大勢の著名人に囲まれ、ご満悦の安倍首相の隣で笑顔を見せる昭恵夫人(今年4月)
 在日大使や各界の功労者らをもてなすお花見に安倍首相の後援会関係者が大勢紛れ込んでいたことが発覚。費用は私たちの税金で賄っており、昭恵夫人の“お友達”も毎年のように呼ばれていて──。

「招待といっても交通・宿泊費はかかるので東京出張を兼ねて行った。会場には参加者が多く、安倍首相は1センチぐらいの大きさで見るのが精いっぱいだった

 と、昨春参加した地方都市の会社経営者は振り返る。

 名古屋市議会で議長を務めていた2016年に参加した藤沢忠将市議(自民)は、

「覚えているのは桜がやや散りぎわだったこと。たくさんの人が参加していたが、名札をつけているわけではないので、どの都道府県から来た人が多いかなんてわからなかった。招待者が増えたのはそんなに大騒ぎすることだろうか。さまざまな人が呼ばれなくなるほうが残念」

 と話す。

膨れ上がる経費は予算の3倍に

 東京・新宿御苑で毎年4月、首相主催で開かれる「桜を見る会」の参加者と経費が年々膨れ上がり、安倍晋三首相の地元後援会関係者が数百人規模で招かれていた実態が明るみに出た。

 今年の開催要領によると、本来の招待範囲は皇族や各国大使、最高裁判所長官や各界の代表者など約1万人と決まっており、予算は約1766万円。招待者は配偶者と未成年の子どもについては同行できるものの、実際は辞退者を除いても2倍近い招待者が参加し、支出額は予算の3倍以上にのぼった。

 8日の参院予算委員会でこの問題を追及した共産党の田村智子参院議員は「こんなに予算を無視した支出はありえません」と次のように話す。

参加者が増えているのだから支出が増えるのは当然。税金で事実上、安倍首相の後援会のおもてなしをやっているんです。森友・加計問題は当事者や関係者が限られ、安倍首相が黙らせることのできる相手でしたが、これは無理です。調子に乗って招待者を増やしてしまいましたから」

 参加者には私たちの税金で酒や焼き鳥、ご飯もの、団子などのつまみが無料でふるまわれ、提供ブースに何度も並び直せば飲み放題・食べ放題と同じ。お土産は同会開催を焼き印したひのきの升。公職選挙法で禁じる「寄付行為」に当たる可能性がある。

高級ホテルでの会食が5000円!?

 問題発覚当初、首相は国会答弁で「各界において功績・功労のあった方を各省庁からの意見などを踏まえ幅広く招待している。私は招待者の取りまとめなどには関与していない」と説明。後援会関係者の参加について「地元には自治会やPTAなどの役員をしている方々もいるので後援会と重複することもある」と逃げをはかった。

 ところが、批判はむしろ強まった。逃げ切れないと観念したのか、一転、長年の慣例で首相や官房長官、与党などに招待者の推薦依頼を行っていたことを認め、来年の同会の中止を発表。15日には記者団に対し、「年数を経るごとに(招待者が)だんだん多くなった。そのことは反省しなければならない」と話すなど防戦一方の情勢だ。

 問題はそれだけではない。

 前出の田村議員が言う。

田村智子参院議員

国会質問で安倍首相が最も動揺したのは、後援会主催の『前夜祭』に触れたこと。当然、後援会の政治資金収支報告書に記載がなければおかしいんですが、どこにも出てこないんですよ。そもそもツアーを組んじゃダメでしょ

 安倍首相の地元事務所は後援会員に向け、同会参加と複数の観光プランから選ぶツアー案内を送っている。費用は参加者が旅行会社に直接振り込み、移動はチャーターした観光バス。別料金で首相夫妻が出席する「前夜祭」にも参加できるという内容だ。

 実際に今年の同会前夜、首相夫妻は東京・紀尾井町のホテルニューオータニで、前乗りした後援会関係者ら約850人と豪華なパーティーを楽しんだ。シャンソン歌手の歌を堪能し、寿司を食べて会費は5000円。本当にこの値段でおさまるのか信じがたいが、首相の説明によると、会費は安倍事務所職員が受付で代理徴収したものの、そのままホテルに手渡しているので政治資金収支報告書の記載義務はないという。

 政治とカネの問題に詳しい日本大学の岩井奉信教授(政治学)は、

「ちょっと納得いかないでしょうが、事務所にお金の出入りがなければ記載義務は発生しません。

 問題は、かなり安い会費。事務所が足りない分を補てんしていれば公職選挙法の寄付違反になる。

 ホテル側が値引きしたのであれば、値引いた分を事務所に献金したと取られる可能性もあるグレーゾーンです

 と説明する。

 同教授は「ある意味、うまいやり方」と指摘し、法律の抜け道をつくりかねないため、活動報告する仕組みづくりが必要ではないかという。

 いずれにせよ、私たちが生活費を切り詰めて納めている税金が、安倍首相の後援会関係者のお花見のために使われるのは許せない。

 内閣府は今年の招待者名簿を廃棄したとしており、“首相枠”とされる約800人の功績・功労ははっきりしないまま。

 しかし、ネット社会のいま、今年に限らず複数の参加者がブログやツイッターなどのSNSで同会に参加した感想などを写真つきで述べており、その中には、アッキーこと昭恵夫人の“お友達”とみられる人もちらほら。

衝撃の“アッキー枠”の可能性

 例えば、昭恵夫人が校長を務め5年前に開校した「UZU(うず)の学校」に講師として招いた人物のほか、名誉会長を務めるスキーイベントの実行委員、さらに趣味の酒造仲間ら。それぞれどのような功績があったのかわからないが、昭恵夫人とつながりがあって2年前に参加した会社役員の男性はSNS上で、

《安倍昭恵さん、お招きありがとうございました!》

 と、個人的なお礼まで述べている。

 招待状はすべて安倍首相の名前で内閣府から送られ、招待理由などは書いていない。

 つまり、昭恵夫人とのコネ以外に招かれる心当たりがないのだろう。

 森友問題に絡んで昭恵夫人は「私人」と閣議決定されており、一私人が国家の功労者の人選に関わるのは問題だ。

 それにしても、なぜ、ここまで招待者が膨れ上がったのか─。

 政治評論家の有馬晴海氏は、

「新宿御苑はキャパシティーが広く、立食形式でイスなどを用意する必要もないから無制限に増えたのでは。消費税を上げる財源不足の中、税金を使ってまで再来年以降に再開する必要はあるだろうか

 と疑問を投げかける。

 “アッキー枠”が、さらに暴露されれば第二のモリカケ問題にもなりかねない。

 公私混同ぶりは、夫唱婦随といえそうだ。