舞台『刀剣乱舞』をはじめとする多くの2.5次元舞台に出演し、大人気の和田雅成さん。今やその枠に収まらず、ストレートプレー、テレビドラマ、映画など活躍の幅をぐんぐん広げていて勢いが止まらない!
10月9日からは舞台『ハリトビ』に主演。その新作舞台と芝居にかける熱い思いを語る姿からは、誠実でまっすぐな人柄がうかがえる。今回は、男気があってチャーミングな素顔ものぞけるロングインタビューをお届け!
自分と親父との関係を改めて考えた
「針飛び」とは、レコード針がレコード盤の傷にひっかかって、再生音が途切れること。レコードを聴いたことのなかった和田さんはその言葉を知らなかったそうだが、『ハリトビ』というタイトルを聞いて、すぐに「面白そうな作品だな」と思ったという。
「キャストは僕を含めて5人だけなんですけど、僕がいちばん年下でほかはベテランの方たちとだけでやる舞台は初めてなので、すごくいろいろなものを吸収できそうな現場になると思っています。演劇人としての先輩で、人生の先輩でもある方々との共演で、1回、自分が追い込まれてもいいのかなって思う舞台ですね。『泪橋ディンドンバンド3』という舞台でご一緒した宮下貴浩さんとは、プライベートでもすごく仲よくしていただいているので、心強いです」
本作は、10年以上、別々に暮らしていて音信不通だった父親が他界し、その父が営んでいた古びたロック喫茶『ハリトビ』を処分するために、和田さん演じる息子が店を訪ねてくるところから始まる。そこで、一癖も二癖もある店の従業員や常連客、友人などと接していくうちに、父の知られざる一面を知っていく……という物語。
「親父と疎遠になっているというところで、まず僕と違う。今回演じる秋島光弘という役は、僕とぜんぜん違う人間なんだろうなと思うので、とにかく台本を読んで、彼が抱えているものや、音信不通で別々に暮らしている理由とかをしっかり掘り下げて役を作っていかないとなと。
でも役を生きるうえで、自分の人生と重ね合わせる部分は大きいので、自分と親父との関係を改めて考えたりはします。親父は、今は僕の出る舞台も見に来てくれるんですけど、大阪で芸能活動を始めたばかりのころは、親父と兄貴が大反対していて。母親だけは応援してくれて、支援もしてくれていたんですけどね。20歳のころはリアルに親父とこのまま疎遠になるのかなって一瞬、思うこともありましたし、そのときに抱えていた気持ちを、もっともっと自分の中で今の気持ちにしていって、台本の感情や言葉に乗せていければいいのかなと思います」
原作のある2.5次元舞台とオリジナルのストレートプレーの舞台、どちらにも意欲的に取り組んでいる和田さん。芝居に臨むときの心持ちや役作りに違いはあるのか──。
「役を生きるという意味では変わらないと思います。役作りのうえでは、2.5次元はビジュアルの部分も含めてヒントが多いですよね。ミュージカル『薄桜鬼』だとアニメや新選組の資料があったり、舞台『刀剣乱舞』にしても原作のゲームや実在している刀がありますし。お客様の理想というものも絶対にあると思うので、そこも大事にしたいですし。
でも、『ハリトビ』のようなオリジナル作品の場合は、役の人生やキャラクターをイチから自分で決めて作っていくんですよね。2.5次元とは違う面白さと難しさがあるので、僕はどちらも好きです。ストレートプレーの素敵なところは、やっぱり会話だと思うんです。『ハリトビ』でも、物語の世界で生きて、リアルな人と人との会話を演じたい。僕の中でしっかり実感できるものを、見ていただきたいです」
つらいときも無理しなくなったので、
今、すっごいわがままです(笑)
9月5日の誕生日に28歳を迎えた和田さんは、どんなプライベートを過ごしているのだろう。ここ数年で、心境に変化があったようで……。
「普段の僕は、基本は笑っていたい人間。読書したり静かに過ごす時間も好きだし、バラエティー番組を見て笑う時間も好きだし、友達と一緒にしゃべっている時間も好きだし……。なにかしら自分が楽しいと思えることや好きなことをずっとやり続けていたいって思うんですよね。なんか“それが人生じゃない?”って、思うんです。
もちろんつらいこともありますけど、つらいことすらも僕らは糧にできる職業だから、最近はつらいときも無理しなくなりました。以前は、人前だと明るく振る舞っていたんですけど、もうつらいときはつらいって表に出しています。俳優の職業病かもしれないですけど、つらさを出す人間の役がきたときに、その感情を知らないのは嫌だなっていうのもありますし。最近はそうやって自由に生きていて、なんでも心から楽しんでいます。だから、たぶん今、すっごいわがままです(笑)」
大阪生まれの大阪育ち。ファンからは、たこ焼きが上手で「関西弁の陽気なお兄ちゃん」的な楽しい素顔も愛されている。和田さん自身が“自分を関西人だな”と思うのはどんな瞬間か尋ねると、意外な返答が。
「話の最後に“いや、知らんけどな”ってつけるところです。最近、後輩の役者の子たちに芝居のことを相談されたり、質問されることが多くなったんですが、自分の経験から答えたりするときに使います。
例えば“今は頭で考えすぎずに、等身大の自分でやったほうがいいんじゃない? いや、知らんけどな”って感じですかね。お前の好きにしたらいいんだよっていう意味でもあるし、それが正解か不正解かはわからないけど、もしかしたら、そこに正解があるかもしれないから1回やってみたらっていう提案でもある。“知らんけどな”って、ホントに無責任な意味で使う関西人もいますけど、僕のはそうじゃないですよ(笑)。
あとは、“やっぱり関西人やわ”って言われるのが嫌いっていうのが、逆に関西人らしいところなのかもしれないです。ドラマ『サクセス荘』でも、僕がみんなの話にツッコんだり、いろんな発言を拾っていくと、共演者から“さずが、関西人だね”って言われるんですよ。いや、関西人じゃなくて、俺やから! って(笑)」
今、僕のことをなんでも知っているのは鯛ちゃん
2.5次元舞台で同世代の俳優と共演する機会が多い和田さん。友達は少ないほうだというが、心を許せる大切な友人たちとは有意義な時間を過ごしている。
「椎名鯛造とは、とにかく気が合うんですよね。今年、一緒に東北にも行ったんですけど、一緒に旅行できる数少ない人です。
初共演は2016年の舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺の初演ですが、そのときはあまり話す機会がなくて。でも、お互い気になっていたので、再演で一気に仲よくなりましたね。再演の大阪公演のときに、“お前のこと知りたいから、一緒にご飯に行きたいんだけど、いい?”って誘ってくれて。鈴木拡樹さんと3人でご飯を食べました。仲のいい鯛ちゃんと拡樹さんのご飯に、僕も入れてくれたのがうれしかったですね。そこから、もっと鯛ちゃんのことを知りたいと思いましたし、好きになりました。
『刀ステ』再演の後、共演することが多くなって、プライベートでも2人で遊びに行くようになったんです。鯛ちゃんは子どものように心がまっすぐで嘘がつけない人。今、僕のことをホントになんでも知っているのは鯛ちゃんです。
昔から仲がよくて、今でも会うのは、秋元龍太朗とか、鯨井康介。鯨ちゃんとは今晩もご飯に行きますよ(笑)。龍は“ゴリゴリの演劇”が好きで、話すと違った感性が生まれてくるので面白いです」
殺陣が面白くてしょうがない!
最近の休日は遊ぶよりも、スキルアップが楽しい様子。好きなことにはとことん一途な男なのだ。
「予定が合えば殺陣(たて)を習いに行ってます。『刀剣乱舞』の殺陣師・栗田(政明)さんという方との出会いで、殺陣そのものが大好きになったんです。栗田さんに教えていただいて、殺陣での心の持っていき方みたいなものが変わって、面白くてしょうがないんです。早乙女太一さん・友貴さん兄弟の殺陣の映像を見て勉強したり、自宅で木刀を振ったり槍を回したりもしてます。
息抜きは、バラエティー番組を見ることですね。お笑いが好きなので、『アメトーーク!』『テレビ千鳥』『しゃべくり007』……ほとんどのバラエティー番組は録画してます。でも結局それも、今やらせていただいているニコ生の番組(和田雅成公式チャンネル『りんりんのたこ焼き屋さん』)やバラエティーに出させてもらう機会があるときの、アイデアのストックにするために見ているところもあります。好きなことのためだから、楽しいんです」
10月からドラマ『Re:フォロワー』(ABCテレビ、テレビ朝日)がスタートし、11月には舞台『おそ松さん on STAGE~SIX MEN’S SHOW TIME 3~』(あましんアルカイックホール、舞浜アンフィシアター)の公演と今年も年末までスケジュールはびっしり。順調な俳優人生を歩む和田さんに今後の目標を聞くと、迷うことなく答えてくれた。
「朝ドラが大好きなので、いつか出たいというのはずっと言い続けています。ちょっと偉そうですけど、自分がそこにいるイメージが想像できているといいますか。朝ドラは自分の中ではひとつの目標です!」
■舞台『ハリトビ』
10月9日~10月20日@シアターサンモール
【公式サイト】http://no-4.biz/haritobi
わだ・まさなり◎1991年9月5日、大阪府出身。2012年、俳優デビュー。以降、舞台を中心に活動。舞台『K』、舞台『刀剣乱舞』シリーズ、舞台『弱虫ペダル』シリーズ、舞台『おそ松さん on STAGE~SIX MEN’S SHOW TIME~』シリーズ、ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三篇に主演するなど、人気の2.5次元作品に出演。今年は『サクセス荘』『REAL⇔FAKE』『Re:フォロワー』と連ドラに立て続きに出演。11月~12月は舞台『おそ松さん on STAGE~SIX MEN’S SHOW TIME 3~』に出演する。
(取材・文/井ノ口裕子)