「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
滝川クリステル

第32回 滝川クリステル

 元内閣総理大臣・小泉純一郎のジュニアにして、環境大臣・小泉進次郎と結婚したフリーアナウンサー・滝川クリステル(以下、滝クリ)。「お・も・て・な・し」スピーチで2020年の東京オリンピックを招致した勝利の女神と、総理にもっとも近いオトコとも言われる進次郎。お似合いのゴールデンカップルに見えますが、批判が噴出しています。

 環境大臣として外交デビューした進次郎。ニューヨークで開かれた「国連気候行動サミット」で、「気候変動への取り組みは楽しく、クールでセクシーに」と発言。ネットを中心に「セクシーという言葉は不適切ではないか」という声があがります。『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)に出演したアメリカ人のお笑い芸人・厚切りジェイソンによると、「セクシーは魅力的という意味を指すので的はずれではない」そうですが、「セクシー発言」の真意を尋ねられた進次郎は「野暮な説明はいらない」と説明を拒否。大臣としての責任を果たしていないのではないかと批判を浴びました。

 一方、妻の滝クリに対する風当たりも強くなっています。

《滝川クリステルが不義理連発、結婚祝いLINEも既読スルー》と『女性セブン』(小学館)2019年10月17日号が報じています。

 同誌によると、滝クリはプライベートで親しいとされるタレント、アンミカやフリーアナウンサー・有働由美子にも交際について明かしていなかったそうです。かつて番組で共演していた宮根誠司や安藤優子にも結婚の報告はなかったそうで、宮根は「クリステル、連絡してこいよ」、安藤は「さっき、LINEしたばかりなのに。教えてくれてもいいじゃない」と不服そう。さらに、秘密主義は仕事関係だけでないようです。高校時代の友人が「結婚おめでとう」とLINEを送ったものの既読スルーされてしまったそうです。知人はスルーされたことについて、「特別な人になったのかと言いたい気持ちがあります」と述べていました。

 さて、みなさんはどう思われるでしょうか。

「こまやかな気遣いが必要とされる政治家の妻が、それで務まると思っているのか」
「仕事関係の人に報告しないなんて、社会人としていかがなものか」
「未来の総理と言われるオトコと結婚したから、テングになっているのではないか」

 など、滝クリをヤバい女だと思う人もいるのではないでしょうか。

滝クリが結婚を誰にも言わなかったことは大正解

 しかし、私が思うに、誰にも言わなかったことは大正解だと思うのです。

 宮根・安藤の「連絡してこいよ」「教えてくれてもいいじゃない」発言には、「ひと言欲しかった」気持ちが表れています。この「ひと言欲しかったオジサン、オバサン」というのは厄介で、それほど関係性が深くないのに、けっこうしつこく、後々まで「報告がなかった」と言うこともあります。

 滝クリが局アナであるのなら、仕事上の人間関係はある程度決まっているでしょう。しかし、彼女のようにフリーで活動していると、人脈は財産。交友範囲が広いほうがよいでしょう。多くの知己の中から、誰が「ひと言欲しかったオジサン、オバサン」か確定できない状態で一部の人にだけ漏らすと、「あれ? 私は報告を受けていない」という新たな「ひと言欲しかったオジサン、オバサン」が生まれてしまいます。

 また、SNSの時代、安易にLINEを送ってしまうと、それが流出してしまう可能性だってないとは言えない。親しい人に報告しないのはよろしくないとは思いますが、例外のない規則はありません。誰にも言わない、つまり平等な不義理は、ぎりぎりセーフではないでしょうか。

メーガン妃も「非情なオンナ」と言われた

 独身時代の人間関係を切る非情なオンナと言われた有名人は、外国にもいます。イギリス王室に嫁ぎ、現在はサセックス侯爵夫人となったアメリカ人の元女優、メーガン・マークルです。メーガンはヘンリー王子より年上でバツイチ、外国人であることから、王室にふさわしくないと見る人もいたようですが、結婚にこぎつけました。そのメーガンが、王子と交際を始めたときに、友達との交際を一方的に断ったとイギリスの大衆紙『デイリースター』が報じたことがあります。多くの友人は「それだけ、王子との交際を大事に思っているのだろう」と理解を示しましたが「計算高い」と怒る人もいたようです。

 それでは、縁を切らなければいいのかと言えば、そうでもないようです。メーガンの母親は再婚していて、彼女には異母兄弟がいます。異母姉は『The Diary of Princess Pushy’s Sister』(厚かましいプリンセスを妹に持つ姉の日記)という暴露本を執筆していたと言われるなど、メーガンの足を引っ張ることに余念がありません。異母姉はことあるごとに、メーガンを「野心家」と、ののしっています。

受け取る側の嫉妬心が試されている

 結局、マナーにかなった行動をしていようといまいと、文句を言う人は言うのです。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざがありますが、滝クリの場合も同じではないでしょうか。他人の幸せは、自分にとってもうれしいこととは限りません。「連絡がないから、怒っている」のではなく、「滝クリが進次郎のような大物政治家と結婚したことがなんとなく面白くないと思っているころに、連絡が来なかった。不義理という証拠があれば、大手を振って文句が言える」と話をすりかえていることに気づいていないのではないでしょうか。

 なぜこのような行動をとるかと言えば、嫉妬心があるから。プリンセスとなったメーガン、ファーストレディーになるかもしれない滝クリは、言うまでもなく、嫉妬される要素を持っています。私に言わせると、自分が嫉妬をしていることに気づいていないことほど、ヤバいものはありません。

 嫉妬される側が行動に気をつけるべき、と思う人もいるかもしれませんが、他人の心をコントロールすることはできません。自分は嫉妬されるという自覚がある人は嫉妬税だと割り切って、常識の範囲を超えた嫉妬を向けてくる人とはかかわらず、距離をおくのがいちばんではないでしょうか。

 代々政治家の家に嫁ぎ、夫もなんだかちょっと変わっていて、女子アナ時代とは違った好奇の視線にさらされ、初産を控えている。滝クリが心身ともにかなりハードな日々を送っていることは、想像に難くないでしょう。そういう滝クリの沈黙を「テングだ」と取るか、それとも「今はそっとしておいてあげよう」と思うのか。試されているのは、受け取る側の嫉妬心なのかもしれません。


仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。