今回、ナンパイケメンに遭遇した街は世田谷区・三軒茶屋。東京の「住みたい街ランキング」でも毎年、上位に名を連ねる人気の街。
とはいえベッドタウンとしての印象が強いというわけでもなく、駅前は人も多く賑わっている。商店街やおしゃれなコーヒースタンド、バル風の飲食店も多く、近所ですべてが完結する、それが通称・三茶、三軒茶屋のいいところだ。
渋谷や恵比寿などからもタクシー、自転車圏内ということもあり、交通の便のよさからも人気のある街だ。そのせいか、三茶にひとり住まいしている若者は社交的で遊び人なイメージも……。
アラサー男もポップにする街
三茶のナンパスポットといえば、駅前にある商店街の奥に存在する「三角地帯」というディープなスポット。昔からある飲食店も多いのだが、細い路地には、ところせましと居酒屋やスナックが並び、雰囲気は新宿のゴールデン街のような感じだ。
そんな三角地帯で今回、声をかけてきたのは、三茶らしいスタイリッシュな「スケボーボーイ」。
彼と出会ったのは三角地帯のはずれにある若者向きのバー。なんとここのお店、“お通し”がアルコール度数の高い「イエーガーマイスター」のショットなのだ。しかも飲み放題。土曜日の午後11時、入店すると店内は若者であふれていた。
さっそく“お通し”で乾杯していると、入店から10分くらいで彼から声をかけられた。
「おねーさんたち、なんか歌いません?」
実はこのバーにはカラオケがついており、店内をジャックして歌える、“スナック風カラオケ”なのだ。好きな曲を歌っている人がいると、それがきっかけで仲よくなり、お酒を飲みながら共通の音楽の話をする。こういった形式のバーが最近ではブームになりつつある。
デンモク(電子目次本)をさらりと渡してきたスケボーボーイは30歳前後といった雰囲気。178センチくらいの高身長に、キャップのつばをくるりと後ろに向けてかぶっている。ゆるめのグレーのトレーナーに、オリーブ色のワークパンツ。ちょっと男くさい格好を、本人の甘いマスクでうまく調和している。……イケメンだ。
見るからにポップカルチャーなアラサーというのも、また三茶らしい風情があっていい。カラオケで何を歌おうか悩んでいるところに、自然と男性たちがグループの輪に入っており、気づくと隣の席に彼がいた。
検索履歴にはニルヴァーナやボン・ジョヴィなどが並んでいたが、スケボーボーイと一緒に歌うことになったのはディズニーソングだった。思ったより美声で、歌い慣れているところにイケメンの余裕を感じたのだった。
「君んちにウーバーイーツしてあげる!」
結局、そのまま一緒に飲むことになり、自己紹介を聞くと、彼は29歳で、渋谷のベンチャーIT企業で働いているという。三茶の駅から徒歩5分くらいの家に住んでおり、職場までは「ロードバイクで通っている」というあたりも「なるほど……」という感じだった。
「空いた時間を使って、Uber Eats(ウーバーイーツ)とドライブシェアのバイトもしてるんだよね。ウーバーイーツとか、普段使う?」
Uber Eatsとは都内ではもう当たり前のフードデリバリーサービスで、家から出ずにレストランのごはんを宅配してもらえる。
「ていうか、家どのへん? 俺がごはん宅配してあげるよ!」
急な決めゼリフ、キタ―!!
その後、おすすめのおいしい出前可能な店をGoogle Mapで共有してくれた。マップ上にさまざまな飲食店情報をストックしているあたり、ネットリテラシーの高さも感じる。
宅配手数料はアプリ内で決済されるため、彼に住所を教えたところで安くしてもらえるワケでもないのだが、自然と生活圏を聞き出すワザは、お見事だった。
2人きりの路地で、そのまま……?
歌い疲れてきた私たちは、午前1時には店を出ることにしたが、「イイ店、知ってるんだ」と言って二軒目を誘ってくる。酔いも回りはじめたころ、三角地帯の中でスケボーボーイが立ち止まった。
くるりと後ろを振り返ったスケボーボーイは、筆者の顔を優しくおさえて……キスしてきたのである。
そして、子どもっぽく笑って、前方を歩く友人たちに何事もなかったかのように合流した。……ずるい、ずるすぎる。これが三茶のあざとめアラサーのやり方かー!
ナンパっぽくない振る舞いで女性との距離を詰めてくる三茶のナンパイケメン。声をかけた当日に、無理して持ち帰ろうとしてこず、ジリジリと酔わせてくるのが戦法なのだ。
最後にスケボーボーイの外見をまとめると。
■顔面→高橋一生似で、タレ目の甘いマスク
■服装→男らしいスケボーファッション
■髪型→キャップを脱ぐと爽やかな短髪
■年収→推定500万円
■感想→服装からくるカジュアルさと無邪気な笑顔に心を許しやすい
三茶で飲む男性たちは少なくとも三茶から徒歩圏内に住んでいる可能性が高いので、酔っぱらいすぎると次の日は男性宅で目を覚ますことになりそう。
逆ナンやギャラ飲みなどの現場にも乗り込むサブカル女子。