《大阪も楽しかったし血液クレンジングで元気でござる》(市川海老蔵のブログより)
《血液クレンジングもあるというので、疲れていたのでやってみた この容器に血が吸い上げられ、オゾンを混ぜて身体に戻す、のです。僕にはとても効いたようで。。。》(高橋克典のブログより)
《血液クレンジングとニンニク注射したからバッチリね!》(ISSAのツイッターより)
『血液クレンジング』という健康法が、突如としてネットをにぎわせている。前出に加え、仲里依紗や高橋みなみ、田中律子などもSNSでこの療法を拡散している。過去には'12年に亡くなった森光子さんも愛好者だったという。
血液クレンジングとはいったい何なのか。こちらを商標登録しているという、東京都中央区にある『医療法人財団健康院』のホームページを見ると、
《医療用オゾンを血液に混ぜて反応させる点滴です。抗酸化力の向上・血液の流れの改善・免疫力のアップなどの効果が期待でき、身体がもつ本来の力を高めます》
具体的には、
《100~150ccの血液を採血》
《医療用オゾンを混ぜて酸素を含んだ血液を、点滴で体内に戻します》
という施術。料金は初回特別価格で1万1000円。次回からは1回につき2万5000円ほど。月に1〜2回の施術をすすめている。その他のクリニックも同程度の料金で、このくらいが相場のようだ。
投稿を削除する芸能人も
ネット上で話題となった理由は、“血を取り出して、キレイにしてから、元に戻すという施術内容が危険ではないか”という意見が上がったからだ。
「血液クレンジングを拡散していたタレントも多かったため、否定意見も多く飛び交い、炎上状態になりました。ISSAさんや田中律子さんは、施術を受けたことをアップしていた投稿内容を削除していましたね」(スポーツ紙記者)
医学的な見地から、血液クレンジングはどのようなものなのか。
「欧米では150年以上前から知られている方法ですね」
そう話すのは、新潟大学名誉教授で、医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦先生。
「いま日本で話題になっている血液クレンジングは、英語では“オゾンセラピー”と呼ばれています。欧米ではかなり昔から、例えば関節の中に菌が入った人に直接オゾンを注射して入れたり、虫歯の治療に使うといった施術がありました。
患部に直接入れる方法と点滴で入れる方法、そしてもうひとつが血液を取り出してオゾンを濃縮したものを入れて、また戻す方法。この3種類が昔からありますね」
岡田先生によると、血液クレンジング(オゾンセラピー)に関する研究論文は数多くあるという。たくさん研究されているということは、安全?
「論文というのは、しっかりと比較研究がなされたものでなければ信用されません。対象者を均等に2つに分け、一方には何もしない。一方には、血液クレンジングをする。それで短期的に効果があったか、長期的に見て副作用はなかったかを調べるといった、公平に分析したうえで論文を発表するのがまっとうなやり方です。ところが、オゾンセラピーに関して、そういったしっかりとした調査をもとに書かれた論文は1つもない」(岡田先生、以下同)
「細胞を殺す」恐れが
研究とともに、欧米でも日本同様、血液クレンジングの施術は現在でもあるが、
「医療行為において、権威ある組織のトップは、FDAというアメリカ食品医薬品局です。日本でいうと厚生労働省で、ここが認めた治療法は、だいたい世界中が安心して使えます。FDAはオゾンセラピーを認可していません。しっかりした形での比較研究をやらないとデータの信憑性はありませんから、役所は認可しません。日本の厚労省も同様で、保険がききません」
きちんとした比較研究がないにしても、効果の“アリ・ナシ”でいうとどうなのか。
「よいものでも悪いものでも、比較試験がないので、科学的には判断できない、とは言えます。しかし、血液を取り出して、オゾンを加えて元に戻す方法は、極めて危険だと思います。
酸素原子が3つついた『O3』がオゾンになります。私自身も過酸化物質を研究してきましたが、やはりリスクがある。オゾンというのは、ひと言でいうと“殺菌剤”。酸素というのは空気中に20%程度ありますが、ちょうどそれくらいが限度であって、それ以上増えると人間の細胞は傷んでしまいます。酸素は多すぎると人体には有害であり、それを逆手にとって菌を殺すために使われています。さらにオゾンは、そのものが人体にとっては有害なんですね。その理由は細胞を殺してしまうからです」
人間の血液には、白血球という外部や体内の菌や炎症から身体を守る細胞がある。
「白血球は、活性酸素を作って菌などを攻撃します。オゾンも同じで活性化された酸素で菌を殺しているんですね。その意味でオゾンは絶対悪ではない。だから効果が表れる場合もあるようですが、それをどの程度使えばいいのかという量は、ものすごく微妙なもの。薬も過ぎれば毒になりますが、その調整はほぼ不可能で、白血球にしかできない。毒としてしか働いていないのではないかと思います」
現段階では危険
今後の可能性は?
今後、有用な療法になる可能性はあるのだろうか。
「先のことは誰にも言えませんが、理論的にはありえない。殺菌作用があるので、ある一面を見れば効果があるかもしれない。しかし、オゾンが有害である以上、ほかの面への悪影響から逃れられない。
現在では、さまざまな治療に抗生物質が使われています。健康な細胞は傷めずに、悪い菌のみ殺すことができるようになっているわけです。長い年月をかけて研究されてきた抗生物質ですら副作用があります。それでも、効果のほうが大きいから使われているのです。リスクが大きいにもかかわらず、過去の方法を無理して使おうとすることは、理解できませんね」
血液クレンジングを商標登録している前出の健康院に取材を依頼すると、
「当院は、貴社の取材をお受けする公的な立場にはないので、申し訳ありませんが血液クレンジング(オゾン療法)のご質問につきましては、所属学会である日本酸化療法医学会にお問い合わせいただけますでしょうか」
と返答があった。そこで日本酸化療法医学会、および同医学会会長が所属する『東海渡井クリニック』に取材を申し込んだが、コメントを提出する旨は伝えられたが、期日までに送られてこなかった。
かの徳川家康は水銀を薬として飲んでいたという。研究が進めば、信頼に足る治療になるのか、それとも─。