【小学校受験のお作法2.0】親子力を合わせ、厳しいお受験を乗り越えるためにも、先人たちのリアルな合格体験談はあらかじめしっかりと知っておきたいもの。しかし、幼児教室などで登壇する合格者の経験談は、幼児教室の先生たちのフィルターがかかった内容になりがち。実際にはいろいろな教室に行っていたのに「我が家は本当にこちらの教室のみでした」とコメントされることもあるそう。そこでここでは、お受験コンシェルジュ&戦略プランナーのいとうゆりこさんが、合格者のお母様たちにインタビューを実施。合格するまでの道のり、そして入学後の様子など“生”の声を伝えてくれます。あくまでもひとつの参考とされてみてくださいね。
■早稲田実業学校初等部に合格した女の子の場合
“絶対に女子校の聖心白百合雙葉!”と最初は思っていたものの、次第に共学校に惹かれ、最終的に早稲田実業学校初等部に見事ご縁をいただけたという女の子のお父様にお話を伺いました。
ご家族のスペック
・お父様:地方出身、国立大学卒、マスコミ勤務
・お母様:地方出身、地方短大卒、専業主婦
・お子様:地元の一般的な幼稚園
――お受験をしようと思われたきっかけは何ですか?
「もともと地方出身だった私たちは、娘を私立の小学校に入れるなんて考えもしないで子育てをしていました。住んでいる地域にも私立の小学校に通わせている家庭はほとんどなく、幼稚園も自宅から通いやすい幼稚園バスがある地元の園を選んでいました。
しかし、娘が幼稚園の年中になる少し前、同僚たちと子育ての話をしているとき、いわゆる“お受験”の話に展開していき、驚いたことに、小学生の子どもがいる同僚は全員、私立の小学校に通わせていたんです。当たり前のように受験をするというのです。
あからさまに突っ込んで聞くのも恥ずかしいので、その場では聞き流し、通っているという教室の名前だけはしっかり覚え……翌日はその名前をもとに、終日パソコンでいろいろと検索をしました。
ためしに妻に“娘を受験させないか?”と聞いてみると、東京の女子校に憧れていたとのことで。小学校受験ガイドブックを購入し、夫婦で付箋をつけながら、何校かピックアップしていきました。その頃は、何も知らなかったんです。そのなかには、いわゆるコネがないと合格できない学校があるのだということを……」
――ピックアップした学校を目指して、お教室にも通われましたか?
「はい、同僚が話していた『伸芽会』や『ジャック幼児教育研究所』の資料を取り寄せましたが、どの教室も自宅から通いにくい場所にあり……。かろうじて週末に家族で出かけるついでに通えるであろう『伸芽会』を選びました。
しかし入ったものの、みなさんもっと小さい頃から通われているようで、送迎の際にも保護者の輪に入ることができず、隅っこで妻と授業が終わるのを待っているという感じで半年ほど過ごしていました。
そんななか、同僚に話を聞くと、教室のほかにも体操教室や絵画教室、さらには縄跳び特訓、自然体験教室など、数えきれないほどの習いごとをさせていることが判明。素人の私には何もわからなかったので、思いきって教室長に面談を申し込んで聞いてみました。
すると、“いろいろなお稽古をされている方はいます”とおっしゃるだけで、はっきりと答えてもらえず……。そこで受験、体操、お稽古などの検索ワードを使って調べ、ネット掲示板などで評判もチェックし、有名そうなお稽古をいくつかピックアップし、そのリストとともに再度、教室長に相談しました。
しかしそれでも、“やりすぎることは良くない”“目的を持ってお稽古はしてください”と、また答えをにごされてしまい。イライラしていたときに、お受験情報の掲示板で気になる個人の教室を見つけたので、体験に行ってみました」
――体験されてみていかがでしたか?
「住宅街にあるその教室は、先生2名のみの小さな教室でした。しかし、生徒数は30人強。このエリアでは有名な教室だったようです。ご挨拶のあと志望校を伝えると、最初に聞かれたのが“お母様は出身ですか?”ということ。
もちろん、違うという旨を伝え、志望動機を聞かれたので、“東京で有名な女子校に入れたい”と答えたところ、お説教がはじまりました。
どうやら、志望している女子校は、お母様が出身であることが大前提で、さらに代々卒業生というご家庭が大半だとか。みなさん、お腹のなかにいる頃から受験準備をしていると。そこで、“お受験とは?”という根本的なところから、気がつけば1時間以上、詳しくお話を伺いました。結果的に、こちらのお教室でお世話になることになりました」
――そのお教室のほかにもお稽古などはされましたか?
「娘と様々なお稽古を見学し、娘の希望でピアノとテニスをはじめました。テニスなら家族でもできますし、ピアノは大きなグランドピアノに大興奮し、喜んで通っていました。そのほか、お教室からデイキャンプの自然体験教室などがあることも教えていただきました。本当にこの教室には感謝以外の言葉はなかったです。
新年長と呼ばれる11月からは本格的な受験クラスがスタートし、『伸芽会』は引き続き週1回、その個人の先生は週に3回、ピアノ、テニスは週1回と、気がつけば日曜日以外はすべてお稽古になっていました。日曜日でさえデイキャンプに行く日もあったりと、忙しく駆け抜けた感じでしたね。
送迎する妻はぐったりしていましたが、意外にも本人が楽しく通っていたんです。ペーパーと呼ばれる勉強も嫌がらず、私がネットで買った、『理英会』や『こぐま会』のテキストも自らしていましたし、授業も積極的に参加していました。『伸芽会』の先生からは、ピアノやテニスが良い息抜きになっているのでしょうと言われました」
――同じくその個人のお教室で、志望校についてはどのようなアドバイスを受けましたか?
「どうしても女子校を希望するのであれば、実力重視で合格の可能性がある聖心と白百合、日本女子大豊明、立教女学院、東京女学館を。
共学の場合も、慶應幼稚舎や青学、学習院、成城といった、卒業生や関係者以外の“フリー”と呼ばれる枠内での合格はなかなか難しいという学校は回避し、実力重視の早稲田実業、成蹊などをすすめてもらいました。
そのアドバイスを受け、それぞれの学校案内やホームページなどを見て、初めて学校説明会に参加したのが年中の9月だったのですが、実際に女子校の説明会に参加してみると、学校が高級住宅街や独特の雰囲気のある地域にあったりしたため、夫婦で萎縮してしまい……。
また、女性の校長先生が校風や教育方針について品良く話されるので聞き入ってしまいましたし、どの学校も大変素晴らしかったのですが、周りの雰囲気に飲まれたのか、夫婦ともにぐったりしてしまいました。
その後、年長になったGW明け頃からは、子どもも参加できる学校説明会や行事にも参加するようになりました。すると、当たり前ですが、女子校は女子しかいないんですよね。
しかし、その女子のパワーがすごかったんです。生徒による演奏や合唱のある学校もあり、同じ制服を着て並んで演奏したり歌っている姿を拝見していると、見ている我々も襟を正さないと……と、緊張が走りました。
一方、共学の早稲田実業の説明会は、大学の講堂で行われたのですが、私が高校生のときに地方から電車を乗り継ぎ、キャンパス見学をしたことがありました。何か懐かしい感じと、説明会の内容も自然に心に入ってくるというか……とても居心地が良かったんです。共学の方が堅苦しくなくて合っているのかなと思い、大本命としました」
――模擬試験などは順調でしたか?
「ひと通り説明会が終わった7月頃になると、5月辺りから受け出していた模擬試験の結果が届きました。驚いたことに、総合的な模擬試験だと平均値を取れているのですが、女子校の模擬試験は下から数えて一桁に入っているんです。
ペーパーの点数は悪くはないのに何でだろうと先生に質問したところ、どうやら行動観察でマイナスになっていると。というのも、女子校志望の子たちは精神年齢も高く、ちょっとズル賢いところがあるようで。たとえば、みんなで決めごとをするときも、“○○はどう?”“賛成の人は手をあげて!”など、積極的にその場を仕切る子が多いそうです。
また、自分が反対だった場合も“みんながそれが良いならそうしよう!”と満面の笑みで同調することもあるそうで。先生がおっしゃるには、娘は輪に入るタイミングを失ってしまい、ただ参加しているだけの状況になっていたとのことでした。
かといって自己主張をすれば良いのかといえば、そういうことでもないらしく。話を聞けば聞くほど、“行動観察”という考査内容の難しさを痛感しました」
――それをどのように克服されましたか?
「『日本総合教育舎』のデイキャンプに参加したときのことですが、ちょっとしたハプニングがあったそうなんです。お弁当を食べていたとき、持ってきたお弁当を全部ひっくり返してしまった子がいたらしいのですが、娘は自分のお弁当の蓋におかずを少し入れ、さらにみんなから寄付を集めて、そのお友達にあげようとしたんだそうです。
アレルギーなどがあってはいけないので、同隊していたスタッフが予備のお弁当を渡したらしいのですが、その様子を見ていたスタッフの方が、“一年近く様子を拝見していますが、周りを良く見れるようになってきましたね”と声をかけてくださいました。
こうしたデイキャンプでの経験を積み重ねることで、集団行動に慣れ、協調性も身につき、周りを良く見ることができるようになっていったのかなと思います」
――お受験本番の様子をお聞かせください。
「『伸芽会』からは、“挑戦しなければはじまりませんよ”と教えられていたので、片っ端から受験できるところは受ける覚悟で願書を集めていました。しかし先生には、合格圏にありそうな女子校を二校と、第一志望の女子校一校のみ出願し、そのほかは大本命の早実や成蹊の試験日程にかぶらない学校のみ受けていきましょうとアドバイスをいただきました。
実際に受けたのは、白百合、日本女子大豊明(白百合の試験終了後、距離的に成蹊の時間が間に合わず棄権し豊明へ)、学習院、東京女学館、そして早実でした」
――結果はいかがでしたか?
「結果は、白百合と学習院は不合格。白百合ではなく、成蹊を受けに行けば良かったと後悔しました。そして大本命の早実は、一次試験を通過し面接に進むことはできましたが、残念ながら合格をいただくことはできませんでした。
日本女子大豊明と東京女学館は合格をいただいておりましたので、“もともと女子校志望だったじゃないか! その女子校には行けるんだ!”と、家族でお祝いをし、両親にも報告してほっとしていたんですね。
しかし、11月末に早実からご連絡をいただき、なんと追加合格になったんです!! 補欠合格というものがあることは噂では聞いていましたが、早実は補欠のない学校だと思っていたので、本当にこんなことが起こるなんて……と、ビックリしました」
――そこでやはり大本命だった早実を選ばれたのですね。
「ただ娘本人は、合格をいただいた女子校のセーラー服にかなりテンションが上がっておりましたので、どう説明しようか悩み、個人の先生に相談しました。
すると、お子様を連れて教室にきてくださいと言われたんです。訪れてみると、早実在校のお姉さんがブレザー服を着て、先生と一緒に待っていました。
まず、お教室に入ると娘は奥のお部屋に案内され、お姉さんと遊んでもらいました。一緒にお菓子を食べたり、ブロックで遊んだりしたそうです。その間、進学を決めた学校へのご辞退の方法、納めた入学金などの返金される金額は僅かであること、早実へ進学する場合の寄付金の話など、丁寧に説明してもらいました。
30分くらいしたら、先生が二人を呼び、お姉さんは先生の隣に、娘は妻の隣に座るように促されました。そしてお姉さんが娘に手紙をくれたんです。その場で“開封してみたら?”と先生に言われ、開いてみると、かわいいカードに“早実はとても楽しい学校です。○○ちゃんにも来て欲しいな”と書いてありました。娘はその場で笑顔で頷きました」
――実際に通われてみていかがですか?
「体育会系でバンカラなイメージのある早稲田ですが、最近では有名人パパママも増えて、華やかなイメージになりましたよね。
イメージ通り、スポーツに力を入れてくれるので、娘は初等部に入るとテニス以外にゴルフもはじめました。校則も学内の勉強も厳しいのですが、それ以外の時間はのびのびと過ごし、好きなことをしているようです。
受験勉強に疲弊することなく、大学まで進める点が大学付属小学校の良いところだと思っています。
お受験って最後まで何が起こるかわかりません。家族全員が謙虚な気持ちで真摯に向き合い努力すれば、必ず結果は出ると思います」
<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design