羽生結弦

 絶対王者の“復活”に日本中が歓喜した──。11月22日から行われた、グランプリシリーズ第6戦のNHK杯。圧巻の演技を披露し、305・05点で優勝した羽生結弦は、2位のフランス代表、ケビン・エイモズ選手と50点以上も差をつける結果を出した

「フリーでは、自ら“課題”としていた4回転ループをこらえながら着氷。さらには、もうひとつの壁だった4回転サルコーを成功させました。ミスもありましたが、数々の経験で培った引き出しでしっかりカバーしていましたね」(スポーツ紙記者)

 シーズン第1戦目のカナダ大会でも優勝し、12月6日から行われるグランプリファイナルの出場権を文句なしに獲得した。

今大会には、ライバルであるアメリカ代表のネイサン・チェン選手も出場します。昨シーズンの世界選手権で、羽生選手は王者の座を彼に明け渡しているうえ、現時点での世界最高得点を持っているのもネイサン選手。“次は僕が表彰台の真ん中に立つ”と闘志を燃やしてきました」(同・スポーツ紙記者)

 スポーツライターの折山淑美さんは、ネイサンは羽生との“一騎打ち”に備え、着々と準備を進めていると話す。

「ネイサン選手はグランプリシリーズを第1戦と第3戦という早い時期の大会に出場しましたが、ファイナルに向け演技を見直したり、微調整をする時間が欲しかったのでしょう。それだけ、羽生選手と戦うことを意識していると思います

解禁となるか、4回転アクセル

 一方で、羽生も完全勝利に向け、圧倒的な武器となる難技“4回転アクセル”の習得に奔走している。

「9月に行われたオータムクラシックの公式練習時には、“4回転アクセルの練習のために5回転を跳んでいる”“投入は今季を目指したい”と話していました。完全に跳べるようになる日も、そう遠くないという話です」(前出・スポーツ紙記者)

 誰も跳んだことのない4回転アクセルが、いよいよ目の前にまで迫っている──。ネイサンとの対決の日に、ついに解禁となるのだろうか。

「今シーズン中の披露を目指していましたが先送りになるかと思います。今、羽生選手は大会に“確実に出場すること”を最優先に考えていますし、現時点での彼の技術で十分に勝算はあります。強引に組み込む必要はないと考えているのでしょう」(折山さん)

 昨年のグランプリファイナルは、直前のロシア杯の公式練習中に右足首を負傷し、療養とリハビリのため、欠場を余儀なくされていた。さらにこのケガが原因となり、全日本選手権も欠場することになってしまっていたのだ。

一昨年も、ケガに見舞われて大会を欠場していた羽生選手にとって、今年のグランプリファイナルは3年ぶりの優勝をかけた正念場。“ケガなくやりきることが目標”と話すなど、足の健康状態にこれまで以上に気を配っているように見えます。確実に勝利するためにも、自分で“無茶に突き進まない”という選択ができている。精神的にも、今までより明らかに成長しています」(スケート連盟関係者)

 ひと皮むけ復活を遂げた王者。秘めたる思いを胸に勝利をつかむことはできるのか。