'17年にインスタグラムのアカウントを開設してからというもの、数々の炎上騒ぎを起こして(起こされて?)きた工藤静香。'19年11月の時点で約43万人のフォロワーを獲得しているが、そのコメント欄は焼け野原状態であった。
これまでも、30%値引きシールが貼られたトマトが買い物袋から覗いている投稿を発見されるや「この写り込み方は狙ってるでしょ 庶民派アピール」と叩かれ、水着姿の全身ショットをアップすれば「何がなんでも脚を長く見せようとしているのが……」と、下からのカメラアングルを突(つつ)かれてきた。
そして、もはや名物カテゴリーの域に達していたのが『手作り料理をアップするたびに炎上』である。
独創性あふれる“皮付き肉じゃが”や、“買ったシュウマイの皮が行方不明なのでレタスで巻いてみました”といった料理の数々に、アンチからは見た目・調理法・盛り付けにいたるまで、あらゆる角度から非難のコメントが相次いだ。なかには「工藤さんの料理を見るたび、キムタクは幸せなのだろうか? って疑問に思う」という、哀愁すら漂う書き込みも。
ついにインスタ炎上に嫌気か
なぜこうも叩かれるのか。今となってはその理由すら曖昧になっているが、SMAP解散以降、急激にアンチが増え、気づけば'18年に『週刊文春』が実施した「女が嫌いな女」ランキングでワースト1位に選ばれる(前年の4位からランクアップ)ほどになっていた。
止まぬインスタ炎上に嫌気が差したのか、今年の6月から料理投稿を控えるようになった静香。10月末になってようやく《お料理の投稿を!! と、コメントをよく見かけます。お料理投稿はまた来年から始めますね!!》と応えたのだが、やはり傷は深いのか、復活はざっくりと“来年”とするのみである。(そもそもその要望がアンチが仕掛けた罠である可能性も捨てきれないが……)
来年まで料理イジりに“おあずけ”状態を食らわされている叩き屋たちは、今、いったいどんな投稿にアンチコメントを寄せているのだろうか。ついつい気になってインスタを覗いてみたのだが、そこに広がっていたのは静香のための“ユートピア”だった──。
たとえば10月23日、仕事で一緒になった明石家さんまとのツーショットをアップした投稿。
《しーちゃん! 素敵な衣装ですね》《静香さん綺麗すぎます!》《細くて羨ましい〜》
これでもかというほどハートやキラキラマークの絵文字で彩られた熱狂コメントでビッシリなのだ。アンチコメントはほとんどみられず、賛辞で埋め尽くされている。
そして注目すべきは、『この投稿へのコメントは制限されています』という表示とともに、コメント入力ができない仕様になっていること。これは一体なんなのか。アカウントを探っていくと、静香が“ある対策”を講じていたことがわかった。
それはズバリ、『コメント制限機能』の導入である。'17年からアプリに搭載されている機能で、“自分の投稿にコメントできるユーザーに対し、4パターンの制限をかけられる”というもの。コメント許可の対象を「誰でも」「フォロー中の人とフォロワー」「フォロー中の人」「フォロワー」のうちから選ぶことができる。アカウントをみた限りだと、彼女が選択しているのは4つ目。
つまり、書き込むためには『工藤静香のフォロワーにならなくてはいけない』わけだ。アンチが猛毒コメントを吐き出すためには、彼女の人気(フォロワー数)の下支えをしなければならないという矛盾が成立してしまうのである。だからといって、わざわざフォローしてコメントだけ書き残してまたフォロー解除、というのもずいぶんと手間がかかる。
ここで気になるのは、かねてから「静香がプロデュースに大きく関わっている」と報じられている次女・Koki,のインスタだ。炎上請負人・工藤静香の親心なのか、あるいは『ブルガリ』『シャネル』のアンバサダーとして活動しているからなのか、Koki,のアカウントは完全にコメントができない設定になっている。
それにも関わらず自分は、“フォロワーのみコメント可”なわけだ。そこにあるのは、アンチの声は聞きたくないが、応援してくれるファンからの「しーちゃん素敵!」は欲しいという承認欲求の強さなのかもしれない。
せき止められた悪意の行方
そんなこんなで、アンチにとって『工藤静香のインスタグラム』という悪口のプラットフォームはなかなか使いにくいものになった。「静香を叩きたい」という情念はいったいどこへ向かうのだろうか──。
《工藤静香、風邪に「マスク着用」徹底を呼びかけ「マナーを守りましょう!」…過去にはマスク無しの咳に苦言も》(スポーツ報知)
そう、彼女の投稿はいまだにネットニュースに取り上げられがちなのだ。10月30日に公開されたこの記事のコメント欄はやはりというべきか、ダークな活気であふれていた。
「風邪をひいたり、予防の為にマスクをするのは当たり前だし、工藤静香がいちいち言わなくててもやっている」
「人に言う前に、自分でマスクして感染予防すればいいじゃん! てか、服装ダサ過ぎなんですけど。上着とかピンクのスニーカーとか本気であり得ない」
と、一時はアクセスランキングの上位にのぼるほど、アンチコメ・ビックウェーブが起こっていた。インスタからネットニュースへのネットサーフィンである。
ただ、コメントの内容が少し強引すぎやしないだろうか。別にピンクのスニーカーを履いたっていいだろうよ。『インスタコメント制限』による不満感も手伝ってか、もはやアンチの行いは粗探しというか“粗作り”という進化系にまで到達したのかもしれない。
アンチを抑圧することで静香の聖域は守られつつある。しかし、そのことが「もはや叩けりゃなんだっていい」という精神を助長させてはいないか。
〈皿乃まる美・コラムニスト〉