関ジャニ∞の錦戸亮がジャニーズ事務所を退所する9月30日。ツイッター上はファンからのコメントで溢れかえっていた。
「不器用すぎる亮ちゃん、さみしいけど行ってらっしゃい!」
「一生分の恋をありがとう」
「門出の日 これからの未来に幸あれ」
涙のツイートでタイムラインは大洪水。そのムーブメントは《「錦戸亮に感謝の気持ちを伝えたい」みなさん》というかたちでトレンド入りし、一時は世界ランキング入りするにまでの盛り上がりをみせた。感謝と惜別の念が日本中を席巻したわけだ。
しかしである。その翌日の10月1日にネットニュースの記事に衝撃的タイトルが踊った。
《錦戸亮、突如YouTubeアカウントを公開!RYO NISHIKIDO公式ホームページ&SNSもスタート》(『Qetic』)
……いやいやいやいや、切り替え早くない? あまりにジェットコースターな活動ぶりに関ジャニファンの情緒がどうにかなってしまわないか心配だ。“亮ちゃん”との涙のお別れをした翌朝、起きてみたらRYO NISHIKIDOがいきなりデビューしているんだもの。なんて日だ! だろう。
心の準備ができたから……
突如として公式HP、ツイッター・インスタグラム・YouTubeアカウントを開設(動画が公開されたのはなんと日付が変わった瞬間)したかと思えば、1日の午後にはアルバムリリース、全国ツアーの開催、ファンクラブオープンなどの情報も解禁。
あまりに情報がてんこ盛りすぎて消化しきれない。カツカレーにハンバーグ、唐揚げ、カキフライをトッピングしたみたいな“全部乗せ”状態である。
インスタ初投稿の写真では、
《この日の為に色々準備しなきゃなって考えてました。出来る限りの事はしたつもりです。予想外のことも沢山あるでしょうが、楽しく笑って超えていきたいと思います》
との文言とともに、とびっきりの笑顔をみせていた。
さぞファンは動揺しているのだろう……と思いきや、インスタのコメント欄は歓喜のエールで埋め尽くされていた。YouTubeアカウントも登録者数をめきめきと伸ばし、アップした動画は急上昇アクセスランキング1位を獲得。ロケットスタートにもほどがある。なぜファンの怒りを買わずに済んだのか。
そのウラには、かねてから週刊誌等に“脱退を決意”したことを報じられ続けてきた背景がある。
時代にマッチしたスピード感
《激震スクープ 錦戸亮“脱退”で関ジャニ崩壊危機 錦戸退社へ「もうアイツとはやれない」グループ内孤立》(『週刊文春』3月14日号)
《関ジャニ∞・錦戸亮 メンバーに語った「脱退」本当の理由 “最後のドームツアー”前に決意》(『女性セブン』4月4日号)
これらの記事がネットニュース化するたびに、ファンは少しづつ“その日”を迎え入れる諦念にも似た心構えと、耐性がついていったのではないか。そして、実際に9月5日に正式にジャニーズ退所が発表されてからは、“毎日がカウントダウン”だったわけだ。
だからこそ、ジャニーズ最後の日にツイッターで《錦戸亮に感謝を伝えたい》というムーブメントが起こったのかもしれない。日が昇るのさえ待ちきれずに発表されたHP開設も、気持ちを整理するゆとりがあったからこそ、受け入れることができたと考えられはしないだろうか。
それに比べて、同じくソロになった渋谷すばるの引退劇はあまりに唐突だった。
'18年4月に『FRIDAY』に脱退間近とスクープされた2日後、急遽、記者会見を開いての脱退宣言。ほかの週刊誌も当時は大慌てだったのだろう、そろって“後追い記事”の取材にてんやわんやだったし、何よりファンが受けた衝撃は計り知れないものだったはずだ──。
その点、錦戸は“2人目”ということで多少免疫もついているし、いざ退所となっても「やっぱりか……」あたりでダメージを食い止めることができた。退所で世間を騒がせた(バズった)その翌日にSNSを一斉に開設するという“今の時代にマッチしたスピード感”にも舌を巻いてしまう。
かたや、錦戸ソロデビューのウラでもうひとつのソロデビュー劇が幕をあけていた。1月に初となるアルバム発売を自身のラジオ番組で公にしたジャニーズの大先輩・木村拓哉である。
B’zの稲葉浩志、槙原敬之、森山直太朗が楽曲提供するという超ド派手なアルバムなのだが、こと“宣伝力”という点において、SNSをこれでもかと活かし倒した錦戸に差をつけられた感が否めない。
世間の人がどれだけ知っているかわからないが、キムタクは『微博(ウェイボー)』という中国版ツイッターのアカウントを開設し、日本人には馴染みのない中国語を使ってファンにメッセージを発信している。ある週刊誌よれば“中国進出を視野に入れて”のことだそう。
そんな彼がソロデビュー発表の2日前に投稿していたのが、『泉ピン子から差し入れられたメンチカツバーガー』の写真と、《謝謝!》という感謝の言葉──。
現地における泉ピン子の認知度はいかほどのものなのか。
そして何より、一体キムタクは中国のファンに対して何を発信しようとしているんだ。
〈皿乃まる美・コラムニスト〉