日本には八百万の神様がいらっしゃいます。数えきれないほどの神様は、それぞれに個性があって、それぞれに得意分野があります。せっかく願かけするのですから、願いを聞き届けてくださる、最高パワーの神様のいらっしゃる神社に詣でましょう。どこの神社に参拝すればいいのかを、神仏探偵の本田不二雄さんにガイドしてもらいました。そこに行けば、きっとあなたの願い事も届きますよ!!
◆ ◆ ◆
今から、あなたの願いを叶えてくれるかもしれない神様を紹介しよう。金運の神様、健康運の神様、恋愛成就の神様はどこの神社にいらっしゃるのかが、この記事を読めば、もうばっちり。
でも「へえ、そこの神社にお参りすればいいんだ」と形式的に参拝するだけでは、神様も本気になってくれません。
大事なのは神様とお近づきになること。「神様とコンタクトをとり、ご神縁を結ぶことで、あなたの願いを受け止めてくれるのです」(本田さん)では、どうやったら神様と縁を結ぶことができるのか、教えて! 本田さん!!
神様のパーソナリティを理解しよう
神社にお参りするときは、独特の作法があるのは知っていますよね。
参道は端を歩く、鳥居をくぐる前に本殿に向かって一礼をする、手水で心身の汚れを落とす、神様へのご挨拶の基本は二礼二拍手一礼……ついつい、こうしたことに気をとられてしまいがちですが、
「あまりとらわれる必要はないのですが、ひとつだけ守ってほしいのが、参道をちゃんと歩くこと」(本田さん、以下同)
ちゃんと歩くとは、一の鳥居、二の鳥居と順番にくぐりながら参道を歩くこと。「日常から、神様の鎮座する非日常の世界に向かうために、気持ちを整えるのが参道の役割です。境内が広いからと、近道するなどもってのほかですよ」
参道を歩きながら、神様と縁をつなぐ喜びを感じ、わくわくと気持ちが盛り上がっていくのを実感するのが大事なんですね。
「日本の神様は“隠身”といって、隠れていて、力だけ及ぼしてくる神様なんです。神社にお参りするからには、見えないけれど、ここにいらっしゃるのだと信じてほしいですね」。
さらに、お参りするからには、神様のパーソナリティーも理解しておいてほしいと本田さんは言います。
例えばイザナギとイザナミが夫婦神であると知っていれば、この2柱をお祀りしているから、縁結びの神社なんだとわかります。イザナギの左目から生まれたのが太陽の神様のアマテラスで、鼻から生まれたのが乱暴者のスサノオ。でもスサノオはクシナダヒメと結婚し子どもが生まれ孫も生まれます。
「こういう神様だから、こういうご利益があるのだと理解できれば、神様の力を信じることができるでしょう」
神社にお参りして、せっかく神様とご神縁を結べても、日常の生活に戻ってしまえば、神様を感じることもなくなります。そこでお守りの登場です。「お守りを通して日常的に神様とコンタクトができるから」。ご神縁が途切れないというわけです。
やっぱり金運が大事よねというあなたへ
消費税も10%になり、家計もきつくなってきたこのごろ「やっぱりお金が欲しい」という人が急増中。金運のイチオシ神社は、3年続けていくと一生お金に困らなくなるといわれている金華山黄金山神社(宮城県)。
日本最古にして最強の金運パワースポットとして全国に知られている。「牡鹿半島の南端に浮かぶ島で、島全体が聖地です。行くのは大変ですが、だからこそご利益も期待できるってわけです。苦労してご神縁を結べば、それだけご利益効果も期待していいと思います」。
だからこそ、とっても不便なところなのに、全国からお参りする人が後を絶たない。人々が向かうは、弁財天をお祀りする奉安殿で、ここには銭洗い所があって、ざるを使ってお金を洗う作法が伝わっている。あなたも3年連続に挑戦してみない?
ここだけでなく銭洗いができる神社は全国各地にあるが、品川神社(東京都)の境内には見逃せないお社が。「お稲荷さんを祀っているこのお社の横に湧き出しているのが、一粒万倍の水といって、印鑑や銭を清めると、万倍にもなって戻ってくるそうです。試してみる価値ありですよ」。
三光稲荷神社(愛知県)の銭洗い池は、「このご神水でお金を洗うと倍返しだそうです」
蛇信仰も金運・財運につながっている。「蛇は脱皮を繰り返して成長していくことから、財産が増えるイメージに結びついたのでしょう」。
蛇窪神社(東京都)のお社には白蛇の像が巻きついていて、ちょっとユーモラスだけれど、迫力満点。岩国白蛇神社(山口県)は世界でもここだけの本物の白蛇の聖域。白蛇の袴(脱皮した皮)入りのお守りは人気が殺到。
金運といえばお金。金属にまつわる神様を祀る神社では、まず聖神社(埼玉県)。奈良時代の貨幣の和同開珎ゆかりの神社で、拝殿に置かれた巨大なお金のモニュメントにまずびっくり。
「銭神様と呼ばれているのですが、掲示板にはご利益のご報告が並んでいて、ご利益パワーを実感しますよ」。そして御金神社(京都市)のご祭神のカナヤマヒコは金属に関わる神様。
「おびただしい金運向上の絵馬にまじり、収入アップありがとうございましたという、絵馬も目につきます」
さっそく、お参りに出かけましょう。
人生を賭けた勝負に勝ちたいあなたへ
新しいことに挑戦して、それを見事成功させたいなら、鹿島神宮(茨城県)にお参りすべし。「“鹿島立ち”という言葉があるのですが、その由来は、これから辺境の地に向かう防人や武士が、鹿島神宮に参詣したこと。
また鹿島神宮に祀られている神様のタケミカヅチが、この地から日本国を平定していったという神話にあるといわれています。困難に打ち勝つ勝負運の力を持っているのが鹿島神宮の神様です」。
勝負の神の幟がはためくのは秋保神社(宮城県)。オリンピック出場選手や楽天イーグルス関係者などが奉納した幟です。当社の勝負の勝守も人気。
入登山神社(長野県)は標高が777メートルであることから、勝負ごとの神社として人気。「でも実は、江戸の昔から博打を打つ人がわざわざ山や谷を越えてお参りに来ていたとか。そのころから霊験あらたかな神社だったのでしょう」
ちょっと面白い名の神社が皆中稲荷神社(東京都)。“みなあたるの稲荷”と呼ばれている。宝くじを買ったらお参りしておきたい。
フィギュアスケートの羽生結弦選手がお参りして、ソチ五輪で金メダルを獲得したことでブレイクしたのが弓弦羽神社(兵庫県)。新キャラクターのゆづ丸に、あなたの願いを託しましょう。
出世したいあなたへ
出世開運の神様として有名なのが、高麗神社(埼玉県)。「大正から昭和の前期にかけて、参拝者から6人もの総理大臣を輩出しています」
そのご神徳にあやかりたいなら、“出世開運守”をいただいて。
愛宕神社(東京都)の通称“出世の階段”は86段。ゆっくりでもいいから、振り返らずに一気に上ろう。
豊臣秀吉を祀っているのが豊国神社(京都市)。太閤さんとご神縁を結び、立身出世と開運を祈願しましょう。
無病息災、健康を祈るあなたへ
病気平癒を引き受けてくれる神様の中でも、多くの人が頼りにし、お願いに詣でるのが“石切さん”で知られる石切劔箭神社(大阪府)。
「今でも“お百度参り”が熱心に行われています。でんぼ(腫れ物の)神様といわれ、おできから悪性腫瘍まで、人に害をなす腫れ物を神様の力で断ち切ってくれると信じられているんです」
同じ大阪には、少彦名神社(大阪市)もある。「薬問屋が軒を連ねる道修町にあり、医療関係者や製薬会社の人も多くお参りしています」。ご祭神は医薬の神様のスクナヒコナで、さらに中国の薬祖神である神農神も一緒に祀られている。
五條天神社(東京都)もスクナヒコナを祀っている神社だ。主祭神の大貴己命とは、オオクニヌシのこと。つまりオオクニヌシとスクナヒコナがご祭神で、この2柱の神様は、一緒に全国を旅しながら、国づくりを行ったほどの仲よし。
だから力を合わせて、病気も治しててくれるに違いない。お守りはかわいい草履のストラップが人気で、足の痛み、腰の痛みが消えるように祈願されているそう。
八坂神社(京都市)といえば、祇園祭。この祇園祭は、1000年以上も前の平安時代に疫病が流行したときに、災厄の除去を祈ったことがその始まり。つまりそんな昔から病気平癒の神社だったのだ。
最近注目されているのが、西院春日神社(京都市)。平安時代に皇女が疱瘡の平癒を祈ったところ、春日の大神が石に病気を転移させて治したという話が残っている。それがなんと「この石が発見されたというのです」。霊石に病気治癒を託して祈れば、ご利益あり。
今宮神社(京都市)のやすらい人形は、人形に厄を遷し病気を鎮める健康祈願。
「赤い紙を折ったヒトガタに住所、氏名、年齢、性別を記入し、人形の真ん中にある、蘇民将来子孫也のお札を抜いてご奉納します」
京都御所のすぐ近くにある護王神社(京都市)の祭神は、皇室存続の危機を救った和気清麻呂。「清麻呂は道鏡という僧侶からパワハラを受けながら、頑張ったんですね。パワハラなどの職難を落とし、仕事運を守護してくれる頼もしい神社です」
縁結びの神様、オオクニヌシは浮気者だった
恋愛成就、縁結びの神様の代表は、イザナギとイザナミの夫婦神系、イザナギの鼻から生まれたスサノオと美しい妻のクシナダヒメ系、そしてスサノオとクシナダヒメの子孫になるオオクニヌシ系の神社に分かれる。
オオクニヌシはスサノオの娘・スセリヒメを妻に迎えますが、気が多くて何人もの妻を持ってしまいます。でも仲直りしてからは、末永く一緒に暮らしたそう。それでオオクニヌシも縁結びの神様となったというわけ。
さて、日本でいちばん有名な縁結びの聖地といえばオオクニヌシが鎮座する出雲大社(島根県)。ここで授与されている有名なお守りが赤と白の絹糸で作られた縁結びの糸。
「糸を大切な人にも分けてあげることで、よいご縁が結ばれます」。恋人でなくても、末永く親しくお付き合いしたい人にも効果的だそう。
氣多大社(石川県)もオオクニヌシをお祀りしていて、恋愛や願い事が叶ったという報告が7万8000以上もあり、今も増え続けているそうだ。
日本で初めて神前式の結婚式が行われたのが、東京大神宮(東京都)。今、もっともホットな縁結びのパワースポットになっている。ここで人気なのが、結び札。神様とご神縁を結ぶことができる札だ。
ペアの招き猫が参詣者の目を引く今戸神社(東京都)は、イザナギ、イザナミがご祭神。招き猫は商売繁盛が一般的だが、ここでは良縁を招く猫。カップルでお参りし、成婚できたという実績も数多あるそうだ。後に続きたいですよね。
関東の名峰・筑波山は西の男体山にイザナギを、東の女体山にイザナミを祀る聖なるお山。筑波山神社(茨城県)の参詣は両参りするのが基本。2つのお社を参拝したら、「女体山本殿背後の天浮橋を渡ってください。良縁ポイントですよ」。
叶神社(神奈川県)も2つの神社の両参りをすることで良縁に恵まれる。浦賀湾をはさんで向き合う東西2つの叶神社は、渡し船で結ばれていて、お参りするのも旅気分で楽しい。
小江戸・川越の総鎮守として崇敬を集めてきた川越氷川神社(埼玉県)は、スサノオとクシナダヒメや、オオクニヌシなどが祭神。
ご神徳は縁結びと夫婦円満。樹齢600年を超えるご神木も縁起よし。鯛を吊り上げるおみくじは楽しいし、新たな出会いを願うお守りも持っているとテンションが上がってくるくらいかわいらしい。
「お守りは神様と自分とのかかわりをつなぐもの。しっかりご神縁が結べる神社だと思います」
宝満宮竈門神社(福岡県)には、ちょっとドキドキする恋占いの石がある。本殿奥の敬愛の石は、目を閉じて左の石から右の石にたどりつけるかどうかで恋の行方を占う。
心に秘する人がいて、でも相手の気持ちがつかめないというときは、遠野の卯子酉様(岩手県)のお力を借りよう。
言い伝えによると、祠の前にある木々の枝に左手だけで赤い布を結ぶことができたら。縁が結ばれるという。それで境内は真っ赤な異空間に。たくさんの片思いの人が、自分の思いを成就させようと祈っているのが伝わってくる。
なんでこんなに不便な神社にお参りしなければいけないのぉと、ぼやいてしまいそうなほどアクセスが大変なのが白山比め神社(石川県)。
金沢から北陸鉄道石川線に乗り、終点で今度はバスに乗って神社を目指す。
でも、苦労すればするほど、参拝の喜びは大きく、神様とも親しくなれる気がしてくるというもの。
縁を切りたい、もう1度やり直したいときは
北海道にあるのが、悪縁を切り幸せな出会いを招く西野神社。
しつこい元カレや嫌な上司と縁を切りたいなら安井金比羅宮(京都市)。ここには縁切り縁結びの碑があり、真ん中の人が通れるくらいの穴を、表から裏側にくぐれば悪縁が切れ、裏から表側へくぐれば良縁が結べる。“夫と不倫している相手”との縁も断ち切れるそう。
別れたいと願う人もいればイヤイヤ、別れたくないの! と願う人だっているはず。
京都を代表する古社の貴船神社(京都市)には、復縁を願う人が多くお参りしている。
「平安時代の歌人、和泉式部が、夫との復縁を祈ったところ願いが叶ったという逸話があるそうです。本宮と奥宮の間にある結社は、良縁・復縁のお宮なので、復縁を願うなら、ここにぜひお参りしてください」
決断と行動の神様・アカルヒメを祀る姫嶋神社(大阪)は、やりなおしの神社。ここから人生の再スタートを切れば、きっといい人生になるでしょう。
さあ、あなたの願いを叶えてくれる神社は、見つかりましたか。
あなたに幸せをもたらす神様物語
神社に祀られている神様の多くは、神話の世界から登場しました。崇徳天皇や徳川家康、豊臣秀吉など、もともとは人間だった神様もいます。ウサギや白蛇もご祭神になりました。神様たちの物語を知れば、神様がより身近に感じられるでしょう。
【神話出身の神様】
日本最古の歴史書『古事記』や『日本書紀』には、何もない世界に天地が創られ、神々が登場する様子が語られています。イザナギとイザナミは日本を作った神様で、地上で多くの神様を生み出しました。イザナギとイザナミを祀った神社は、恋愛成就の筑波山神社や今戸神社。
スサノオとクシナダヒメも縁結び、夫婦円満の神様で、津島神社や川越氷川神社。オオクニヌシを祀った出雲大社や氣田大社も縁結びの神社。そのオオクニヌシと海辺で出会ったスクナヒコナは無病息災の神様で、少彦名神社や五條天神社に祀られています。
【もとは人間だった神様】
受験の神様として知られる菅原道真公は天神様としてよく知られていますよね。平安時代の陰陽師の安倍晴明は、京都の安倍晴明神社に祀られています。
江戸幕府を開いた徳川家康は、東照大権現という名で、世界遺産の日光東照宮のほか、全国の東照宮に祀られています。
その、もと人間の神様たちの中から、この記事中では、さまざまな悲運にあいながらもすべてを断ち切った崇徳天皇をお祀りした縁切りの安井金比羅宮と、戦国武将で大出世を遂げた豊臣秀吉を祀った出世運の豊国神社を紹介しています。
【ご神木で神様とつながる】
悠久のときを超えて生き続けるご神木。中でも樹齢2000年ともいわれる來宮神社の大楠は、幹まわりが約24メートルあり、一周すると1年寿命が延びるそう。萩日吉神社の杉の木は、樹齢800年の縁結び・子授けのご利益が。
志多備神社のスダジイ(神社でよく見かけるどんぐりがなるシイの木)は総荒神の宿るご神木で、樹齢は一説には500年とも。名古屋の城山八幡宮にある「連理木」は、木の途中から幹が2つに分かれ、再び合一することから縁結び、男女和合のシンボルとして信仰されています。
【キツネや蛇、ウサギたち】
商売繁盛のご利益があるといわれているのが、キツネでおなじみのお稲荷さん。稲荷神社に祀られているのは稲荷神(「いなりしん」と呼ぶ)という神様。
稲荷神=キツネと思っている人が多いのですが、実はキツネは神様のお使いなんです。宝くじを当てたい、コンサートチケットを手に入れたいなら「みな当たるのいなり」と呼ばれる皆中稲荷神社。
金運財運のシンボルの白蛇を祀った神社から、岩国白蛇神社と蛇窪神社を紹介しています。ウサギでは恋愛の神様として大人気の岩手県遠野の卯子酉様。
《取材・文/つきぐみ(水口陽子・渡辺晴美)》