「阿部(サダヲ)さんのお芝居をいちばん間近で見られる場所で、一緒にお芝居をさせていただけたことがすごくうれしくて。ひと言の演技でも一瞬で空気を変えてしまう力など、僕もこれから俳優というお仕事を続けていくうえで、身につけていきたいと改めて思いました」
大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺~』(NHK総合 日曜夜8時~ほか)で、ストーリー後半の主人公・田畑政治(阿部)を支える秘書、岩田幸彰役を務める松坂桃李(31)。脚本の宮藤官九郎とは、’16年放送のドラマ『ゆとりですがなにか』以来、2度目のタッグとなるが、
「2回目のオファーとなると、プレッシャーがすごいんです。1回目は“僕に興味を持っていただいてありがとうございます。全力でやらせていただきます”という思いで、振り切ってできるんですが、2回目は“前回とは違ったものをちょうだいね”と思われているんじゃないかと、勝手にプレッシャーを感じてしまうんです」
全然撮影に呼ばれない!?
昨年の9月にクランクインしたが、後半パートがメインの役どころということで、
「去年秋の撮影以降、まったく呼ばれなくなり、当時ドラマ『パーフェクトワールド』で共演していた松重(豊)さんと“われわれの出番は終わりましたね……”って話していて(笑)。ドラマも前半の(中村)勘九郎さんパートが盛り上がりを見せてきて“これはフェードアウトするパターンかもしれない”と思っていたころ、今年夏に入って再び撮影に呼ばれました。
その間にも、さまざまなお仕事をさせていただいていたので、“再び”というよりも、“改めてクランクイン”という気持ちのほうが大きかったです」
岩田を演じる松坂から見た、田畑という人物は、
「僕から見ると嵐のような人。本来だったら嵐って避けたいじゃないですか。でも、阿部さんが演じる田畑の嵐にはどこか“巻き込まれたい”という気持ちが生まれるんです。口は悪いし、せわしないし、よく怒るし、情緒不安定だし、 “どうしてこの人に惹かれるんだろう……”と思うような言葉ばかりですけど(笑)。でも、相対してみると“この人はすごいことを起こしそう、一緒にいると楽しそう”と思わせてくれるような熱量がありますし、それは演じている阿部さんから出ている魅力でもあるのかなと思います」
もし、田畑みたいな人が身近にいたら……?
「いや~避けたい(笑)。目指すべき方向性が一緒なのであれば、乗っかってみたいという気持ちにもなりますが、違うのであれば、ぜひとも避けたいですね(笑)」
今作の大河をはじめ、映画、ドラマ、舞台と引っぱりだこ、まさにいま最も注目される俳優のひとりだ。
以前、バラエティー番組でも小栗旬が松坂桃李と菅田将暉を絶賛していたことを伝えると、
「え、そうなんですか! でも、自分の成長や変化って自分自身では全然、実感できなくて。周りの方から言っていただいて初めて気づくこともたくさんあります。でも、この年になって改めてたくさんの人と出会って、たくさんの経験をさせてもらえていることは、本当にありがたいなと感じています」
印象的なシーンは?
「オリンピック招致に成功して“東京”って掲げているシーンがすごく印象的で。阿部さんや松重さんと“掲げるときは、どういうテンションなんだろうね”と話していて。クランクインしたばかりでいきなりそのシーンの撮影だったので、気持ちや感情のつながりをどう表現しようかとブツブツ話しながら、試行錯誤して撮影したのをすごく覚えています」
「たったひと言放つだけで」
「ネガティブな会話をしているシーンを撮っていても、阿部さんが演じる田畑が“何!?”って、たったひと言放つだけで“何だか面白くなりそう”って思わせてくれるんです。台本にはただ“何”という言葉しか書いていないのに、阿部さんのお芝居を通すことで“このままでは終わらんぞ”という雰囲気に、ガッと持っていってくれるんです」