あれやこれやと挑戦してみるものの、結局はやせられないって人のなんと多いことか!
「私も同じでした。ありとあらゆるダイエットに挑戦して、でも長続きしなくって……」。と、豊田愛魅先生。そこで考えたのが、「食べるのを我慢するのではなく、しっかり食べて、太らない身体をつくる」という逆転の発想。これなら、あなたもやせられるかも。
やせてきれいになるはずが、まるで病人のように
やせようとすると、まず浮かんでくるのが、糖質はダメ、フルーツも果糖が多いからダメ、ケーキやポテトチップスの間食もダメ、ジュースもダメ、コンビニ食もダメ……で、ダメダメばっかり。
豊田先生も「こんなに食べちゃあいけない、これを食べたから、夕食は何か減らさなくては……。いつもそんな気持ちを抱えて、ダイエットの呪縛に取り憑かれていたんです」とダイエットには、苦労したそう。
「でも身体は食べることで、やせる身体になることがわかったんです」。
食べてもOK、しかも運動はしなくてよし、わざわざダイエット食を作る手間もいらない、そんなズボラさん向きのダイエットがあるのです。
見るからにスリムな豊田先生だって、ダイエット経験者。しかもダイエット難民で、苦労してやせてもリバウンドして、また違うダイエットをしての繰り返しだったそう。私たちにも思い当たりますよね。
「ありとあらゆる無理なダイエットをしていました。私が人生最大に太っていたときは、身長153cmで体重は約60kg、体脂肪率は約31%。誰が見ても立派な肥満体!
やせたくて、野菜やお豆腐しか食べず、エステに通い、ジョギングもやって、42kgまで体重を落としましたが、体温が下がって冷え性が悪化し、風邪はひきやすいし、肌も潤いがなくカサカサで、髪の毛もバサバサに。
やせてきれいになるはずが、まるで病人のよう。しかも、せっかくやせたのに半年でリバウンドしてしまい、そんなことを繰り返すうちに、どんどんやせにくい身体に。
意志の弱い自分が情けなく、そんな自分を責めたりしているうちに、ストレスで呼吸が浅く息苦しくなって眠りも浅く、心身ともに何ひとつ、いいことはありませんでした。
いつも『こんなに食べちゃダメ』って声が頭の中でしていて、罪悪感なしに食事をしたこともなくて。何年もの間、美味しいなと思って何かを食べたことがなかったような気がします」(豊田先生、以下同)
管理栄養士の資格を持っていても、ダイエットの呪縛に取り憑かれた豊田先生。でも最悪の状況を体験してみたからこそ、一念発起。食のプロとして、自分のやってきたダイエット法を見直すことに。
「“食べない、とらない”では続かない、“しっかりとって、やせる身体をつくる”ためにどうしたらよいのかを研究し、自分の身体で実践しました。現在、体重は46~48kg台で、体脂肪率は23%前後です」
マイナス12kgは、ダイエットの数値としては衝撃的ではない。激やせ体験者の中には、20kgとか、それ以上とかやせた人もいるが─。
「数値よりも大事なのは、『見た目体重』。私は体形が、“ふた回り小さく”なりました。そしてこのダイエットをしてから、何の苦労もなく、リバウンドすることもありません。
肌や髪のハリツヤもよくなりました。風邪をひくこともなくなりました。そしてなにより、食べ物を美味しくいただけるのが、幸せです(笑)。
苦労しなくても続けられる。ダイエット中の方、やろうかなと考え中の方、挫折しかかっている方に、ぜひ試していただきたいです」
肝臓と腸を整えるだけ!
ズボラな人でもやせられる、そのポイントは何?
「基礎代謝を上げることでやせる、ここがポイント。基礎代謝とは、私たちが何もせずじっとしているときでも、身体が生命を維持するための、必要最小限のエネルギー量。
つまり生きているだけで使われるエネルギー量を増やそうというのが私の提唱するダイエット法です」
基礎代謝量は10代をピークに加齢とともに低下する。若いころと同じものを食べ、同じ生活をしていると、太ってしまうということは、私たちにもわかる。しかし、基礎代謝量を上げることはできるのだろうか?
「そこを研究したのが、今回のダイエット法です。筋肉を鍛えて筋肉でのエネルギー消費量を増やすというのがダイエットの王道です。けれど、私もそうでしたが、運動を継続するのは大変ですよね。
ジムに通う時間もないし、筋トレやジョギングはめんどくさいと思うのは私だけではないでしょう。そこで私が注目したのが、肝臓と腸です。
ズバリ言います、肝臓と腸を整えれば、基礎代謝量や消費エネルギーは上がります」
肝臓は全基礎代謝量の27%
これまでは基礎代謝を上げるには、筋肉をつけなければいけないというのが定説だったはず。
「そう思い込んでいる人が多いのですが、1日の基礎代謝量の内訳では、最も基礎代謝量が多いのが肝臓です。
最新のデータでは、筋肉の割合が減り、肝臓の割合が高くなってきています。以前は基礎代謝量の40%を筋肉が占めると考えられてきましたが、筋肉の割合は18%で、肝臓は全基礎代謝量の27%です! つまり肝臓機能を整え高めることが、重要なんです」
肝臓はわかったが、腸を整えるのは、何のためなのか?
「腸を整えるのは、やせる身体づくりの根本的な土台になります。腸の機能が低下すれば、せっかく食べた栄養素がうまく消化・吸収されずに、エネルギー消費のための栄養素が吸収されなくなります。
どんどんエネルギーを燃やして消費していこうとしても、必要な材料が供給されなければ、省エネモードに切り替わり代謝機能は低下してしまいます」
運動や食事制限をしなくても、肝臓と腸の働きを整えれば基礎代謝量が上がり、やせる身体になるというわけだ。
「そのとおりです。そこで、次の2点を頭に入れてください。
●肝臓を整えるために、タンパク質と肝臓サポート成分をとる
●腸を整えるために、食物繊維とビフィズズ菌をとる
これだけ守れば、あなたもきっとやせられます」
「朝いちタンパク質」をとる
肝臓をはじめとする内臓機能を高め、基礎代謝を上げるには「毎食、タンパク質をとること」が大事。タンパク質をとらずに食事制限をしてしまうと美しさも失い健康を害することにもなりかねない。
「私が最初にダイエットに失敗したのも、1日のタンパク質量が不足していたから」(豊田先生)
今回、目指している、「食べて健康的にやせる身体づくり」は、健康体であることが絶対条件。健康体でなければ、食べてやせる、合理的な身体づくりは達成できない。
タンパク質摂取の1日分の目安は、最低でも60g。1日3回の食事なら1食に20g、これだけはとるのがルール。特に朝、タンパク質をとることがポイントになる。
朝いちタンパク質の働きと効果を上げてみよう。
(1)肝臓をはじめとする内臓機能を高める
(2)食べてもエネルギーとして消費されやすい
(3)肥満ホルモンを抑えてくれる
(4)食欲抑制ホルモンの働きがよくなる
「だけど、朝は忙しいし、朝いちから高タンパクの食事なんて作っていられませんよね。そこで私がおすすめしたいのが、プロテインを朝ごはんとしてコップ1杯飲むこと。これで1食に必要な20gをとることができます」(豊田先生)
豊田先生は言います。
「とっちゃダメと自分を追い込むのではなく、必要な分はしっかりとるように、意識を変えてほしいのです」
肝臓の機能を整え高めて、基礎代謝を上げ、やせるためには、タンパク質をとらなければならないことが、わかっただろうか。
朝いちタンパク質をとるには、プロテインが簡単だけれど、卵も活用してみよう。卵1個に含まれるタンパク質量は約6・2g。
目標の20gには届かないが、完全栄養食品と呼ばれているだけあって、ビタミンCを除くほぼ全部の栄養素、8種類の必須アミノ酸を含んでいる。フライパンを使う卵料理は面倒だけど、ゆで卵なら、誰でも簡単に作れる。
「ゆで卵に加えて、牛乳や豆乳をコップ1杯飲めば、タンパク質は13g近くとれます」
そして、TKGもおすすめ。
TKGとは日本人の国民食ともいえる、『卵かけごはん』のこと。何だかちょっとおしゃれな感じもしますよね。
「私の朝食は週の半分くらいは、プロテインジュースとビタミンB群やビフィズス菌などのサプリ、そして食物繊維をとるために粉寒天を溶かしたコーヒー(次のページで紹介)などですが、それ以外の日は納豆入りのTKGを食べています。
簡単に言えば納豆の入った卵かけごはん(笑)」
朝いちタンパク食をとれるようになったら、次は肝臓をいたわる栄養素もとるように心がけたい。そうすれば、肝臓の機能を高め、効率よく代謝を促進することにつながり、結果として、やせる身体になっていく。
「亜鉛、リコピン、クルクミン、タウリン、オルニチンなどです。実は、これらは調味料やドリンクなどで簡単に取り入れることができます」
「食物繊維」と「ビフィズス菌」
では、ここからは腸のお話。なぜ腸を整えるのか。それは、
(1)肝臓の機能を高めるために積極的にタンパク質をとろうとすると、どうしても動物性の食品に偏るので、腸が汚れがちになってしまう。すると腸の機能が低下する。
(2)腸の機能が低下すると、食べた栄養素が消化・吸収されないので、エネルギーを消費するための栄養素が不足して、結果的には代謝機能全般が低下。
(3)しかも、栄養素不足になると、身体はエネルギーの消費を抑えてしまい、やせるどころか、「省エネモード」の身体になってしまうこともあり、やせにくくなってしまう。腸の働きが低下しては効率よくやせられないのだ。
「腸の働きを整えるには、食物繊維とビフィズス菌の両方をとるのがポイントです。そこでおすすめしたいのが寒天。
寒天の食物繊維含有量は100gあたり、約74~79g。レタスの約70倍もあります。寒天を100gも食べられないにしても、わずか2gほどとると、便秘や腸内環境改善に効果を発揮するというデータがたくさんあります」
しかも寒天が重宝なのは、同じく食物繊維が豊富な野菜や豆類、海藻などは料理しなくてはならないけれど、特別加工粉寒天なら調理の必要なし。
コーヒーに入れたり、みそ汁に入れればいい。ご飯を炊くときに加えてもいいのだ。とにかく簡単だ。
腸には、善玉菌と悪玉菌と日和見菌がいるのは周知のとおり。そして、この3つのバランスで、美腸になるか、汚腸になるかが決まってくる。美腸になるためには善玉菌を増やすこと。
大腸の善玉菌はほとんどがビフィズス菌なので、ビフィズス菌を摂取すればいい。
「ヨーグルトなら1日100g、思いついたときにたくさんの量をとりだめするより、毎日とる習慣をつけてくださいね」
腸内クレンジングをやってみよう
腸の働きの目安になるのが、快便であるか否か。便秘がちで排便のリズムが整わないときは、腸内クレンジングをしてみては?
メイクを落とすときにクレンジングするように、腸もクレンジングをして、たまっている有害物資や老廃物を便として排出しちゃうのだ。やり方は簡単。
エクストラバージン(EXV)オリーブオイルを、朝、スプーン1杯とる。脂質は便の通りをよくし、腸を刺激して排便を促すが、中でもオリーブオイルは、便秘解消に効果があるといわれている。便を排泄して腸の汚れを落とすのだ。
「オリーブオイルの味が苦手な方は、みそ汁のような味の濃いものに加えると、とりやすいですよ」
続いて腸を洗いましょう。
オリーブオイルをとったら、1日かけて1・5~2リットルの水分を補給。常温の水を7~10回に分けて飲むのがポイント。そして腹式呼吸で、お腹をへこましたりふくらましたりして動かすと、腸の働きが促進されて、より排便されやすくなる。
お肌のお手入れも、クレンジング、洗顔の後は、化粧水や美容液で栄養補給する。腸のクレンジングも、食物繊維とビフィズス菌をとって、栄養補給してあげよう。
「食物繊維やビフィズス菌を一緒にとれる寒天もおすすめ」
こうして腸内クレンジングをして美腸になれば、意識的に腸にいい食べ物をとろうとするようになっていく。
「食べちゃあダメの呪縛から解放されますよ!」
「私自身が、試行錯誤しながらたどりついたダイエットは、気持ちの面では、『ダメダメ』と自分を追い込まない。
食事面では、朝いちタンパク質摂取を心がけ、ランチと夕食は肝臓と腸を整える食材を意識してとる、本当にこれだけ。
それでも、運動は面倒、ダイエット用にわざわざ料理作るのも面倒、食事制限もしたくない、そんなズボラな私でもやせられて、リバウンドもしていません。ぜひ参考にしてくださいね」
取材・文/つきぐみ(水口陽子・渡辺晴美) 撮影/山田智絵(豊田先生分)