絶好調の連続テレビ小説『スカーレット』。戸田恵梨香演じるヒロイン・川原喜美子が、陶芸の魅力に魅せられ、物語はさらに加速していく。ドラマの誕生からかかわる制作統括・内田ゆき氏と、チーフ演出を務める中島由貴氏に、撮影の裏話から見どころまで、まるっと解説していただきました!
描きたかった“朝ドラ”
「これまで“朝ドラ”にはさまざまな主人公がいましたが、私がやりたいのは人生の一時期だけを描くのではなく、半生を描いた作品。また、誰かを助ける人ももちろん素敵ですが、自分の手で何かを成し遂げる人をやりたいと。
今回は陶芸家ということで、喜美子自身が自分の手で作品を作り上げ、しかも焼き上がりを見たら予想外の色になっていることもある。まるで陶芸とは、人生のようだなと思ったんです」(内田ゆき制作統括、以下、内田)
“生活者”へのこだわり
「陶芸家になるお話なので、普通は芸術家っぽい展開になりがちだとは思うんですが、今作ではなるべく“生活者”としての描写を大切にしたいと考えています。例えば会話しているシーンでも、ただ立って話しているのではなくて、何か作業をしながら話すなど、日常を生きている人を描く、ということに重きを置いています。
才能だけで、周りから上げ膳据え膳され生きてきた主人公を描くのではなく、日々の生きざまや人間関係など、ディテールをより丁寧に作ろうと」(中島由貴チーフ演出、以下、中島)
印象に残っているシーン
「私はそれぞれの家族のシーンがとても好きですね。川原家はもちろん、信作の大野家や照子の熊谷家など、周辺家族の親の職業や子どもたちの環境がこまやかに描かれることによって、より川原家も豊かに表現されているんです。メインストーリーにはかかわらなくても、彼らがいるからこそ、喜美子がより輝くのかなと思います」(内田)
「クランクインが琵琶湖でのシーンだったんですが、雪が降ってきてしまって、撮影を一時中断したんです。そのときに、北村(一輝)さんと富田(靖子)さんが、ほぼドラマが初めての子役さんたちと仲よくなって、子どもたちの心をほぐしてくださったのがすごく印象的でした。
また、喜美子が大阪に行ってしまう前に風呂焚きをしながらお父さんと話すシーンは、あまりにも感動してしまって、撮影直後に戸田(恵梨香)さんに“すごくよかったよ!”と声をかけてしまうほどでした」(中島)
ドラマの中でリアルを描く、喜美子の魅力
「“朝ドラ”の主人公では珍しく、リアリストなところ。まず食べていかなければいけない、ということを小さいころからたたき込まれた女性だからこそ、とても現実的に考え、行動することができるんです」(内田)
「あくまで生活者として生きていく中で、陶芸家を目指していくんです。貧乏な家で育ったからこそ、お金のことも無視はできないのが、リアリティーがあって、喜美子のいいところ。決して夢だけにとらわれてしまった、浮かれた人としては描きたくありませんでした」(中島)
戸田が作り上げた“喜美子像”
「戸田さんご自身も喜美子にリアリティーを持たせるためにたくさん工夫してくださっています。テレビだからと美しく見せるのではなく、例えば家事などをしながら日常を生きている姿を見せたいと強く思ってくださっているんです。
ドラマで “毎日こんな髪型できるわけないじゃん!” と思うような凝ったヘアスタイルが出てくることがあると思うんですが(笑)、そういうのは絶対に嫌なんです。
例えば走り終えた設定のシーンでは、自ら“髪を乱してください”と言ってくださったり。喜美子のルックスは、戸田さんが作り上げてくださった部分がすごく大きいですね」(内田)
「前髪も“眉毛より上に切ってほしい”と撮影が始まる前に言っても、まったく躊躇せずでしたね」(中島)
女優・戸田恵梨香の魅力
「毎週の膨大なセリフを、土日ですべて叩き込んできてくださって、さすがプロだなと。ヒロインがそれだけ頑張っていると、若い俳優さんたちもすごく鼓舞されて、現場の意識がとても高くなるんです。
さらに戸田さんは、撮影中のどんなときでも台本を手放しません。ずっと喜美子のことを、作品のことを考えてくださっていて、心から休憩している瞬間はないんじゃないかなと思います」(内田)
「本当に手を抜かない人なんです。書道をやられていたから絵付けのシーンでも自ら筆を持って描いてくださるし、陶芸のシーンも吹き替えなしですべて演じてくださるんです。努力を怠らず、台本を隅々まで読み込んできてくれて、本当に信頼のできる女優さんです」(中島)
'19年12月3週目の見どころは……?
昭和35年の正月。八郎(松下洸平)は、陶芸展に出す作品と、注文の珈琲茶碗作りに追われている。茶碗作りを手伝いたい喜美子(戸田恵梨香)。集中力を発揮して作り上げ、八郎を驚かせるが、商品として作るのは、並大抵のことではなかった。
そんな中、常治(北村一輝)は家の増築をする。八郎がめでたく受賞し、喜美子との結婚の準備が始まる中、ひろ恵(紺野まひる)から珈琲茶碗の大量注文が飛び込んでくる。