結末が気になる『凪のお暇』出演者、左から中村倫也、黒木華、高橋一生

 漫画原作、韓国ドラマのリメーク、監察医モノとカブっている作品が目立つ今期の夏ドラマ。猛暑並み? に熱い3人の漫画家たちによるドラマ愛を大公開!

<座談会メンバー>
​◆折原みと
9月30日発売の別冊ハーレクインに『ボスはクリスマス嫌い』125ページ読み切り掲載。「10月11日にハーレクインコミックス『やがて涙は海になる』が発売されます。読んでね!」
◆上田倫子
代表作は『リョウ』『月のしっぽ』『裸足でバラを踏め』など。最新刊『蘭と葵』第7巻(紙版&デジタル版)が発売中。「今冬よりアプリマンガMeeで新作の連載を予定しています」
◆なかはら・ももた
「NHK朝ドラ『半分、青い。』が終わってもうすぐ1年なのかと思うとめちゃくちゃ早いですね。終了後もまだまだ単行本『半分、青っぽい。』発売中です!」

前作のガッカリから最高の高橋一生が開花

──3人の高評価は、空気を読みすぎるヒロインが人生をリセットする黒木華主演の『凪のお暇』(TBS系)。

上田倫子(以下、上田) 原作漫画は雰囲気重視のタッチで読み慣れていなかったけど、ドラマを見てもう1度、読み直したら原作のまんま。高橋一生は、前作の『東京独身男子』ではチャラい最低な役にガッカリしたけど、今回は最高の高橋一生が開花した!

折原みと(以下、折原) 高橋一生、あのドラマで終わったと思ったけど、慎二役はいい。あとゴン(中村倫也)もいい。凪ちゃん(黒木)エロかわ。髪型がアニーみたい。

上田 キスシーンが生々しくてドキドキする。

なかはら・ももた(以下、なかはら) 録画してNHKだと思い込んで見ていて、エロいなと思っていたらCMが入っていてビックリ。民放ぽくないのは黒木主演だからかな。慎二には号泣もいいけど“ストパーやってるところがかわいいんだよ”って言っているシーンで心つかまれました。

上田 (恋愛観が)小・中学生みたいな慎二もすごく空気を読んでて実は、凪と同類。生活感のあるアパートの暮らしぶりもいい。節約グルメもまねしたくなり、“ゴンのトースト”を作りました。

折原 ゴンが凪に作ってあげるハイボールのチョコミントアイスのせも、絶品でした!

上田 ラストは凪と慎二が結ばれるのが王道かな。

折原 どうせくっつくなら凪がドSになって、慎二を踏みつけにするくらいがいい。

なかはら (連載中で結末未定のため)人気が出たら(映像化を)続けるパターンもありますよね。アラサー独身女子が、既婚と偽って年下のイケメンと恋に落ちる杏主演の『偽装不倫』(日本テレビ系)は、宮沢氷魚推しでハマってます。

なかはら推しの宮沢氷魚(左)と主演の杏

折原 2話からは独身って早く言ったら解決するのにとイライラしっぱなし。宮沢は『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレビ朝日系)にも出てたけど、今回がいちばんいいと思う。

上田(主人公が)鏡の中の自分と話すとか、あんなに独白しなくても見てれば心情はわかる。姉夫婦(仲間由紀恵、谷原章介)のもめ事のほうが見たい。

折原 そうそう、谷原さんがブッ壊れたら面白そう。でも、姉の不倫相手(瀬戸利樹)のピンク頭は、偽ユリユリ(前期TBS系『初めて恋をした日に読む話』で横浜流星が演じた由利役)みたいで、いまひとつ。

なかはら 私は原作漫画家の“東村アキコ節”が好き。今回でいえば鏡越しの自分に語りかける。第三者の神様目線のキャラクターが必ず出てくる東村漫画(『海月姫』『東京タラレバ娘』)は、これからもドラマ化していってほしい。

上田 東村先生は“どんどんドラマ化できる漫画を量産する”とおっしゃっていて、漫画界の池井戸潤みたい。漫画原作じゃないけど、泥棒一家と警察官一家の“禁断の恋”を描いた深田恭子主演の『ルパンの娘』(フジテレビ系)はフリ切ってて好き。家族で見て笑っています。ばかばかしいけどサービス精神が最高、配役のバランスもいい。

折原 『ロミオ&ジュリエット』や『帰ってきたウルトラマン』みたいなBGMもツボにハマった。

上田 深キョンの両親役(渡部篤郎、小沢真珠)や祖母役(どんぐり)ら絶妙のキャスティング。“まかしときー”と、なぜか祖母だけが関西弁。いきなりミュージカルになったり、ツッコミどころ満載だけど、なぜか違和感がない。

上田推しの瀬戸康史と主演の深田恭子

折原 オープニングの泥棒ダンスも、衣装から振り付けまで徹底してて、笑える。そして、やっぱり深キョン。

上田 存在感と佇まいが唯一無二の存在。

なかはら 深キョンはデビュー作の『神様、もう少しだけ』(フジテレビ系)から好き。

──映画『翔んで埼玉』の武内英樹監督&徳永友一脚本のコンビで、武内監督は『神様─』も手がけている。

上田 フワフワの私服から泥棒コスチュームになると親に命令口調のギャップもいい。

なかはら 漫画キャラがハマる。映画でドロンジョ様、CMではラムちゃんに。

折原 (恋人に)正体がバレて、どうなるのかな?

上田 恋人で刑事の役作りに10キロ増量して、ムキムキになった瀬戸康史萌え。今期のイチ推しです。

解剖モノが多すぎる

折原 漫画原作で残念だったのが石原さとみ主演の『Heaven?〜ご苦楽レストラン〜』(TBS系)。レストランものは好きなので楽しみにしていたのに、ウエーター役の志尊淳のおバカキャラが嫌。同じような役ばかりやらせないでほしい。そして、店内にトイレがないなんて言語道断。気分が下がると塩味が薄くなる段田安則演じるシェフもありえない。

わがままキャラ連投の石原さとみ(右)、志尊淳

上田 ディテールにウソ臭さがあると、見る気になれない。あと、生き霊が現れる場面もハズしている。漫画表現を実写でやって失敗した例。

なかはら 漫画原作ならいけると思ったのかも。石原は去年の『高嶺の花』(日本テレビ系)に続いて2作品連続して似たような高飛車な役。

折原 どうせ『ドクターX』の役者さんをいっぱい使うなら、主役は米倉涼子のほうが、よかったんじゃない?

上田なかはら 同感!

折原 上野樹里主演の『監察医 朝顔』(フジテレビ系)は、月9にしては、すごいしっとりしていて好きです。

なかはら 私も。でも解剖モノが多すぎるかな。(真相解明の)からくりがわかってきちゃっている。

朝ドラにも出演する山口智子(左)と朝顔役を演じる上野樹里

上田 解剖医が謎解きまで一生懸命やるのは無理があるようにも見える。その一方で、生活感がちゃんと描かれているところは新しい。食事シーンとか、家のセットもいい。

なかはら 山口智子演じる茶子先生と『なつぞら』のおでん屋「風車」の女将・亜矢美のキャラが一緒に見える。

上田 最近(ドラマに)よく出てるので、唐沢寿明と離婚するんじゃない(笑)。

折原 大泉洋主演の日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)も、さすがの池井戸クオリティーで面白い。

上田 ラグビーに興味はわかないし、ルールものみ込めないけど、ドラマのセリフと音楽と映像で感動する。ただ、日曜劇場としてはキャスティングが弱いかな。

折原 ラグビー監督の大谷亮平はいいと思う。キャプテン役の高橋光臣がいい身体していると思ったら、ラグビー経験者だったんですね。温厚なマッチョに萌えます!

池井戸ドラマ出演者(左から)上川隆也、大谷亮平、大泉洋、松たか子、眞栄田郷敦

上田 ラグビー熱は上がらないけど、ニュージーランド帰り役で出演する眞栄田郷敦(父・千葉真一、兄・新田真剣佑)の活躍が楽しみ。上川隆也の悪役も意外といい。

なかはら 大泉洋の妻を演じる松たか子は、松でなくてもいいんじゃない? というくらい出番が少ない。でも、池井戸作品は奥さん役が、いい女優さんですよね。

上田 初回に米津玄師の主題歌がエンディングでいきなり流れたときは驚いた。放送前にもっと告知したほうが話題になったんじゃないかな。

──『トクサツガガガ』や『腐女子、うっかりゲイに告る。』など、“攻めの作品”で目立つNHKの今期は『だから私は推しました』。

NHKドラマに出演する左から多部未華子、白石聖、桜井ユキ

なかはら 生きづらさを抱えたアラサーOL(桜井ユキ)が、地下アイドル(白石聖)を推すことで変わっていく。漫画家で“オタ”は多い。私もそのひとり。チェキ券や握手券を買う。いつも見ている光景をドラマにされて、いたたまれない。

折原 リアルなんだ。『トクサツ〜』でも思ったけど、そんなに“オタ”って言っちゃいけないことなのかな?

上田 漫画を描いてるオタクだとバレたくないので、自分が漫画家だと幼稚園のママさんたちには言えない。

なかはら 会社員だと言えないのかな。私は別コミュニティーがないので隠す必要もないし、その感覚はわからない。ドラマは“オバはん”を主人公にした設定や、たたみかける脚本力が、すごい。“推し”とかけた“押し”た理由が何だったのか気になります。

上田 私も森下佳子さんの脚本なので見始めたらハマった。いきなり取り調べのシーンで、サスペンスタッチだったのも衝撃的でした。NHKではほかに多部未華子の『これは経費で落ちません!』が面白くて、おすすめです。

『ボイス』は暴力的すぎて……

──今期は韓流ドラマのリメークものが3作あります。

折原推しの三浦春馬は初の父親役

折原 三浦春馬主演『TWO WEEKS』(フジテレビ系)は殺人の濡れ衣を着せられて逃亡生活を送る羽目になった結城(三浦)が白血病を患う娘のドナーになるため手術まで2週間逃げ回るけど、ずっと逃げているのは見ていて疲れる。でも、春馬君はいい! 昔は線の細い美少年だったけどいい感じで大人の男になったと思う。今期の推しメン!

上田 筋肉のつき方に無駄がない。フジの特番『Love music』で主題歌を歌って踊る姿もカッコよかった。

なかはら 子どもに移植するためにダメな父親が闘うというストーリーが以前、自分で描いた漫画と似てて、ドキドキしながら見ています。

折原 (ドナーは)ケガしちゃいけないのに思いっきりケガしてる(笑)。逃げずに事情説明すれば(移植)手術はさせてくれるんじゃない!?

なかはら 『偽装不倫』もそうだけど、言っちゃえばおしまい。ドラマじゃなくなっちゃう。

上田 『サイン−法医学者柚木貴志の事件−』(テレビ朝日系) は、主演の大森南朋に華がない……。

なかはら オダギリジョーだったらよかったのに……。

折原 それ、悪くないね。新人解剖医役の飯豊まりえちゃんはいい。今までは“地味顔なのに美人”枠で違和感があったけど、今回は“ヘタレなダメ女”がハマっている。最後に『ボイス110緊急指令室』(日本テレビ系)は?

なかはら 唐沢(寿明)ひとりでやっている感じ?『24』みたいにしたかったのかもしれないけど説得力に乏しい。

唐沢寿明(右)真木よう子(左)の『ボイス』は不評

上田 唐沢の役がすぐに手をあげて荒々しくていただけない。(W主演する)真木よう子の滑舌がひどすぎる。そのなかで、初回に殺された(唐沢の)妻を演じる菊池桃子の迫真の演技は素晴らしかった。

折原 暴力的すぎて暗いので離脱しちゃった。作品ワーストは『ヘブン』か『ボイス』。『ヘブン』はひどいなと思いながら毎回、ちゃんと見ているけど、『ボイス』は見ているのが、ちょっとつらい。

上田 『凪─』みたいに癒されたい。今期のMVPは高橋一生で!

折原なかはら 異議なし!