【小学校受験のお作法2.0】親子力を合わせ、厳しいお受験を乗り越えるためにも、先人たちのリアルな合格体験談はあらかじめしっかりと知っておきたいもの。しかし、幼児教室などで登壇する合格者の経験談は、幼児教室の先生たちのフィルターがかかった内容になりがち。実際にはいろいろな教室に行っていたのに「わが家は本当にこちらの教室のみでした」とコメントされることもあるそう。そこでここでは、お受験コンシェルジュ&戦略プランナーのいとうゆりこさんが、合格者のお母様たちにインタビューを実施。合格するまでの道のり、そして入学後の様子など“生”の声を伝えてくれます。あくまでもひとつの参考とされてみてくださいね。
■学習院初等科に合格した女の子の場合
ご息女が学習院初等科に入学されたお母様にお話を伺いました。
ご家族のスペック
・お父様:関西出身、関西私立大学卒、自営業
・お母様:東京出身、私立女子高校から学習院大学卒、元会社員
・お子様:都内人気お受験幼稚園
――保育園から幼稚園に移られたということで、その経緯を教えていただけますか?
「もともと、長女を保育園に預け、私は会社員を続けていたのですが、その長女が3歳になる直前、長男を出産しました。
それを機に、このまま保育園でいくか、二人目の産休育休を利用して幼稚園に入園させるか悩んだので、保育園のママ友に相談をしたんです。日頃から公園で一緒に遊んだり、保育園の行事でも協力し合ったり、休みの日に一緒に家族旅行にも行ったりと、心を許せるママ友でした。
すると、“共働きのくせに、有名幼稚園とか考えてるの? まさか、小学校受験もするとか言い出さないわよね?”と思いもよらぬ攻撃をされたのです。
そこで気がついたんです。ママ友って所詮、子どもを介して親しくなっただけで、自分の友達ではなかったんだと。
よくよくこれまでを振り返ってみると、“ご主人、社長さんなのにどうして働いているの?”“さすが社長夫人、バザーの寄付も太っ腹ね?”などと、嫌味を言われていたことに思い当たり。そういったことを言ってくる保育園のママ友たちに何か違和感を抱きはじめました。
そんななか、会社の先輩がお子様を私立小学校に入学させたんです。そのご夫婦にお話を伺って相談していくなかで、私たちも私立小を目指すのに有利な有名幼稚園に娘を入れようと決意しました」
――幼稚園に入園されてみていかがでしたか?
「幼稚園では、お母様が働いている方なんてほとんどいませんでした。
我が家は幼稚園の朝の送りは主人との当番制、迎えは私が会社に週に2回ほど早退の申請をし、残りの3日は送迎シッターさんに依頼。幼稚園行事は仕事を休める方が休む、といった感じで長女の幼稚園生活をスタートしました。
しかし、働いていない幼稚園のママさんたちは、朝、幼稚園に送るとそのまま“朝お茶会”、週に1度はランチ会、幼稚園帰りは公園でお遊び会と、とにかく皆様“お暇”なようで。集まれば小学校受験の話、人の悪口大会、マウンティング合戦ばかり。そんなものに何時間も無駄なお金を使って付き合うのが馬鹿馬鹿しくなるほどでした。
そして働くママを何かと見下してくるんです。自分の経験よりも“ご主人の地位”や“財産”でランク付けされているようで、保育園ママとはまた違った価値観で攻めてくるんですよね。
たとえば、ある日、私がとある有名女子校出身だという話をしてしまったら、“その女子校からどうして学習院大学なの? 早慶も狙える高校なんじゃない? お勉強苦手だった?”と言われました。
ただ、そう言ってくるママさんは大学も卒業していないんですよね。ハワイに遊学していたそうです。もちろん働いた経験もないそうです。なかには、再婚した年の離れたご主人が有名な企業の社長さんだという元ホステスのママさんもいましたが、彼女が幼稚園のボスママ的存在でした。
こんなママさんたちのお子様が慶應幼稚舎や聖心、白百合などの「名門小」に進学を希望されているなんて、なんか笑っちゃいましたよ。私は絶対に子どもの小学校受験を成功させて、このママさんたちを見返そうと思いました」
――どのような小学校受験準備をされましたか?
「娘が年長、息子が年少になったとき、思い切って長年勤めた会社のフルタイム勤務を辞め、小学校受験の準備に本腰を入れました。色々な小学校の説明会をまわり、自分なりの分析をし、お教室の先生に進路相談をしたところ、小学校受験は大きく3つに分類されることがわかりました。
まず出身や関係者に有利な学校、そして、ペーパー(筆記試験)や運動、実力重視の学校、最後に家柄重視の学校の3つです。
このなかで、変なママさんたちに悩まされない学校は「家柄重視」の学校に分類されるなと。それが学習院初等科だったのです。
学習院であれば、同大学卒業の我が家にも可能性があるかもしれない! と思い、塾の先生に相談すると、“大学だけ卒業なんてまったく効力はない、フリーで受験するつもりで準備をするように”とアドバイスをいただきました。
そこで、『ジャック幼児教室』と『伸芽会』の大手教室で、それぞれ学習院クラスを掛け持ちし、さらに難関ペーパー校向けの個人の先生、行動観察教室にも通わせることにしました。
授業料だけで1ヵ月30万円以上。自営業の主人は“経費として、まったくおろせない金額”と失笑しながらも協力してくれました」
――学習院の試験は実際に受けられてみていかがでしたか?
「学習院の入試はとても特殊で、第一志望の家庭を最優先に考えてくれている学校だと感じました。というのも、学校説明会や見学会、イベントなど、ほとんどすべての行事が氏名の登録制であり、他校と被る日程も多いんです。そのため、行事に参加している家庭は学習院を第一志望としていることが学校側にも伝わるようになっています。
また、面接は子どもの考査中に両親のみで行われます。子どもが同席していないなか、じっくりと面接されるのです。大人対大人となるわけですから、こちらも本気でないと簡単に見破られます。
合格者数も男女共に40名、補欠20名の合計120名。合否発表当日は、校門付近の掲示板に受験番号が掲示され、その場で合格書類を校庭を進んだところにある事務室にて受け取ります。
そのため事務室への道は、校門付近でそそくさと退陣する方を横目に合格者のみが歩ける“栄光ロード”と呼ばれているんですね。幼稚園で散々私をディスっていた開業医夫人も、この栄光ロードを渡ることなくご夫婦で去って行きました」
――入学されてみていかがでしたか?
「入学後に保護者を見まわしても、同じ幼稚園の方はいませんでしたし、多くの保護者は両親どちらかが初等科もしくは中等科や女子中等科出身、あるいは代々ご出身であったり、一族系企業の方ばかり。
もちろん皇族関係者や旧華族出身など、歴史の教科書で出てくるような名字の方もいます。我が家なんて初等科のなかでは、一般以下の家庭です。
しかし皆様、変わりなく接してくださいます。こういうところが保護者の質といいますか、お家柄といいますか、お育ちなんでしょうね。本当に身分の高い方々は、下々の人間を馬鹿にしたりしないんです。
娘も息子も、錚々(そうそう)たる方々のなかで上手くやっていけるか心配な面はありますが、日本人として美しい人格と教養を身につけさせてくれる素晴らしい学校なので、学習院の生徒として、保護者として、家族4人、多くのことを学ばせていただこうと思っています」
<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design