ふるさと納税の返礼品として、納税者には活動レポート、1万円以上の寄付者には動物愛護バッジなどが送られる

 ペットを飼う家庭が増える一方、動物愛護センターに保護され、収容しきれずに殺処分されてしまう動物たちを見て心を痛めているペット愛好家も多い。

 そんな悲劇を繰り返さないために『ふるさと納税』の寄付金を活用する地方自治体も登場している。

年間6000頭以上が殺処分されていた時代も

 平成28年、『犬殺処分ゼロサポート寄付金』を通じて集めた寄付金で『犬の殺処分ゼロ』を達成した愛知県名古屋市の取り組みを、健康福祉局食品衛生課獣医務係の担当者に聞いた。

30年以上前、名古屋市動物愛護センターができたころは、犬の殺処分頭数は年間6000頭以上。ところが避妊・去勢手術の普及に伴い子犬の収容が減少。さらに平成22年度に『譲渡ボランティア制度』ができたことで、ボランティアのもとでケアを受けた犬を一般の飼い主に譲渡する数も増え、殺処分はさらに少なくなりました。

 ところが今度は譲渡ボランティアの負担が大きすぎることが問題に。それを解決するために『ふるさと納税』の活用に踏み切りました」

 この寄付金により、譲渡ボランティアが自己負担してきたエサ代などを支援、さらに動物愛護センターも長期にわたり訓練や治療を行うことができるようになった。

 平成29年度からは犬に加えて猫にも寄付金が使えるようになり『猫の殺処分ゼロ』に取り組むこととなった。しかし寄付金も増え、猫の殺処分が年々減っていた矢先、大きな問題にぶつかる。

「市営住宅で猫の多頭飼育崩壊が起き、40匹以上の猫を動物愛護センターで引き取り収容しました。しかもこうしたケースが重なり、残念ながら昨年度、殺処分が増えてしまいました」

犬猫の譲渡会も行われている名古屋市動物愛護センター。殺処分を行う設備の撤去もこれから進められるという

 こうした多頭飼育崩壊を防ぐため、名古屋市は多頭飼育の『届出制度』の導入を現在、検討している。一方、寄付金を活用して、譲渡会が頻繁に行われるようになった。

「今年の8月には、『殺処分ゼロ』を目指して全長11メートルのトレーラーハウスを使って8日間、市内各地で猫の譲渡会を開催。これは名古屋初の試みです」

 これにより75匹の猫の譲渡先が決まったという。

 さらに飼い主のいない地域猫のふん尿問題の解決や、新たに子猫が増えないよう不妊手術を施すなどのボランティア活動を支援する『なごやかキャット推進事業』を積極的に進めている。

「譲渡会と地域猫の取り組みの両輪で『殺処分ゼロ』を目指していきたいですね」

猫の譲渡会に密着!

 譲渡会が頻繁に行われている名古屋市。猫に関しては(今年)譲渡会が12回行われ来場者は約2500名。そのうち、譲渡希望の申し出があった猫はなんと167匹にも及んだ。

 そこで週刊女性取材班は、実際に動物愛護センターで行われた8つのボランティア団体が参加する譲渡会に潜入。名古屋市の譲渡会事情に迫った。

「もし気に入った猫がいたらまず『里親お申し込みアンケート』に記入。1週間から10日のトライアル期間を経て里親になっていただくという流れです」(譲渡ボランティア)

 しかし、いざ里親を希望する家を訪問してみると、家族構成がアンケートと違ったり、家がゴミ屋敷でとても猫を預けられる状態ではなく、あえなく帰ってきたケースもあるという。

トライアルを決めて2匹の子猫と記念撮影。後日、ボランティアのスタッフによって自宅へ猫たちが送り届けられる

「人気はやはり子猫。人間がミルクをあげて育てた子はとても人懐っこい。子猫どうしで遊んでくれるので2匹同時に飼うこともおすすめです」(譲渡ボランティア)

 会場を見回すと、熱心にケージをのぞき込み、猫じゃらしで戯れる愛猫家たちの姿が……。

 留学から帰ってきたばかりでひとり暮らしの20代女性は、猫が大好きでペットとの暮らしを夢見て、さっそくトライアルに挑戦。決め手は?

「おとなしく飼いやすそうなところ。仕事で家を空けることが多いので」

 次にトライアルに挑むのは、前飼っていた猫を2年前に看取った4人家族。

「もう“猫切れ”で、寂しくて寂しくて」

 と話すお母さんのひざの上では、すでに子猫がのどを鳴らし手をなめている。もうこれは、たまらニャい!?