「モノによるハラスメント=モノハラ」解決法

モノハラ=お金とスペースの侵略

 他人や家族の「モノ」のせいでイライラ・モヤモヤしてしまうことはありませんか?

「モノがあることで自分の“スペース”と“お金”が侵されていると感じさせられることが原因。相手にとっては大切なモノでも、自分には不要だったり、そこにあることがジャマだったりすると、不快・迷惑=ハラスメント、つまりモノハラと受け取れてしまうのです」

 そう解説してくれるのは住生活アドバイザーで収納のプロ、すはらひろこさん。

「モノハラの影響は不快なだけではありません。仕事や勉強などの作業中に余分なものが視界入ると空間認知力の乱れを引き起こし、脳へ悪影響を及ぼします」(すはらさん)

 やるべきことに集中できないのは、もしかしたら誰かの置いたモノの影響を受けている可能性も!

「モノに対するとらえ方は人によって異なるため、モノハラ加害者であってもほとんどの人はその実感を持っていないのが問題なんです」(すはらさん)

 被害者だと思っていた自分が実は加害者でもあった……なんて場合も少なくありません。まずはよくあるモノハラ問題の事例をチェックして、わが身を振り返ってみて。

 よくある4つのタイプ別に、「モノハラ」実例をご紹介。あなたの身の回りでも、こんなトラブルありませんか?

1.捨てない

 ジャマでしょうがいないものでも、所有者にとっては捨てられない理由があるもの。たまり続けるモノたちを前に、イライラもつのるばかり。

モノハラあるある(1) 捨てない

「モノをため込む母に困っています。もらいものの食器や雑貨、古い衣類や紙袋まで、使いそうにないものでも、後で判断するからとりあえず置いといてと言ってとにかく保管、結局そのまま。散らかっているわけではないから捨ててと強くは言えないものの、ジャマなことは間違いない。どうするのがよいか、答えが見つかりません」(51歳・事務)

「過去の趣味グッズ、マンガ、はかない服……。夫はなんでも保管したがります。大切な思い出の品らしいですが、私には理解不能。わが家の収納には限りがあることを理解してほしいです!」(44歳・主婦)

2.収集癖

 男性に多い収集癖タイプ。集めれば集めるほどに征服欲・購買欲が膨らむので、モノは増える一方。趣味と言われると否定もできず、悩ましい。

モノハラあるある(2) 収集癖

「スニーカー収集が趣味の夫。下駄箱だけでは入りきらなくなり、部屋に専用の棚を作って飾りだしました。下駄箱のスペースを占領しているだけでも不快なのに、部屋に帰ると自然とスニーカーが目に入ってきて、ストレスです」(38歳・マスコミ)

「キャラクターグッズを集めまくる妻に困惑。最初はかわいい趣味程度の印象でしたが、今では寝室をファンシーなぬいぐるみや雑貨が埋めつくすまでに成長。安眠できないから少し捨てるかなにかしててと言うと、他人を見るかような目で見られ、心が折れた」(41歳・営業)

3.買いすぎ

 ストック品は確かに必要。たまのご褒美ショッピングも悪くない。けれどその程度がすぎる場合、買うこと自体に依存している可能性も。

モノハラあるある(3) 買いすぎ

妻の趣味は読書。それ自体はいいことだと思うのだが、読んでない本はもう数えきれないほどたまっているし、買って満足してるようにも見える。すでに本棚からはあふれ出ていて、正直ジャマ。そろそろ限界だと伝えてもいいでしょうか」(48歳・教育)

「洗剤、電池、保存食……夫がストック品を買いあさることが不愉快。ネットでもスーパーでも、安売りしているのを見つけると、張り切ってまとめ買いしてしまいます。食品には賞味期限があるし収納スペースはないし、メリットを感じられません」(48歳・主婦)

4.勝手に場所占拠

 共有スペースに勝手にモノを置いてしまうのは、職人気質の“わが道を行く”タイプに多い傾向が。これがベストな置き場所と信じているから厄介。

モノハラあるある(4) 勝手に場所占拠

「席が隣の同僚は、デスクがいつも書類や私物で山積みの状態。さらに共有の通路にも紙袋などを置いて勝手にモノ置き場にアレンジしている始末。こちらも気がちるし、少し片づければ?と提案してみたが、『これがいちばん便利なので』との返事が」(41歳・代理店)

「ダイニングテーブルで過ごすことの多い夫は、新聞やスマホの充電、ノートパソコンにリモコンまで、ふだんよく使うものをすべて椅子から手が届く範囲に配置。日中片づけても、夜になれば何もなかったかのように元どおりの配置に」(51歳・主婦)

お互いのモノへの感じ方を共有する

 どちらかが我慢するだけでは解決しないモノハラ問題。片づけを催促する前に、まずはお互いのモノへの感じ方の違いを理解しあうのが、問題解決への第一歩に。

モノがあることでイライラさせられると、その所有者が全面的に間違っている!と考えがち。でも、本来モノをどこに置くか、どれだけ手に入れるかに正解はありません。相手を否定する前に、まずは自分の希望通りにすることで本当にその不快が解消されるのか、冷静に考えてみましょう」(すはらさん)

 もしかしたら、そのイライラは相手のモノハラが原因ではない可能性も。

「他人との共同生活ではさまざまなことですれ違いやいざこざが生じるのは当然のこと。他人の行動や感情で自分の心をすり減らさないためにオススメなのが、共有スペースの中にお互いの聖域を作るという方法。気持ちに余裕が生まれ、相手のテリトリーや考えを尊重できるようになれるはず」(すはらさん)

 長く続いたモノハラ問題を短期間で解消させようとしても、困難なだけでメリットなし。コミュニケーションをとりながら、お互いにとってプラスになる共通のゴールを目指し、ジワジワ改善させていくつもりで取り組みましょう。

解決のヒント
・否定から入らない
・イライラの原因を突き止める
・各自の聖域を作る
・共通の目標を作る
・短期決戦を目指さない
・自分を大切にする

「モノハラ」タイプ別解決法

1.「捨てない」の解決法
片づけを催促する前にモノの量を体感させる

「モノをため込みがちなタイプの場合、そのモノの量や質に自分自身の価値を投影してしまっていることがよくあります」(すはらさん)

 いきなりモノを捨てるように促してしまうと、相手は不安や怒りを感じてしまう場合が。

本人の前で広げ、モノの量を把握してもらう

「まずは相手の捨てられない気持ちに共感することが第一。そして、片づけたいモノを広げるなどして、全体量を把握してもらいましょう」(すはらさん)

 “これらをより使いやすいように整理しよう”という前提で話を進めれば、いるものといらないものを冷静に判断してくれるはず。

2.「収集癖」の解決法
コレクションは「人格」。否定せずルールを決めて

大事なモノだからこそ美しく

「収集癖タイプにとって、コレクショングッズはまさに自分の魂そのもの。雑に扱われれば人格を否定されているも同然に感じてしまいます」(すはらさん)

 集めているモノそのものを否定することは厳禁と心得ておいて。もちろん、自慢のグッズで共有のスペースを無尽蔵に侵略することを受け入れる必要はなし。全部は飾れないことを理解してもらい、展示スペースはここ、保管場所はここまでと、事前に決めておきましょう。

「そのときも邪魔に扱うのではなく、大切なモノだからこそきれいに扱おうという認識で話し合いを進めることが大切です」(すはらさん)

3.「買いすぎ」の解決法
買う行為は責めず冷静に現状を提示

似たようなものばかり買う人には未使用品の総額を伝えてみては

「買いすぎてしまうタイプの場合、買う行為を非難しても解決にはつながりません。相手が機嫌よくリラックスしているタイミングを見計らい、「使っていないものがこれだけたまっているね」「いくら分がムダになってしまったよ」と、現状を具体的に提示してあげるのが効果的」(すはらさん)

 ムダに気づけば、次第に買い物量が落ち着いてくるはずです。またこのタイプは何かしら買い物に依存したい理由がある可能性も。相手が置かれている状況や気持ちに目を向けてみると、解決の糸口が見つかるかもしれません。

4.「勝手に場所占拠」の解決法
お互いの希望をうまくすり合わせて

お互いのだ妥協ラインというポイントを探す努力を

「相手がモノの置き場所をマイルールで決めてしまうタイプの場合、そのルールを全面変更させるのはかなり困難かもしれません。でも、逆にあなたの希望どおりの場所に置き場所を変えさせるのは、相手にあなたのルールを強要することでもあるのです」(すはらさん)

 使いやすさや快適さはあくまでも主観にすぎないという認識を共有すること。そのためにはコミュニケーションが不可欠です。全面降伏を求めずに、ここがお互いの妥協ラインというポイントを探しだすべく、納得するまで話し合いましょう。

モノハラ被害者は加害者でもある!?

 言われ放題のモノハラ加害者たちに、われこそは被害者だと主張する相手に向けて言いたいことがあるかと聞いてみたところ、「片づけろ片づけろと言うけれど、冷蔵庫の中の賞味期限ぎれの食品は、片付けなくていいいの? 怖くて開けられません」

「洗面所を占領している化粧品も、ある意味コレクションですよね」……などなど、耳が痛いご意見が続々。モノハラは、誰もが加害者になりえる問題なんですね。

使わないけど手放せないモノの新しい活用方法「レンタルアプリ」で賢くお片づけ
 
家にある邪魔なモノでも、どうしても、わけあって捨てられない場合ってありませんか? そんな捨てられないモノ対策としていま、注目されているのが、売る・捨てるのではなく「貸す」という選択肢。
 昨年10月に開始されたスマホアプリサービス「貸し借りアプリAlice.style」は、アプリ上で簡単に出品・レンタルが可能なサービス。出品する側は、部屋の片づけ&小遣い稼ぎになり、借りる側は試してみたい家電や美容器具を気軽にレンタルできると大好評。売るわけではないので、出品後に再度必要になれば手元に戻すことも可能。どうしても捨てられない悩みを解決する、新しい選択肢です。

監修/すはらひろこ 株式会社アビタ クエスト代表・住生活アドバイザー。テレビ東京『テレビチャンピオン』の「お部屋リフォーム王」で収納女王に選ばれ「収納のスペシャリスト」として注目され、テレビや雑誌で活躍。『5分間「整理・収納」BOOK』(三笠書房)など著書・監修多数