』とはいったい何なのか。週刊女性が入手した“実物”を見ると、まずは前文として以下のような“宣言”が記されていた。
サインしない若手芸人も
《わたしたち“よしもと”にかかわるすべての人間は、2019年6月27日付で公表した決意表明に基づき、常に法令及びコンプライアンス遵守の精神に従い、以下の事項を共同して誓約・宣言します。
そして、“よしもと”のタレントたちがこれからも「笑い」の力で世の中を明るくし、世間から永く愛されながら活躍していけるよう、一丸となってタレントの芸能活動に支障が生じるようなトラブルの防止及びその解決に全力を尽くします》
7つある項目は以下のもの。
1 反社会的勢力との関係を断絶します。
2 教育を徹底します。
3 営業先を適切に決定していきます。
4 守秘義務を守ります。
5 差別と中傷を排除します。
6 あらゆる権利を尊重し、マネジメントを行います。
7 本宣言を周知・徹底します。
反社会的勢力に対抗し、コンプライアンスの遵守を徹底するという確認書。こちらを渡された吉本所属の若手芸人によると、
「ブレイクしている人とかは違う形かもしれませんが、東京の若手は、東京本社に5組ずつ呼ばれて、少し説明されてサインする感じでした。1グループ15分くらいで回してましたね。サインせずに持ち帰った人もいましたよ」
確認書の配布は8日に吉本から発表されたが、現場では8月1日にはすでに芸人たちに渡されていたようだ。そして、中には……。
「そんなの俺はもらってないですね」
そう話すのは、同じく吉本所属の中堅芸人。
一見、芸人のためにみえる「項目6」
「ちゃんとした契約をすると発表したけど、確認書はウヤムヤにしようとしているのかなと思っています。それか、ただ単にまだ順番がきていないだけかもしれませんが」
こちらの中堅芸人は、“表営業”にもかかわらずギャラが吉本から支払われなかったり、未払いを追及すると“あれ、ノーギャラやで”と後出しされた過去を持つ。彼に確認書を見てもらうと、
「1〜5の項目に関しては、大したことは書いてないなって思うし、まぁそこならサインしてもいいのかなと思いました」
問題がないわけではない。
「気になるのは6の項目ですね。今までろくにマネージメントなんてしてないくせに、よく言えるなと感心しちゃいますよ。“タレントの諸権利を管理・保護・行使します”とあって一見、芸人のために言っている感じがしますが、著作権などが絡む案件のギャラの割合が不明だし、会社に管理される期間などが明記されていないので、都合のいいように解釈されそうで不安ですね」
7つ目の項目には、《本共同確認書に反する社員らの言動が判明した場合、それによるあらゆる責任を負担するものとします》とある。
「そう書くなら、今まで未払いになっているギャラをちゃんと払っていただきたい。そしてパワハラや辞める際に圧力をかけていることを認めたほうがいい」
さらに吉本所属の別の芸人も不満を続ける。
「トラブルについて、現場レベルで対応できるようにするってあるけど、めちゃくちゃ若い頼りない人しか現場によこさないのに、誰が対応するんだろうって感じ。いまと同じく“上に確認します”って言って、だいぶ時間がかかるのが目に見えてる」
今回の騒動は、営業先が反社会的勢力だったことが発端だったが……。
「“営業先を適切に決定”って、芸人は約6000人いるけど、誰が確認するんだろう。たぶん変わらない。売れてる上の人たちの営業はちゃんと見るのかもしれないけど」
経営アドバイザリー委員会の次回開催と、共同確認書の配布について吉本に話を聞くと、「8月19日にも経営アドバイザリー委員会を開催しました。共同確認書は全員に配布・署名を完了させるため、鋭意作業中」とのことだった。
今回、週刊女性に声を上げた芸人たちは、騒動の中心にいる芸人に比べ売れていないため、その逆恨みのように思えるかもしれない。実際、大御所芸人には、「嫌ならやめろ」「嫌なら売れろ」という者も少なくない。しかし、6000人という芸人を抱え、今後も抱え続けると宣言したのはほかならぬ吉本であり、そのなかで未払いなどが生まれているのも事実だ。共同確認書は、以下の言葉で締められていた。
《“よしもと”のタレントたちがこれからも「笑い」の力で世の中を明るくし、世間から永く愛されながら活躍していけるよう、一丸となってタレントの芸能活動に支障が生じるようなトラブルの防止及びその解決に全力を尽くします》
全芸人が笑える日はいつになるだろうか……。