「失恋を引きずる女々しい男の歌が似合うって、よく言われるんです。シャ乱Qさんの『シングルベット』を歌うと“ピッタリ!”だと。僕自身の楽曲には、こういう曲がなかったので“令和のシングルベッド”に挑戦してみたいと思い、つんく♂さんに作詞をお願いしました」
リリースしたばかりの2ndミニアルバム『THE ONEMEN’S(ジ・ワンマンズ)』のリード曲『ごめんね』を制作するきっかけについて語ってくれた岸洋佑。
高校時代からの大親友
特撮テレビドラマ『宇宙戦隊キュウレンジャー』(テレビ朝日系)のスティンガーとして人気を集めた俳優の顔も持つ彼だが「俳優と言ったことはなく、根幹は音楽の人」と、軸足はシンガー・ソングライター。自他の作詞・作曲・プロデュースと幅広く手がける才能も持ち合わせている。
「『ごめんね』の歌詞を母に見せたら“女々し〜い!”って言われました(笑)。もしかしたら、こういう男が苦手な女性が多いのかなとは思ったんですが、ミュージックビデオ(MV)に吉沢亮が出てくれたおかげで、まったく歌の聴こえ方が変わったんです。彼女のことを忘れられず、ボロボロになった男を演じている、あの亮の画で。これが吉沢さんの力だなと思いましたね(笑)。初めて一緒に撮影をしたんですが、友達としてではなくて、吉沢亮という俳優として純粋に感動しました。スイッチが入ると、やっぱりすごいなと」
実は、高校からの大親友であるふたり。YouTubeの再生回数が200万回を突破し話題になっているこのMVに出演してほしいと、岸が自ら吉沢のマネージャーに話をして実現したのだそう。
「本当にいいタイミングでしたね。これが1年後なら、難しかったかもしれない。だって彼、2021年の大河ドラマ『青天を衝け』の主演に決まりましたから。ニュース速報で知ったときは驚きました。すぐに本人に電話したら“やるんだわ。めっちゃ不安だけど、一生懸命、頑張るわ”って。その言葉を聞いて、大丈夫だと思いました。僕なら“ついにきました! 私の時代が”みたいなことを冗談で言ってしまいそうなんですけど(笑)。彼は絶対にそんな態度をとらないんです。超カッコいい。これは、絶対に書いてくださいね(笑)」
そう力説する岸の歌声を誰よりも愛し、評価しているのは吉沢だ。ある取材で《洋佑は歌が本当にうまくて。今まで生で聴いた歌声の中で一番だと思う。なんか渋くて、エロいんだよね。あれは惚れる》と絶賛していた。
「お互いにリスペクトする部分が違うから、すごくいいんだと思います。彼が僕の音楽に対する面にそう思ってくれているように、僕は、彼の芝居に対するプロセスを横でずっと見てきて、思いが相当なものだと知っていますから」
出会ったころからまったく変わらないからこそ、芸能界で唯一と言っていいほどの関係でいられるのだと思うと語る。岸が音楽の道を極めようと決心したのは、吉沢がいたから。
「高校生のときに初めて同じクラスになって、亮が颯爽(さっそう)と教室に入ってきたんです。その瞬間、ドラマのスローモーションみたいになって。“なにこのきれいな顔、これが芸能界か”と思いました。それまでは、自分のことをカッコいいと思っていたんですけど、芸能界で1位になるのって、こういう人なんだと思いましたね。
すぐに彼のところに行って“君のおかげで本気で音楽で頑張ろうと思った、岸洋佑です”って挨拶してました(笑)。亮も音楽に興味があって、そのまま一緒にカラオケに行って。今でも、ふたりでカラオケで歌いまくりますよ。彼のボイトレはずっと僕がやっているんです。亮って歌がうまいんですよ」
片寄涼太と“同期”
岸が芸能界に足を踏み入れたきっかけは、16歳のときに応募した日本テレビ系のオーディション番組。翌年には三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカルを選ぶ『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 2 〜夢を持った若者達へ〜』に挑戦すると、約3万人の応募者の中からファイナリストの10名に選ばれた。
残念ながらグランプリをつかむことはできなかったが、デビューを目指すボーイズグループのメンバーのひとりに選ばれる。当時、ともに夢を追ったGENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄涼太とは今も連絡をとり合う仲で、先日は同じくメンバーの小森隼人のラジオに出演した。
その後、グループを離れソロ活動をスタートさせるが、ほどなく俳優の道をすすめられる。「いま思えばいい経験だった。すごくしんどい時期でしたが」と当時を振り返る。
昼間は派遣社員として働きながら夜は音楽活動を続け、週末は大学の勉強という生活を1年ほど続けた。人の倍以上、仕事をしたことで年間大賞をもらった。そこで「このままでいいのか」と足を止める。
偶然の巡りあわせから、ふたたび『宇宙戦隊キュウレンジャー』で俳優に挑戦し、挿入歌を作詞・作曲し歌った。これまでにない戦隊キャラと人気となり、役としては2番手ながら主演映画も製作され、こちらでも主題歌、劇中歌も手がけた。これは戦隊モノ史上初のこと。
「本当に愛していただいたなと思います。一緒にキュウレンジャーを演じたメンバーもしょっちゅう家に来ますし、プロデューサーさんは今でもライブに駆けつけてくれて。家族みたいな存在ですね」
昨年12月にメジャーデビュー。大きな花を咲かせる足固めは着実に整っている。
「そんなに甘くないことはわかっています。僕、もう芸能界に10年いますから。吉沢亮がいまの注目を集めるようになるまで、何十作品という、僕とは比べものにならないくらいの数々の現場でいろいろな方と仕事をして、みなさんから愛されてきた。そういう意味で、まだまだ現場が足りていないということはわかっていますから。なので、30歳になったときにひとり立ちできたらいいなと思っています」
明確な夢と目標
後悔だけはしたくないと未来を冷静に見つめる26歳は、どこまでも謙虚。では、30歳で見たい光景がどんなものなのか聞くと、
「武道館に立っていたいです。達成したときに自分がどう思うかが楽しみで。そのまま岸洋佑として音楽をやり続けるのか、裏方も大好きなので、誰かをプロデュースしてライブを作りたいと思っているのか。
いまの目標をわかりやすく言うと滝沢秀明さんです。タッキーも急に裏方を始めたわけではなくて、プレイングマネージャーだった時期がありますよね。母がタッキー&翼のファンで、生まれて初めて行ったライブがタッキーのライブでした。そうそう、高校の同級生にSnow Manの岩本照がいて。照って滝沢演舞場一派だったので、“(前進のユニット)Mis Snow Manの岩本じゃん、母ちゃんが大ファンだよ”って言ったら喜んでくれて。そのあと、何回か公演を見に行きました(笑)」
リリースしたミニアルバムを引っさげたライブを10月に名古屋で、11月に大阪と東京で行う。企画、演出は岸。収録の5曲をそれぞれ擬人化し、THE ONEMEN’S(ジ・ワンマンズ)という5人組のアーティストが魅せるステージになるのだそう。
そして、10月から生ワイド番組『みらいブンカ village 岸洋佑のスタートアップ』(金曜・19時〜21時)が文化放送よりオンエアされる。12月にはホリエモンが提案する掟破りのミュージカル『クリスマスキャロル』への出演も決定。目標のタッキーにまた一歩近づいていく。