会場である両国国技館周辺のスタッフ 撮影/奥村シンゴ

 日本テレビ系『24時間テレビ 愛は地球を救う 人と人~ともに新たな時代へ~』が放送された。今年はメインパーソナリティーに嵐、チャリティーパーソナリティーには浅田真央、総合司会は羽鳥慎一と水ト麻美アナウンサー、24時間テレビサポーターを徳光和夫が務めた。

 24時間の平均視聴率は16.8%と昨年の15.2%に比べ1.6%もアップし、放送終了時の募金額も6億8421万2104円と昨年の2億6787万5910円に比べ2.5倍と大成功であった。

直近5年の募金額推移

 日本テレビ汐留本社や『24時間テレビ』の会場である両国国技館周辺を取材し、見えてきたのは“若者への支持に成功している”ということだった。なぜ今年は若者への支持に成功したのか考察していく。

両国国技館の人出、若者が大半

『24時間テレビ』の名物でもあるのがマラソン。ランナーを従来の1人体制から駅伝方式に変更した。第一走者に近藤春奈(ハリセンボン)、第二走者によしこ(ガンバレルーヤ)、第三走者は当日サプライズで発表した水ト麻美アナウンサーが走り、最終走者いとうあさこへたすきをつなげた。

 各走者のマラソンコースには大勢の人たちが駆けつけたが、最終走者であるいとうあさこのゴール付近(両国国技館)には尋常でないほどの観客がエールを送っていた。

 急きょ、会場のとなりにある江戸東京博物館に観覧席を設置し、警備員が「こちらの会場はマラソンのゴールがご覧いただける観覧席となります。確実にご覧いただけます!」と案内していた。

 付近にいた『24時間テレビ』のスタッフに話を聞くと、「ゴール付近におそらく1万人を超える人が集まっているので、観覧席を設けました」と答えた。

 その即席で設営された観覧席で、今か今かといとうのゴールを待っていると、中継車とともに、いとうと白いハチマキをしめたスーツ姿の内村光良(ウッチャンナンチャン)がサプライズで登場し、いとうと並走しながらエールを送っていた。

 2人の登場に会場付近は大いに盛り上がり、「お疲れさま」、「あさこちゃん、よく頑張ったね」、「ありがとう」、「あさこちゃん、あと少し頑張れ」などと温かい声援が多数送られる。

 まさに『24時間テレビ』フィーバーに沸いたわけだが、普段から若者やファミリー層に人気の『世界の果てまでイッテQ!』のレギュラーメンバーであるいとうが、最終走者だったのが関係していたのかもしれない。

特設した観覧席付近には多くの人が集まっていた 撮影/奥村シンゴ

募金するだけで4時間以上

 両国国技館周辺には放送前日から嵐ファンを中心に数千人のファンが集まっていたように見えた。

「予想以上に多くの方が募金に来ていただきました。会場内に設置した募金場所に来るだけで4時間以上お待ちいただく方もいらっしゃいました。あまりにも待ち時間が長くなってしまうので、予定を早めて25日(日)17時ごろに募金を締め切りました(締め切り以降は、会場外のテントで募金を受け付け)。たくさんの方に来ていただき、本当にありがたいと思っています」

 というのは『24時間テレビ』のスタッフ談。

 終了後、両国国技館からJR両国駅まで普段なら徒歩1分程度だが、この日は観客で大混雑し、1時間以上もかかった。おそらく、会場内で募金できるということで、ひと目でいいから「嵐が見たい」、「浅田真央ちゃんを見たい」、「水トちゃんを見たい」などといったファンが多数だったとは思うが、どんな動機であれチャリティーに対する興味や関心が増え、募金額の増額につながったのだろう。

『公益社団法人24時間テレビチャリティー委員会』によれば、『24時間テレビ』の募金は東日本大震災等災害復興費用、介護や障がい者施設などにリフト付きバス・訪問入浴車・電動車イス等福祉車両が贈呈、スポーツ用義足・バスケットボール用車椅子等障害者スポーツ支援などに使われるという。私事ながら、祖母の在宅介護を6年間経験し、『24時間テレビ』の募金からデイサービスに贈呈された電動車イスに使わせてもらったひとりとして、うれしい限りであった。

 日本テレビでも、『24時間テレビ』当日のグッズの売れ行きを視察していたが、売り切れが続出し、嵐の大野智がペン画でデザインした『24hTV42チャリTシャツ』のミントL・LL、水色全サイズ、フェイスタオル、ミラーが「売り切れのため再入荷の予定はない」と案内していた。

 購買層は、嵐ファンが中心であったようにみえたが、孫とおばあちゃんのような家族連れや若いカップルもいた。

 グッズ販売店に話を聞くと「今年の売れ行きは好調ですね。午前中にお店にあった商品が午後には売り切れですからね。おかげさまですごい反響をいただいております」と満足げな表情であった。

売り切れ続出のチャリティグッズ 撮影/奥村シンゴ

 番組の企画でも「若者」にフォーカスしたものが多く見受けられ、例えば「嵐×高校生ブラスバンド甲子園」では高校野球にちなみ、吹奏楽の応援合戦を披露し、登場した3校とともに嵐が『Guts』を熱唱した。

 また、夏休みの小学生301人とイモトアヤコが長縄跳びのギネスに挑戦し、ギネス記録の12回以上を跳ぶことに成功し、会場から大歓声が送られた。

 それ以外にも、空手、パラテコンドー、テニス、卓球、BMX、スケートボード、新体操の選手たちがアートとスポーツを融合させた「スポーツアートパフォーマンス」のコーナーでは、嵐の相葉雅紀が参加し、映像と音、光がシンクロした圧巻のパフォーマンスを披露した。「みんなすごくないですか!? 本当に完璧にやりきってくれました! みんな最高だった」と感極まった様子であった。

個人視聴率からみえる若者へのリーチ

 今回の『24時間テレビ』は平均視聴率と募金額だけでなく、個人視聴率においても成功を物語っている。

 現在、『イッテQ!』の視聴率を上回っていると話題のバラエティー番組『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)。日本各地の人里離れた一軒家で暮らす人を追うという企画が人気を博しているが、『イッテQ!』と比べるとシニア層の人気が高い。

 例えば、昨年12月16日の『イッテQ!』とポツンとの視聴率を比較してみると、『イッテQ!』は若者~中年層まで幅広く二ケタの視聴率に達しているのに対し、ポツンとではM4(65歳以上の男性)、F4(65歳以上の女性)が15%以上で、若者の視聴率は『イッテQ!』の1/10というでデータがある。(参照 “日8戦争”2019年の行方は? 家族が見る「イッテQ!」VS年配層の「ポツンと一軒家」)

 さらに、今年の『24時間テレビ』が若者にリーチできたという興味深いデータがある。

 関東で2000世帯5000人以上の視聴率を測定しているスイッチ・メディア・ラボのデータで個人視聴率は上昇傾向にあるという。

『24時間テレビ』の視聴率の動向
引用:『24時間テレビ』批判への疑問~背景にあるのは世帯から個人重視の姿勢~(鈴木祐司)

 特にC層(4~12歳の男女)・1層(20~34歳の男女)は直近5年で最高値。T層(13~19歳の男女)が2位。他番組では3層(50代以上の男女)が高い傾向が顕著にでているが、今年の24時間テレビは数字上、若者の個人視聴率が高いことが証明された。(引用『24時間テレビ』批判への疑問~背景にあるのは世帯から個人重視の姿勢~(鈴木祐司))

 ツイッター上では《24時間は何かを知るきっかけにはなるんだよ、私ら若者にとっては嵐やイッテQの番組に関わることによって、番組を見るし、それがきっかけで日本の現状がわかる》、《イッテQメンバーの絆が…内村さん!!!!!あさこさんお疲れ様! 駅伝メンバーの皆さんお疲れ様!!今までの24時間で1番感動した》、《正直、24時間テレビはあまり見ないんだけど イッテQ遠泳部の子達のチャレンジには なんか、とても感動した》などと嵐やイッテQメンバーの頑張りを称える声があった。

 今年の『24時間テレビ』は未来を担う若者にしっかりと評価された番組作りに成功し、ともに新たな時代へ向かう道しるべとなったといえるだろう。

奥村シンゴ(おくむら・しんご)●放送・通信業請負コールセンターを経て、2012年から2018年まで認知症祖母在宅介護を6年経験。現在は精神病院に入院する祖母の緊急対応兼フリーランスライター、コラムニストとして執筆中。介護中心にエンタメ、時事まで幅広いジャンルを得意とし、citrusをはじめデイリースポーツ、季刊誌 認知症ケア(日総研出版)、介護ポストセブン(小学館)、みんなの介護ニュース(クーリエ)、アゴラなどで執筆中。