芸能界でも「ママ好き」男子が急増中(左上から時計回りに)山田涼介、平松賢人、坂口健太郎、矢島愛弥

「お母さんのことが好き」

 男性がこんな言葉を口走ったものなら、“マザコン”と認定され、女性から敬遠されてしまう悪条件の筆頭格だった……はず。

 ところが最近では、坂口健太郎やHey! Say! JUMPの山田涼介、BOYS AND MENの平松賢人をはじめ、堂々と“ママ好き”“お母さんと仲よし”を公言する男性芸能人も増えている。マザコン=マイナスイメージ、そんな考え方は時代錯誤になっているのかも!?

嫌悪感を象徴した「アレクサ息子」

「お母さんと一緒に原宿に出かけたりしても、全然恥ずかしくないですよ」

 こう話すのは、男性アイドルグループ「B2takes!!」のメンバーであり、元おニャン子クラブの渡辺美奈代を母に持つ矢島愛弥。美奈代とバラエティー番組で共演した際、母親との超がつくほどの仲よしぶりが話題を呼んだ“ママ好き男子”のひとりだ。

「いまどきの子は、男女問わず家族と仲がよいと思います。女の子もお父さんと一緒に出かけることも珍しくないです。親と一緒にいることに対して“ダサい”とかいう人もいますけど、そう決めつけるほうが“ダサい”という時代に変わってきてると思います」

 と、キッパリ。現代の若者は、母親との仲のよさをからかわれてもそれほどダメージには感じないようだ。

 ところが、そんな時代背景の変化に対して、結果的に一石を投じる形になったのが、AmazonのAIアシスタント「アレクサ」のCMだった(※現在は放映終了)。

 テレビ電話を通じて、母親に肉じゃがの作り方を相談する男性に対して、きゃりーぱみゅぱみゅがツイッターで「アレクサのCMの息子みたいな男苦手」と投稿したところ共感の声が続出。

「彼女に振る舞うための料理なのに、おふくろの味を再現しようとしているのが気持ち悪い」「“今度の彼女は大丈夫?”という母親のセリフから、男性が毎回、母親に報告している感じがしてムリ」

 などなど、多くの人々からネガティブな意見が寄せられ、いまだマザコンに対する反感が根強く残っていることを明らかにしてしまった。

“ママを自慢したい欲望”の顕在化か

 男性が母親と親密な様子は、なぜ忌避感を覚えさせてしまうのか? 精神科医であり医学博士の春日武彦さんが説明する。

「“マザコン”という表現には、男尊女卑とか“女の上司の下で働く男なんてみっともない”といった価値観、精神的近親相姦といったイメージが付随しています。マザコン男はダメ男で、母親にしか相手にしてもらえない男……そういったイメージが残っている、ということでしょう」

 また昨今、“ママ好き男子”が増えている背景に対しては、

「今に始まった話ではなく、クラスメートの母親が美人だと、みんなが羨ましがったり息子も誇らしげな顔をしていたものです。つまり“ママを自慢したい欲望”は普遍的なものとして考えることができます。

 輪をかけて、近ごろのお母さんはおしなべてきれいです。かつてのような生々しい生活感を感じさせない。自慢するに足るお母さんばかりになると、ママ好きを公言する男子が出現しても不自然ではないでしょうね」と分析。

 さらに矢島も「LINEやインスタグラムなどのコミュニケーションツールの登場も大きいのでは」と話す。

「家族同士でフォローし合うことも珍しくないし、スタンプひとつで感情を伝えられるので、より家族間が親密になりやすい。それに、ジャスティン・ビーバーなど外国人のインスタを見ると、母親を大切にしているような投稿が多い。そういうリスペクトを日常的に見る機会があったことも大きいですね」(矢島)

矢島愛弥

 ママ好きを公言している男子ばかりに焦点が当たりがちだけど、息子好きを公言するママが増えていることも忘れてはいけない。モデルの蛯原友里が3歳の息子に対して「ちっちゃな彼氏みたいで毎日キュンキュンしてます」と発言したように、ママタレたちが「小さな彼氏」と称する投稿を発信していることも興味深い。

 20歳の大学生を息子に持つ40代の女性は「母親サイドの心境の変化もあると思う」と話す。

「時代とともに子どもたちとの関わり方が変わるなかで、“完璧な母親像って何だろう”って考えると本当にわからない。でも、自分の母のような昭和的な“お母さん像”は、今とは違うなって。それに、昭和の母親像を求められるような社会でもないですよね」

 24時間、母親然としている必要はなく、保護者としての責任を果たせば、ともに楽しんでもいいのではないか。だからこそ、一緒にライブに行ったり、映画を見に行ったりもするという。先のアレクサのCMにしても、

「彼女が到着した後も母親と通話していたらおかしいですけど、きちんと通話を切っている。母親と仲がよい、そのうえで彼女を優先する。線引きができていると思うので、そこまで非難すること? って思っちゃいますね」

 と、“肉じゃが男性”に同情するほど。拒否反応を示す人の中には、かつて佐野史郎が演じた“冬彦さん”ではないけれど、前時代的な母親と息子の関係性しか知らないから、ついつい手厳しい意見を言ってしまうのでは!?

ママだけでなく“ファミラブ”男子へ

「マザコンのコンって、コンプレックスの意味ですよね? まったくコンプレックスなんてないですよ」(矢島)

 母には、敬意と感謝しかないという。

「今、自分が芸能活動をしているから痛感するのですが、母は芸能活動をしながら毎日お弁当を作ってくれたり、学校行事に参加してくれたりしたんだなって。どれだけ大変だったんだろうと思うんです。僕も来春、大学を卒業するので、育てられる側ではなくなります。恩返しではないですけど、親孝行をして、母に楽をさせたいです」

 母親へのリスペクト。それこそが、ママ好き男子の根底にある共通の思いなのかもしれない。

自慢することが“恥”とか“あられもない”と指弾されなくなったので、母親込みの自己顕示があって当然ということなのでしょう。個人的に、ママ好きを公言できる男子は、自己肯定感に満ちているんだろうなと、ちょっと羨ましいくらいです」(春日さん)

 最後に、矢島からこんな提案が。

「マザコンやファザコン、シスコンなど、言葉のイメージが悪いから、母親や家族と仲よくしている男子も悪くとらえられがちになる。むしろ僕は、家族を大切に思い、仲よくすることがどうして悪いのかわかりません。僕は父も母も弟も好きです。言わば、ファミリーラブ(笑)。

 これからは“ファミラブ”じゃないですけど、マザコンとは違う呼び名が浸透したらいいなって思います

 ママ好き男子たちがこの先、新しく家族を築き上げる際も“ファミラブ”をモットーにできれば、もっと世の中は変わるかも─。


やじま・まなや 1997年、東京都生まれ。タレントとしてテレビ、舞台で活躍中。2019年8月からメンズアイドルグループB2takes!!に新メンバーとして加入し、新たなステージに挑戦中。

かすが・たけひこ 1951年、京都府生まれ。精神科医、医学博士。著書多数。小説家としての顔も持つ。