2017年春に放送され好評を博した黒木華主演の連続時代劇、土曜ドラマ『みをつくし料理帖』がスペシャル版で復活(NHK総合 12月14日・21日土曜夜9時~)。
江戸で評判の料理屋で腕をふるう女料理人が主人公の人情ドラマの続編となる。キャスト、スタッフとも思い入れのある作品の見どころは―。
料理と恋を描いた人情ドラマ
2017年春に人気を呼んだ連続ドラマのスペシャル版。大坂生まれの天涯孤独な少女が、江戸で一流の女料理人になるまでの奮闘を描いている。原作は、400万部を超える高田郁の同名小説で、主人公の澪役は、黒木華が演じる。
「時代劇好きの方だけでなく、幅広い年齢層の方に好評で、放送後も続編を熱烈に希望するお手紙やメール、再放送のお問い合わせを数多くいただいていました。
われわれスタッフもみんな“みをつくし”が大好きで、撮影が終わったとき、ぜひ続編を作りたい、と思っていました。
高田さんの原作と、前作に引き続いて脚本を手がける藤本有紀さん(『ちりとてちん』『平清盛』など)の素敵な物語のワンシーン、ワンシーンを、さらによくしたいという思いから、いろいろなアイデアを持ち寄り、スタッフの思い入れが画(え)力につながっていたり、役者さんに気持ちよく芝居をしてもらえたと思います」
と、山本敏彦プロデューサー。
マイ包丁を引っ提げてきた黒木華
主演の黒木も続編を喜び、
「また澪を演じられることを大変うれしく思っております。澪の心づくしの料理と、人と人の関わり合いの深みを前回と変わらず心を尽くして演じたいと思います」とコメント。
前作で料理指導を受け、鱧(はも)までさばけるほどの腕前になった黒木。愛用の“マイ和包丁”で、再び、料理監修の柳原尚之先生の指導を受け、撮影に臨んだ。
「澪の気持ちになりきって、本当に料理が好きという感じで、楽しそうに演じられています。
黒木さんは、プライベートでも料理をされると聞いています。
おいしいものを食べたときに、どうやってる作るのかなど、食への好奇心は旺盛だと思います」(山本P、以下同)
スペシャルは、連ドラから3年後の江戸が舞台。
澪は女料理人として精進を重ね、料理屋『つる家』は繁盛していた。澪が心惹かれる小松原(森山未來)や、信頼する町医師の源斉(永山絢斗)も、たびたび訪れる。
「原作の後半部分を猛スピードで描くのでは、“みをつくし”の世界観、テンポを維持するのが難しいと考えました。そこで今作では、澪と小松原の恋の行方を中心に描いています」
前編(14日放送)では、小松原との恋が澪の料理人としての人生に大きな変化をもたらすことになる。
後編(21日放送)では、幼なじみの野江(あさひ太夫)との今後を占う吉原“桜の宴”を描いている。
江戸の味を現代風にアップデート
全編通し、料理に向き合う澪のひたむきな姿、澪の作り出す、おいしそうな料理がたくさん登場する。
撮影で澪が作る料理は黒木自ら調理している。また、『つる家』で客が食べる料理にはこんなエピソードが。
「作り方は当時のものですが、料理監修の柳原先生が味にひと工夫してくださるので、とてもおいしいんです。
何度もテイクするので大量に作るけれど、あまりのおいしさに、撮影後は演者さんたちが召し上がっています。セットの片隅に作った“料理コーナー”では、小日向(文世)さんや安田(成美)さんも、召し上がっていました」
前作の連ドラは、簡素ななかにも旬の食材をおいしくする知恵を絞り、心を込めた日替わり定食のような作りだったという。
「今作はいろんなおかずが詰まった幕の内弁当でしょうか。フタを開けてから食べきるまでお楽しみいただけるものになっています。
“みをつくし”は、澪が大切な人のために料理を作ったり、食べた人が幸せになる様子を描いています。食をモチーフに、生活に喜びを注いでくれる作品です。初めてご覧になる方にも、きっと何かを感じていただけると思っています」
■襖ごし会話の秘密
後編で、澪が襖(ふすま)ごしにあさひ太夫こと、幼なじみの野江と会話するシーンの襖絵には、驚きの秘密が。
「襖絵には、澪と野江が少女時代を過ごした大坂の天神橋が描かれています。よく見ると、澪と野江らしき2人の少女が橋に描かれています。いまだ顔を合わせることのできない野江が、そんな襖絵を眺めて暮らしているところに気持ちが表れている。スタッフ思い入れのひとつです」(山本P)
■澪が可愛い理由
決して派手ではないけれど、なぜか可愛らしく見える澪。その秘訣はこんなところに!
「澪のたすきに注目してください。武家の娘の早帆(佐藤めぐみ)は白いたすきをしていますが、裕福ではない暮らし向きの澪が使っているのは、布の端切れをつなぎ合わせたたすき。それが逆に、地味な着物のアクセントになっているというわけです。たすきはたびたび変わるので、ご注目を。
着物は連ドラの澪は赤系が多かったけれど、3年後の今回は、青地のものが中心です。こちらもお楽しみください」(山本P)